金の閃光は聖夜を駆ける 〜 Right now to you 〜3

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ。

事件現場から離脱した私は、一心不乱に飛び続けていた。
約束の時間まであと僅か、わき見をしている暇など無いのだ。
 
 
 
 
「あと少し!」
 
 
 
 
ミッド都市部にある現場から我が家までは、車で約15分。
現在の飛行速度なら、5分ほどに短縮される距離である。
最初は都市部の何処かにしようかという話もあったのだが、値段や広さ、通勤通学のしやすさ、加えてある程度自然のあるところ、
という条件を色々付けた結果、はやてが何処からかその条件にあう土地を探してきてくれたのだ。
そこに家を建てるとなると、それなりにお金はかかったものの、私もなのはも勤続10年を越えていたため、
同年代に比べ、圧倒的に蓄えがあった。
ついでに言えばクラスチェンジ・・・じゃなくて、上級キャリアの一つである執務官として働いてきた分、お給料は他より高い。
あの時は執務官を選んでて本当によかったと思った、ちゃんと結婚指輪も買えたし。
 
 
 
 
「見えた!」
 
 
 
 
やがて前方に、我が家の明かりが見えてくる。
庭付きの広々とした、一戸建て。うん、いい家だ。
この歳で結婚したり家を持つことになるとは思わなかったが、まさに順風満帆といえるだろう。
にへら、と顔が崩れているだろうが、気にせず速度を緩め下降する。
そして私は家の前に降り立つと、勢いよくドアを空けた。
 
 
 
 
「なのは!ただいま!」
「おかえりなさい、あなたぁ〜♪」
 
 
 
 
ジャキ!
 
 
 
 
「・・・・なんで家にいるの、はやて」
「く、食い込んどる、ザンバー食い込んどるからっ!!」
 
 
 
 
想像していたままに『あなた♪』のオプション付で、なのはが出迎えてくれたのかと思いきや、
両手を拡げて立っていたのは、よりにもよって、何故かはやてで。
一瞬ブレーカーが落ちた私は、すぐさま再起動するとザンバーの刃をはやての首筋に突き付けた。
 
 
 
 
「早く答えてくれないかな」
「まっ、ちょうホンマに待ってやー!?」
 
 
 
 
でないと本当にスパッといっちゃいそうだよ、はやて。
 
 
 
 
「あ、フェイトママ!」
「ヴィヴィオ!」
「おかえりなさい、フェイトママ!」
「おっと、ただいま、ヴィヴィオ」
 
 
 
 
私達の声に奥から顔を出したヴィヴィオは、私に気がつくと駆け寄ってくる。
私は右手でザンバーを維持したまま、左手で飛び付いて来たヴィヴィオを受け止めた。
 
 
 
 
「・・・?はやてちゃんなにしてるの?」
「命の選択中かな」
「シャレにならんて・・・・」
 
 
 
 
ヴィヴィオが救いの女神とならなかったことに、落胆するはやて。
当然だ、このくらいのことで動じる我が子ではないし、私だってザンバーを手放したりは・・・・
 
 
 
 
「フェイトちゃん?」
「っ!ただいま、なの・・・はっ!?」
 
 
 
 
ヴィヴィオに続き、奥から顔を出したなのは。
愛するなのはの登場に、私は一気にメーターが振り切れそうになるが、
私の頭脳、いや正確には視力がなのはの格好を認識した途端、ザンバーが私の手からポロリと落ちた。
 
 
 
 
『sir・・・』
 
 
 
 
床に転がされたバルディッシュから呆れたような呟きが漏れるが、私にはそれに反応する余裕がない。
ごめんバルディッシュ、後でちゃんと磨いてあげるから。
 
 
 
 
「あぅ、や、やっぱり変かな・・・・」
「・・・・はやて」
「ひぅっ!?」
 
 
 
 
ギギギギ・・・とどこか錆び付いたかのような擬音が、本当に聞こえるくらいゆっくりと、
半ば無理やりなのはから視線を外し、その原因であろうはやてに向き直る。
そして、怯えて逃げようとするはやての肩を掴み、一言。
 
 
 
 
「よくやった、ありがとう」
「・・・・え?あれ、怒らへんの?」
「怒る?どうして?」
 
 
 
 
奥から出て来たなのはの格好、それはこの時期某ド〇キとかに売ってたりするパーティグッズの一種。
ほら、あれですよあれ、サンタクロースの真っ赤な衣装。
 
 
 
 
「えと、ごめんねフェイトちゃん、すぐに着替えて来るから・・・・」
「!?全然そんな必要ないよ!」
「でも・・・・」
「大丈夫だよなのは、凄く可愛いから・・・・」
「ふぇ、フェイトちゃん・・・・」
 
 
 
 
でもサンタクロースと決定的に違うのは、その短いスカート。
そしてそのスカートから伸びる長く美しいなのはの生足・・・・・・くぁー!もう無理!限界!
 
