続・七夕騒動記
「・・・・で？」
「で？・・・・って、何が？」
「これは一体なんなんですか、祐巳さま」
「なにって・・・・・短冊？」
「いえ、そういうことをお聞きしている訳ではなくて・・・・」
そこまで言いかけたのに、もういいです、って言って瞳子ちゃんは溜息をついた。
・・・・なにかまずかったのだろうか？
「祐巳さま、その短冊お付けしますね」
「あ、ありがとう可南子ちゃん」
「お安い御用です」
「・・・・それだけ身長があればそうでしょうね」
「なにか仰いましたか、瞳子さん」
「いえ、なにも」
「あはは・・・・・」
この二人もあんまり変わらないな〜・・・・
あれ、そういえば前にもこんなこと無かったっけ？
「可南子ちゃんこれもお願いね」
「わかりました」
「あ、すみません、こちらもお願いします」
「菜々は打倒令ちゃんか」
「もちろんです」
「背の高い子がいると助かるわね〜・・・・それに比べて令は・・・・」
「うぅ・・・・そんなお姉さま・・・・・」
「役立たずですね」
「役立たずね」
「はぅぅぅ・・・・・」
由乃さんと江利子さまの連続攻撃にダウン寸前の令さま。
相変わらず不憫ですね・・・・・
もちろん私も人の心配してる場合じゃないんだけどね。
だって・・・・あの人がいるんだから。
「祐〜巳ちゃん♪」
ガバッ！！
「・・・・なんですか聖さま？」
「・・・・悲鳴すら上げなくなっちゃうなんて・・・・お姉さんは悲しいよ」
「・・・・誰のせいですか、誰の」
例によって抱きついてきたのは聖さまなんだけど・・・・・
いい加減免疫ができてしまったらしく、
よほどいいタイミングでやられない限り怪獣ボイスはでなくなっていた。
順応力高いな、私も。
「・・・それで、いつまで抱きついてるおつもりですか、聖さま」
「げっ、は、早かったね祥子・・・・・」
「当然ですわ、祐巳に危険が迫っているのにぼやぼやしてられませんから」
・・・・それはやっぱり盗聴器と盗撮器の成果ですか。
「いえ、違うわ」
「じゃ、じゃあもう盗聴器も盗撮器も無・・・・」
「今は監視衛星も利用しているから安心して頂戴、祐巳」
「・・・・・・・」
お姉さまは今でも犯罪者だった。
「祐巳、どうかして？」
「いえ、なんでもありませんお姉さま・・・・・」
気にしないでください、お姉さま。
色んな意味で涙が止まらないだけですから・・・・
「祥子さまも相変わらずですね・・・・」
「えぇ・・・・でもやるなら、証拠を残してはいけないわよね・・・・」
「し、志摩子さん！？」
あぁ、なんか背後でも不穏なセリフが聞こえるし・・・・・
振り返ると怯え気味の乃梨子ちゃんと目が合って・・・・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互い心中で同種の涙を流していることを確認しあった。
苦労してるんだね、乃梨子ちゃんも・・・・・・
「あなたたち、妹を怯えさせるのはやめなさいよ・・・・」
「怯えさせてなんかいませんわ、お姉さま。私は祐巳のことが心配なだけです」
「適度に心配しなさいよ・・・・・」
「無理です」
つまり今後も続けるつもりなんですねお姉さま・・・・・・
「ま、まぁ物騒な話はそれくらいにしてさ、せっかくなんだから皆短冊を飾ろうよ」
「そ、そうですわね、せっかくですから瞳子も書かせていただきますわ」
前と同じように哀れんだ聖さまが話題を変えてくれた。
もちろん瞳子ちゃんもそれに便乗する。
・・・・でも聖さまが宥め役になるって、もの凄い事態ってことだよね・・・・・・
「祐巳ちゃんは書かないの？」
「あ、私はもう書きましたから」
「どれどれ・・・あ、あの上にあるやつか」
「はい」
「えーっと・・・・『家内安全』に『無病息災』？・・・・祐巳ちゃん、お守りじゃないんだから・・・・」
「んー・・・まぁそうなんですけどね・・・・お願いごとには違いありませんし」
まぁ確かに短冊に書くこととしてはちょっとあれだけど・・・・・・
「まぁいいけどね・・・・そういえば祐巳ちゃん、『脱・ぷにぷに』は諦めたの？」
「む・・・・別に諦めたわけじゃありませんよ。でもあまり体重が落ちる方がまずいですから・・・・・」
「そうそう、祐巳ちゃんもやっとわかってくれたか、このぷにぷに加減がいいんだよね〜♪」
まったく人が気にしてることを・・・・・
それに、ニヤニヤしながらわき腹をつつくのはやめてください。
「はいはい、祐巳ちゃんとじゃれてないで、そのペン貸してちょうだい聖」
「あれ、蓉子も書くの？」
「書くわよ、そりゃ」
「・・・・星になるのはやだよ、私」
「大丈夫よ、星じゃなくてマリア様のもとへ送るから」
ひょぉぉぉぉ〜〜〜〜・・・・・・・
例によって室内に強烈な冷気が吹き荒れた。
「あら、どうかした？」
「い、いえ、なんでもありません・・・・・」
そしてそれに気づいた様子も無く平然と喋る蓉子さま。
前の七夕のあとに言ってたことはマジだったらしい。
今年も微妙なことを色々書き綴ったメンバーは全員氷付けになっている。
もちろん、そんなことは意に介さない蓉子さま、
さっさと短冊と書き終わると、これまた一番見やすい真ん中に短冊を吊るした。
「あ、あはは・・・・えっと、蓉子はなに書いたのかな〜・・・・・」
「別に、普通のことよ」
いち早く自主解凍した聖さまが、蓉子さまの短冊を恐る恐る、といった感じに確認に行く。
私も気になるから見に行くと・・・・・
「・・・・へ？」
「へ？って祐巳ちゃん、今更驚くことじゃないでしょう？」
「いえ、まぁ、それはそうなんですけどね・・・・・」
なにもここで暴露しなくてもなぁ〜・・・・・
だって、きっと自主解凍が終われば、皆この短冊の内容について詰め寄るだろう。
それも蓉子さまじゃなくて私に。
だから当たり障りのないように、あんな風に書いたのに・・・・・
そして、一人それを見てしまった聖さまは・・・・・・
「ゆ、祐巳ちゃん、蓉子・・・・こ、これってもしかして・・・・・」
「見たままの意味よ、聖」
「・・・・・・」
・・・・・・パタリ
「せ、聖さま！？ちょっ、しっかりしてください聖さま！？」
・・・・刺激が強すぎたらしく気絶してしまった。
そんな気絶した聖さまの頭の上では、蓉子さまが吊るした、
『安産祈願』
と書かれた短冊が、誇らしげに揺れているのであった・・・・
......fin
あとがき（言い訳）ごきげんよう皆様♪
七夕シリーズ三本目をオールキャストでお送りいたしました♪
にしてはいつもよりちと短めですが、まぁ次のＳＳへの布石ってことで。
細かい設定に関してはいつもどおり突っ込まない方向でお願いします（＾＾；） まぁあれですよ、蓉子さまと祐巳ちゃんのお願い事で今後の展開が予測できますが・・・・
ばっちこーい！って方は、次の作品をお読みくださいませ♪
いや、ありえねぇだろ！？って突っ込むあなた、
蓉子さまにマリア様の元へ送られちゃいますよ？（をぃ） って、わけで、今回も基本がギャグ仕様でしたので、次は糖分高め、
というか幸せ一杯でお送りしますのでお楽しみに！！
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