――暗い。
まず最初に思ったのがそれで、その次に思ったのも、やっぱり暗い、だった。
一面の暗闇。
まとまらない思考。
動かせない身体。
思い出せるのは長い長い先鋒戦が終了したところまで。
白糸台のエース、宮永照。
想像以上の相手に点を稼ぐどころか、最少失点とさえいえないくらいの点を削られた。
――もうちょいなんとか出来ると思ったんやけど、な……
一巡先を読んでもどうにもならない相手。
随分と無理をした。
二巡先、三巡先。
そして新道寺や阿知賀のおかげでどうにか全員飛ばずに終わるのが精一杯だった。
……だけどそこからの記憶がない。
――また、倒れてしもうたんかな、私……
竜華は怒っているだろうか、それとも心配しているだろうか。
きっと約束を破って力を使いすぎたことには気づいたはずだ。
限界までいった代償がこれなのだろう。
落ちていく、どこまでも。
深く暗い、闇の底へ。
――竜華、皆……ごめん、な……
最後の意識さえ沈んでいく。
全てを闇で閉じようとしたその時。
声が、聞こえた。
――き、……とき、怜ぃっ……
……呼んでいる、竜華が。
私を。
……そう気がついたらたまらなくなった。
帰りたい、皆の……竜華のところへ。
私はまだ、生きていたい。
――りゅう、か……竜華ぁ……
身体がふっと軽くなる。
ぼろぼろと落ちていく涙とは対照的に、私の意識は急速に浮上していった。
◇
「……怜、怜っ……なぁ怜ぃ目開けてっ……」
うっすらと開けた視界の先で竜華が泣きながら、ただひたすらに私のことを呼んでいた。
初めて二巡先を読んで倒れた時のように、竜華の涙が私の頬にあたってはじける。
だけどあの時と違ってろくに動かせそうにない身体では、夢かどうか確かめる術は無い。
――いや、そうとちゃうか……
……夢かどうかなんてどっちでもいい。
ただとめどなく流れ続けるその涙を拭ってあげられないのが嫌だった。
「……ぅ、か……」
「……っ!?」
「りゅ、か……竜華……」
「とき……怜! 怜っ!!」
「意識戻ったんか!? 怜! オレらが分かるか!?」
「ちょ、落ち着いてください先輩!」
「揺らしたらあきまへんよ?」
やっとのことで出した声は随分とかすれていた。
それでも竜華達にはちゃんと届いた。
竜華が抱き締めるように私の頭を包む。
こつんと合わさったおでこが、頬を包む竜華の手が、私に熱を与えてくれる。
いつもやったら騒々しいなぁ、とか、そんなに心配せんでも、……なんて言うとこかもしれない。
だけど今はただ……嬉しい。
――皆が……竜華が呼んでくれたから、戻ってこれたんやで、私……
「ごめ、な……たくさん、点、とられてしもて……」
「あほ!何言うてるん!こんなんなるまで怜は頑張ってくれたのに……」
「そや、この程度大したことやない!」
「相手はあの宮永照ですからね、想定内ですわ」
「心配せんでください、余裕ですって!」
だから怜は何も心配せんでええよ……そう言って竜華が私の髪を撫でる。
あかんなぁ……皆優しすぎるわ……
――間もなく次鋒戦を開始します。出場選手は――
「しゃぁっ! 頼んだで泉!」
「はい! 任せとってください!」
力強く踏み出す後輩の背中をここまでばてばての状態で見送ることになるとは思わなかった。
理想とは程遠いバトンタッチ。
そやけど……
「怜……待っとってな、うちらが必ず取り返したるから」
「ん……ありがとうな……竜華……」
握られた手を握り返して微笑んだ。
信じとるよ、竜華。
必ず勝ちぬけてくれるて。
だって私らは……チームなんやから。
...Fin
あとがき(言い訳)テレ東のため先程視聴したアニメ11話……のちょっと先をスーパーセルフ補完ですごきげんよう!w
一週間待ったのにさらに来週まで生殺しが確定したので補完してみた主に自分の為に!(クワッ)
最終的に大事には至らない、と思うけど怜が心配すぐる……怜ぃぃ!!(;ω;)ブワッ
こんな感じに一つ穏便に(いやこれも穏便ではないか?(苦笑))お願いします小林せんせーっ!!
……よし、書き終わったし胃薬(ぇ)飲んだし腰に湿布(ぉ)も貼ったし……寝ますwおやすみww(朝7:56w)
2012/6/25著
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