王子達のバレンタイン エピローグ






 
 
 
 
「これはまた、なんていうか・・・・」
「凄い・・・・」
 
 
 
 
14日バレンタインデー当日、光莉と夜々の前には天音作の立派なチョコレートケーキが鎮座していた。
 
 
 
 
「よくこんなの作りましたね・・・・」
「その、ちょっと事情があって・・・・」
「凄いです天音先輩!」
「あぁうん、喜んでもらえて嬉しいよ光莉」
 
 
 
 
言えない、要と張り合った結果がこれだなんて。
天音の視界の端で、ニヤリと笑う夜々あたりは真相に気がついているかもしれないが。
それでも、天音が光莉を想って作ったものには違いない。
 
 
 
 
「あ、天音先輩、これは私からです・・・・天音先輩のみたいに凄いものじゃないけど・・・・」
「そんなことないよ、光莉のクッキーはいつも美味しいからね、凄く嬉しいよ。ありがとう光莉」
「天音先輩・・・・」
 
 
 
 
天音のケーキというレア物に対し、いつものようにクッキーを作った光莉は若干申し訳なさそうにそれを差し出す。
いつの間にやら光莉にゾッコン、もとい光莉を何よりも大切に思う天音が気を悪くするはずもなく、今日一番の笑顔と共にそれを受け取った。
 
 
 
 
「・・・・で、私の存在は視界に入ってないわけね」
「ひぅっ、ご、ごめん夜々ちゃん・・・・」
「いや、その、そういうわけじゃ・・・・」
「いいわよ別に。邪魔者は退散するから、あとは二人イチャイチャしてなさいよ」
 
 
 
 
二人の世界に入りつつあった天音と光莉を笑いながら夜々が茶化すと、真っ赤になってうろたえる二人。
一年たっても初々しいなぁ、と思いつつ夜々は立ち上がるとドアに手をかけた。
 
 
 
 
「あ、夜々ちゃん」
「ん、なぁに?心配しなくてもちゃんと時間潰してから戻ってくるわよ?」
「もぅ、そうじゃなくて・・・・蕾ちゃんならラウンジにいたからね」
「へぶっ!」
「や、夜々ちゃん!?」
 
 
 
 
ゴィン!という音と共に、夜々は開きかけた扉へしたたかに顔面を打ち付けた。
 
 
 
 
「べ、別に私は蕾に会いに行くわけじゃないわよ!時間を潰しに行くだけなんだから、そこんとこ勘違いしないでよね!」
「う、うん、分かった・・・・」
 
 
 
 
夜々は赤くなった鼻を押えて、そのまま捲くし立てるように喋ると、
絶対違うんだからぁー!と叫びながら出て行った。
素直じゃないところは相変わらずらしい。
 
 
 
 
「・・・・えと、じゃあとりあえずお茶いれましょうか?」
「あぁ、うん、お願いするよ」
 
 
 
 
その勢いにぼうっとしていた二人だが、意識が戻ってくると光莉がお茶の用意を始めた。
その様子をのんびり見つめる天音。
二人の間にはチョコ菓子とアールグレイ、そして優しい時間が流れているのだった。
 
 
 

 
 
 
「どうだ桃実、これが私のバレンタインデーのチョコだ!」
「・・・・・・」
 
 
 
 
一方その頃、要と桃実もバレンタインデーのチョコレート交換を始めていたのだが・・・・
 
 
 
 
「どうした桃実?感動のあまり声が出ないのか?」
「・・・・・・」
 
 
 
 
要の言葉にピクリと反応するものの、依然声を発しない桃実。
 
 
 
 
「桃実?聞いてるのか?」
「・・・・要」
 
 
 
 
そしてようやく言葉を発した桃実の声に不穏な気配を感じ、思わず後ずさる要。
 
 
 
 
「な、なんだ?」
 
 
 
 
若干その声が震えていたのは、気付かなかったことにすべきだろう。
 
 
 
 
「これ、何?」
「なにって・・・・私からのバレンタインチョコに決まっているだろう」
「・・・・私、食べないわよ」
「ぬぁっ!?な、何故だ桃実!」
 
 
 
 
作れと言った本人からとんでもない宣告をされて、頭を抱える要。
そして桃実は『それ』をビシィッ!と指差しながら叫んだ。
 
 
 
 
「どうやってこんな5段重ねのケーキを食べろっていうのよ!!」
 
 
 
 
桃実が指差した『それ』』の正体、それは要作のウエディングケーキもかくやと思わせる一品であった。
ご丁寧に一番上には要と桃実の人形まで乗っている始末。
バレンタイン用なのでもちろんチョコで出来ているとはいえ、色を白に変えればそのままウエディングケーキになるだろう。
 
 
 
 
「・・・・駄目か?」
「私をダルマにでもしたいわけ?」
「別に桃実なら太ってても可愛いとおもっ・・・・ごふっ!?」
 
 
 
 
好きな人のために、少しでも美しくありたいと思うのが乙女心。
フォローしているようで全然フォローになっていない要の言葉に、桃実の鉄拳が炸裂する。
 
 
 
 
「な、なんで殴るんだ桃実!?」
「なによ!要のバカ!!」
 
 
 
 
すっかり臍を曲げてしまった桃実を宥めようにも、取り付く島も無い。
要は必死にご機嫌をとろうとするがことごとく撃沈され、内心滝のような涙を流しつつ夜も更けて行く。
 
 
 
 
溢れる愛の量なら、そう差異は無いだろう天音と要。
けれど頭の中身、主に常識とかそういったものに関しては、天と地ほども差がある王子達なのであった。

 
 
 


...Fin


あとがき(言い訳)

さてさて、久しぶりのストパニSSでしたが、いかがでしたでしょうか?
アクセス解析でストパニ・SSとかで飛んでこられる方を見ると、申し訳ない気持ちになるんですよ(汗)
すいません更新遅い上に、掲載の数が少なくてm(_ _;)m

書きたい書きたい、と思いつつ、執筆が追いついてませんでした、すみません(^^;)
あぁでも、何気に天音と要のやりとりが、かなり楽しかったです(笑)
機会があればまた書きたいな〜と思いますが、原稿溜まってるので、いつになるかしら・・・・むーん(汗)
えーと、まぁいつも通り、長い目でまったりと見守ってくださいませm(_ _;)m
ではでは、また次の作品で〜♪ごきげんよ〜(キ^^)ノ

2008/3/19著


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