スクランブルデート!(聖と祐巳)


 
 
 
 
 
乃梨子と志摩子が合流したその頃、二人の死角から覗き見・・・・じゃなくて、
生暖か〜く二人を見守るどっかの白い悪魔の姿があった。その別名を犯罪者予備軍という。
 
 
 
「うっふっふ、志摩子んとこもらぶらぶじゃの〜」
「・・・・趣味悪いです、聖さま」
「シャラップ!私の正義は私自身なのだよ祐巳ちゃん!」
「言ってることはカッコイイけど、やってることはただのストーカーですよね」
 
 
 
祐巳にバッサリ切られているこの人こそ白い悪魔、改め元白薔薇さまこと佐藤聖で
ある。
 
 
 
「うぅ、祐巳ちゃん、すっかり紅薔薇さまだね・・・・」
「まだ引き継ぎ前ですってば・・・・・」
 
 
 
よよよっ、と泣き崩れる真似をする聖に、祐巳はやれやれと首を振る。
そう、本日の祐巳のお相手は祥子ではなく聖だった。
『祐ー巳ちゃん♪デートしよー♪』と、いつもながら唐突に決まったのだけれど。
 
 
 
「それに、今日は邪魔しちゃ駄目ですよ。私、志摩子さんと乃梨子ちゃんに約束したんですから」
「祐巳ちゃんが約束したんであって私がしたんじゃないもーん」
「・・・」
 
 
 
子供みたいな物言いに、祐巳は無言で吹き矢を向けた。
呆れと若干の殺意をこめて。
 
 
 
「・・・あー、いや、ほら、可愛い妹達を暖かく見守ろうかと・・・・あ、ほら祐巳ちゃん、またハイエナが!」
 
 
 
必死で苦しい言い訳を続ける聖は、好機とばかりに二人に近寄る人影を指す。
祐巳は逃げたな、と思いつつも冷静にターゲットを確認し・・・・吹いた。
 
 
トスッ・・・・バタッ!
 
 
そんな祐巳を見て聖は思う。
 
 
「祐巳ちゃん、強くなったね・・・」
 
 
聖はちょっぴり涙が出てきそうだった。
 







 


横たわる屍の群れから抜け出し、動物園へ向けて移動する志摩子と乃梨子を追いかける。
そして動物園の最寄駅まで来たところで、志摩子が乃梨子に膝枕をしているのを発見した聖と祐巳。
となれば当然聖が黙ってはいない。
 
 
 
「あ、あれいーなー。祐巳ちゃん、私にもあれやって♪」
「嫌です」
「なんで!?祐巳ちゃんの愛するこの私がお願いしてるのに!!」
「・・・百歩譲ってそうだったとしても、手をわきわきさせながら言う人にはやってあげませ!」
「がーん!」
 
 
 
でっかい擬音を背景に本気でうなだれる聖であった。
 







 


そうこうしている内に、やっとこ園内に入った二人を追いかけて聖と祐巳も園内へ入る。
フクロウを見ている二人に追いつくと、乃梨子のうっとりとした表情が目に入った。
 
 
 
「・・・ねえ祐巳ちゃん、乃梨子ちゃんはなんであんな顔をしてるのかな?」
「さあ・・・・?フクロウを見て仏像を思い浮かべてるとか?」
「あははー、やだなぁ祐巳ちゃん、こんなデブな仏像いないって」
 
 
 
そう言って笑い飛ばす聖。
相手がフクロウとは言え失礼極まりない。
 
 
 
「聖さま、いくら相手がフクロウだからって・・・・」
 
 
 
思わず祐巳が注意しようとしたその時。
 
 
ガシャーン!! 
 