 
 
 
「なのは!!」
「きゃっ!?フェイトちゃん!?」
 
 
 
 
プチっと色んなものが振り切れた私は、なのはを引き寄せ抱き締めた。
 
 
 
 
「本当に凄く可愛いよ、なのは。私に見せるために着てくれたんだよね?」
「う、うん、きっとフェイトちゃんが喜ぶからってはやてちゃんが・・・・」
 
 
 
 
・・・はやてはどういう目で私を見てるのかと思うけど、これに関しては大当たりだったのでなんとも言えない。
 
 
 
 
「うん、すごく嬉しいよなのは・・・・」
「フェイトちゃ・・・きゃっ!?ちょ、こんなとこでダメだってばフェイトちゃん!」
「私は全然気にしないよ、なのは」
 
 
 
 
逃げられないように腰をしっかりと抱いたまま、スカートからのびる足に手を這わせる。
ちなみにヴィヴィオははやてに預けて、奥へと行ってもらったので、イロイロしても特に問題はない。
 
 
 
 
「ひゃっ!?だ、ダメだってばフェイトちゃん!」
「・・・・どうしても?」
「どうしても。だってケーキも料理も用意して待ってたんだよ?ヴィヴィオだって楽しみにしてたんだからね」
「ん、そっか、そうだね・・・・」
 
 
 
 
そうだった、あんなに楽しみにしていてくれたヴィヴィオを、がっかりさせる訳にはいかない。
それでも未練がましく、渋々といった感じに離れる私に、なのはは苦笑しながら言った。
 
 
 
 
「でも今日の私はフェイトちゃんのサンタさんだから、ヴィヴィオが寝たら・・・ね?」
「っっっ!?う、うん!!」
 
 
 
 
な、なのは、それって・・・・・
 
 
 
 
「あれもこれもそれも、何してもいいってことだよね!!」
「ちょ、そこまで言ってないよ!そもそもあれとかこれって何!?」
「何ってそりゃ・・・・」
「フェイトちゃん!!」
 
 
 
 
あぅ、怒られた。聞かれたから答えようとしただけなのに・・・・なんで?
 
 
 
 
「えぅ、ごめんなさい・・・・」
「まったくもう・・・・ほらバリアジャケットもいい加減解除してよ」
「あ、うん、忘れてた・・・・」
 
 
 
 
そういえば事件現場にいた時から今までずっと、バリアジャケットのままだった。
思いがけないはやての登場と、なのはのサンタ姿に驚いて、バリアジャケットを解除するのをすっかり忘れていた。
 
 
 
 
『sir・・・』
「あ、バルディッシュもごめん・・・・」
 
 
 
 
なのはの登場以来、ずっと床に転がされていたバルディッシュから再度呆れたような声が聞こえる。
ごめんバルディッシュ、なのはのミニスカサンタはもの凄い衝撃だったんだよ。
 
 
 
 
「あれ、フェイトちゃん、そういえば車はどうしたの?」
「え、あぁ、車は・・・・」
 
 
 
 
・・・・事件現場に置きっ放し。
って、二人へのプレゼントも車の中だよ!ダメじゃん私っ!
 
 
 
 
「えーっとね・・・・」
「フェイトちゃん?」
 
 
 
 
ダラダラと冷や汗が背中を流れ始める。
さて、どうしたものか・・・・
廊下にはうんうん唸りながら言い訳を考える私と、首を傾げているなのは。
あぁそんな表情も可愛いよなのは!
・・・・なんて、逃避してる場合じゃないんだけどね。
 
 
 
 
「あの、なのは、実はね・・・・」
「うん?」
 
 
 
 
ピンポーン。
 
 
 
 
「あれ?」
「お客さん、かな?」
 
 
 
 
覚悟を決めて、なのはにごめんなさいをしようとしたところに、チャイムの音が響く。
とりあえず応対しようと、なのはと玄関のドアを開けると、そこには・・・・
 
 
 
 
「・・・・ティアナ?」
 
 
 
 
私の部下であり、そしてまた同僚でもあるティアナの姿があった。

 
 
 
 

...To be Continued

 
 


なかがき(言い訳) 

長くなったので、またしても途中でちょん切りました。
んー、いや、大分止まってたし。

諸派の事情でバタバタしつつぐったりなキッドです、とりあえず完結目指して頑張ります。
一応次で完結予定なので。
そのうちクリスマスSS補完と大晦日や正月もまぜた冬休みスペシャル!とか書きたい。
出したいオフ本ばっかだわ〜(苦笑)

2008/1/25著


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