真夏日 「蓉子・・・・さま・・・・」 電話越しに聞こえたのは苦しそうな祐巳ちゃんの声。
彼女が自宅に居ることを確認し、私はマンションを飛び出した。 バイクのエンジンをかけ、彼女の家までひた走る。 途中の信号待ちすらもどかしい。 法定速度をゆうにすっ飛ばし走ってきたにも関わらず、 祐巳ちゃんの家に着くまでの時間はいつもよりずっと長く感じた。 チャイムを鳴らすと、出てきたみきさんへの挨拶もそこそこ、私は階段を駆け上がった。 そしてドアを開けて最初に目に入ったのは、ベッドの上でぐったりとしている祐巳ちゃんの姿だった。 「祐巳ちゃん!」 「蓉子さま・・・・・」 慌てて駆け寄り抱き起こすと、電話と同じように私の名前を呼ぶ。 「どうしたの祐巳ちゃん!しっかりして!!」 そんなにも具合が悪いのだろうかと思い、病院へつれていこうか思案していると祐巳ちゃんがぽつりと一言。 「・・・・暑いです」 「・・・・・は?」 停止した思考に重なるように、思わず間抜けな声が漏れた。 ・ ・ ・ ・ ・
「・・・つまり、クーラーが故障して暑かっただけと」 「・・・・・はい」 申し訳なさそうに視線を落とす祐巳ちゃんの手の中で、グラスの氷がカランと音を立てる。 みきさんに麦茶を出してもらい、一息ついたところで話を聞いたところ、 今朝方クーラーがマリア様の御許へ旅立たれたらしく、 ぐったりと横になっていたところへ、私が電話をかけたらしい。 そして、祐巳ちゃんの声を聞いて家を飛び出した私。 なんていうか、盛大に勘違い。恥ずかしすぎて、しばらく埋まっていたいくらいだ。 「あの、ごめんなさい蓉子さま・・・・」 「え、あぁ、いいのよ、私が話も聞かずに勘違いしちゃっただけなんだから」 まぁあれだ、祐巳ちゃんに大事が無くてよかったわけだし・・・・・ この際自己嫌悪も埋めてしまうべきだろう。 「あ、でも・・・・」 「ん、なに、祐巳ちゃん?」 「すぐに来てくれて、嬉しかったな〜、って」 そう言って祐巳ちゃんはえへへ、と笑う。 そんな顔でそんな事言われて、嬉しいのは私の方だ。 頬が緩むのが我慢できず、祐巳ちゃんの肩に手をかけるとそのまま抱き締めた。 「暑いですよ、蓉子さま」 「じゃあ離れる?」 「・・・・ううん、もうちょっとだけ」 ぎゅっとしがみつく祐巳ちゃんは、暑さなんか気にならないくらい本当に可愛いかった。 おまけ 「ゆきちぃ〜、なんてこんなに暑いんだよ〜」 「黙れ小林。クーラーが壊れてるんだからしょうがないだろ」 「んー、じゃあ祐巳ちゃんの部屋に・・・・」 「向こうも壊れてるんだよ・・・・」 「それでも女の子の部屋の方が・・・・・」 「・・・・叩き出されるぞ」 いや、それどころか本気で埋められるかもしれない。 熱地獄の中で一人身震いする祐麒であった。 ...Fin
あとがき(言い訳) まだ梅雨入りしたばっかだってのにこの暑さ! 雨が降れば多少はましだけど、暑いの苦手なキッドです、ごきげんよう(ぐったり) 暑くって突発的にSS書いちゃいました。 ちなみにうちのクーラーは生きてますけど、掃除してないんで使えません(ダメじゃん!) 原作では祐麒君のところだけ壊れてましたが、今回は両方ご臨終していただきました。 そして蓉子さま盛大に勘違い。 まぁ祐巳ちゃんのことになるとさすがの蓉子さまでも平静ではいられないんです、うん。 でもうちの蓉子さまと祐巳ちゃんは、暑くたってイチャイチャは止めません(笑) うちもそろそろ扇風機くらいは掃除しようかと思いました。 でもどっちも掃除してないんで、空我也さん達のサークルでもらった聖さまと祐巳ちゃんの団扇でしのいでます(笑) 絵は聖さまと祐巳ちゃん熱々ですが、送られてくる風はきちんと涼しいです(当たり前) そしてうちの父が団扇を見ながら怪訝そうな目を向けてきます。また妙な物をって感じに。なんか文句あるんか。 どうせなら蓉×祐の団扇も欲しいです。誰か描いて(笑) つーかもぅ、どこらへんがあとがきやねん(苦笑) 2007/6/14著
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