「うわぁっ!?」
「ぎゃあっ!?」
 
 
 
それまでおとなしかったフクロウが、目の前の金網に猛烈なアタックをしかけてきた。
それも明らかに聖を狙って。
言葉は通じなくても悪意は通じたに違いない。
 
 
 
「む、生意気な。やるかコイツ」
「ちょっ、なにやる気になってるんですか!?」
「止めるな祐巳ちゃん!売られた喧嘩は買うのが礼儀だ!」
 
 
 
なんて叫びながら聖はファイティングボーズまで決めている。
いくつだよこの人、とか、喧嘩売ったのは貴女でしょう!?なんて祐巳は心の中で突っ込んだ。
 
 
 
「恥ずかしいからやめてくださいってば!」
 
 
 
でもなによりも周りの視線が痛すぎる。
 
 
 
「でも祐巳ちゃん・・・・」
「それにほら!早く志摩子さん達を追いかけないと見失っちゃいますよ!」
「うー・・・祐巳ちゃんがそう言うなら・・・・」
 
 
 
しぶしぶといった感じに頷く聖。
いや、そもそも出歯亀したがってるのは貴方でしょう?と、
心の内でひっそりと祐巳はため息をついた。
 
 
 
「さぁ、さっさと行きますよ聖さま」
 
 
 
色々と言いたいことはあれど、どうせ聞きゃあしないことを祐巳は熟知している。
とにかくこの場を離れたいのも手伝って、祐巳は問答無用で聖の襟首をひっつかんだ。
 
 
 
「ちょっ、苦し、首締まってるってば祐巳ちゃん!?」
 
 
 
祐巳は、いっそ本気で締め上げてやろうか、と思った。
 
 
 
その後。
 
 
 
「パオーン!」
 
 
ぶしゃぁぁぁ!!
 
 
「うわぁー!?」
「ぎゃあぁぁー!?」
 
 
 
「ウッキィーッ!!」
「ぎにゃあぁぁー!聖さまー!!」
「あ、こら!祐巳ちゃんを離せ!祐巳ちゃんは私のだぁー!!!」

 
 
 
・・・・会話から推して知るべし。
なぜか二人は様々な災難に見舞われた。
 
 
 
「・・・やっぱり邪な波動がでてたんですよ」
 
 
 
そう言って祐巳が非難の目を向けると聖は、
 
 
 
「ぬぁっ!?こんな清らかな私を捕まえてそんなことを言うなんて・・・!!」
 
 
 
大ショック!と、のたもうた。
 
 
 
「私はただ二人の行く末を暖かく見守ろうしただけなのにー!!」
邪以外の何者でもないじゃないですか!!だいたい聖さまは・・・・・!!」
 
 
 
邪念の塊に文句を言い出したら切りがない。
結局祐巳は、解散するまでたっぷりと聖にお説教をすることに。
残ったのは疲労だけというありさまだった・・・・・
 






 
後日、薔薇の館で祐巳と顔会わせた乃梨子は、ひくっ、と唇の端を引き攣らせた
のみで、何も口にはしなかった。
持つべきものはよき後輩である。
そしてできることならば、悪い先輩は捨ててしまいたいと、割と切実に祐巳は思うのであった。
 
 
 


Fin


あとがき(言い訳)

ごきげんよう皆様♪
うわっ、なんかまた聖さまファンに締め上げられそうなことをやっちまったぜぃ、な出来栄えです(苦笑)
でもほら、祐巳ちゃんと二人っきりでお出かけしてるんだからいいじゃん!(をぃ)
いや、聖さまは好きだよ?・・・・・・ただうちではオチ担当がすごく似合ってるだけで(笑)

とりあえず、内容的にはのり×しまデートの裏側的に書いてます。
ハイエナを掃討してるのが祐巳ちゃんだったり、動物達に喧嘩売ってるのが聖さまだったり(笑)
最初はおとなしくのり×しまのデートを書く予定だったんだけど、
薔薇の館で祐巳ちゃんをだしたら自動的に聖さまがくっついてきちゃったんで、こちらも書きました。
相変わらずギャグ路線ですが、2本とも楽しんでいただけたなら幸いです♪
ではでは、また次の作品でお会いしましょう♪ごきげんよ〜♪(キ^^)ノ

2007/6/1著


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