小ネタ集1






 
 
 
 
◇あげぱん◇ 
 
 
「穂乃果」
「……」
「穂乃果」
「……」
「……穂乃果」
「うー……」
 
 
 
 
うーじゃないでしょう……と困った顔をする海未ちゃんに向けて、だってそういう状況なんですと唸り返す。
 
 
 
 
「いつまで拗ねてるんですか」
「だってここは拗ねるところだよ、一大事だよ!」
「そんなに大事ならなぜ本を読んでたんですか……」
「読みたかったからだよ!」
 
 
 
 
勢いに任せて言ってみたら今度こそ呆れられてしまいました。
海未ちゃん手厳しい。
いや海未ちゃんが悪いわけではないんだけどさ。
 
 
 
 
「だって黒いんだよ!焦げちゃったんだよ!」
「冷凍物と一緒に温めるから途中で取り出さないと焦げますよと言ったじゃないですか」
「あげぱんがこげぱんになっちゃったんだよ!」
「何上手いこと言ってるんですか」
 
 
 
 
やさぐれるってものでしょそりゃあ。
こげぱんだけに。
 
 
 
 
「だって、私のあげぱん……」
「……また買ってきますから」
「イチゴサンドとカレーパンも」
「どれだけパンが好きなんですか……」
「海未ちゃんの方が好きだよ?」
「それはどうも……」
 
 
 
 
あ、赤くなった。
海未ちゃん可愛い。
 
 
 
 
「ほら、他の物も出来ましたしお昼にしますよ」
「はぁーい」
 
 
 
 
甘々な海未ちゃんのお陰でとりあえずテンションも回復。
焦げちゃった物はしょうがないよね、うん。
 
 
 
 
「……焦げ取ったら食べれるかなこれ?」
「食べるんですか?」
「粗末にしちゃいけないんだよね?」
「それはそうですが」
 
 
 
 
ナイフでがりがりと削り落とす。
だってもったいないよ、焦げ取ったらなんだろね、あげぱん?焼きぱん?
やさぐれてはいなさそう。
 
 
 
 
「あ、意外に香ばしい」
「……よかったですね」
 
 
 
 
普通に美味しかったです、まる。
 
 
 
 

 
◇ぶんぶんぶん◇
 
 
 
「ねぇ海未、これは何の花?」
「あぁ、藤棚ですね。藤の花が咲きますよ」
「藤の?」
「えぇ、蕾もだいぶ綻んできましたから近日中には」
「どんな感じなの?」
「名前の通り藤色の花ですよ。房が連なったように咲きますから満開になると中々壮観ですよ」
 
 
 
 
海未がそう言うからにはきっとそうなのだろう。
落ち着いた色の似合う海未だからきっと藤の花も似合いそう。
 
 
 
 
「いっそ季節の花と海未のショットをジャケットと特典に」
「やめてください、誰も喜びませんから」
「私が買い占めるわ」
「ただのコレクションじゃないですか」
 
 
 
 
だって欲しいんだもの。
希とことりがきっと乗ってくれると思うし。
 
 
 
 
「それだったら私だって絵里の写真欲しいです」
「私だけじゃ不満なの?」
「貴女のものならなんでも欲しいんですよ、絵里」
 
 
 
 
もちろん本人には敵いませんが、なんて言いながら抱き寄せないでよ。
普段は可愛いのに肝心なところでカッコイイなんて反則よ?
 
 
 
 
「顔が赤くなければ満点ね?」
「……精進します」
 
 
 
 
構わないわ、そんな貴女も好きだから。
笑って一つ口づける。
色を増した赤に可愛いと囁いた。
 
 
 
 
「藤色もいいけど赤い方が似合うかも」
「酒の肴にもなりません」
「私にとっては何よりもご馳走だけど?」
「奇特ですね。貴女の方がよほど映えますよ絵里」
 
 
 
 
こんなふうに、と顔が寄せられて。
首にチクリ、紅い一刺し。
 
 
 
 
「っ……見えちゃうじゃない」
「そのつもりです。誰にも渡しません」
 
 
 
 
王子様とお姫様をいったりきたり、忙しない。
でも、きっと私も似たようなものだから。
二人で一緒に手探りで進みましょう?
 
 
 
 
「来週のデートはお花見ね」
「藤ですか?」
「咲くのでしょう?」
「えぇまぁ……」
「来週も会いたいわ」
 
 
 
 
ねだる私に大学始まりますよとか、単位落とさないでくださいね、とか言いながら楽しみにしてますと言ってくれる海未が好き。
 
 
 
 
「ゆっくり見れるとよいのですけどね……」
 
 
 
 
そう言って憂いた海未の真意が分かるのは来週のことだったけど。
 
 
 

 
 
 
「……なぜ」
「……やっぱり来ましたか」
 
 
 
 
満開の藤色。
新芽の緑との美しいコントラストに不似合いな来訪者が近づく私達を威嚇する。
 
 
 
 
「はらしょー……」
「……共生関係ですからね、仕方ありません」
 
 
 
 
ぐるっと回ってホバリング、こっちくんなと言葉が無くても分かってしまう。
 
 
 
――貴方の物じゃないでしょう!?
 
 
 
言ったところでクマンバチには通じない。
今年も我が物顔でぶんぶんぶん。


...Fin


あとがき(言い訳)

ただの実話です。
せっかくなのでほのうみとえりうみ仕様ー。
というかSS書けないうちに一週間たって呆然。なにごとー。
ちなみに熊かクマンかは地方によるらしい。正式には熊。
我が家の藤も来週か再来週には満開な感じかな?

2014/4/13著


ラブライブ!SS館に戻る

inserted by FC2 system