大学に入って一人暮らしを始めた。
別に家から通えない距離ではなかったのだけどしいて言うならなんとなく。
少しくらいは自分で何かやり始めなければ、と思ったのかもしれない。
親の仕送りで生活しておいて自立も何もないのだけれど。
「くぅーっ!惜しいぃーっ!!」
「なんで今のが入らへんのやぁーっ!!」
「…………」
……そう、一人暮らしを始めたはずなのだ。
間違いなく、確かに。
表札だって郵便受けだって私の名前だけのはずなのに、
なぜか部屋にはいつも同じ大学に進学した竜華がいたりする。
しかも今日はセーラまでいる。
おまけに時刻は夜中……いやもう朝の四時半やのに、あんたらほんまなんでおるん?
「あぁ……前半終わってしもた……」
「そやな……」
「しかも最後の方危なかったし……」
「いや、何言うてるんや竜華!俺らが弱気になったらあかん!」
「う、そ、そやな!うちらが信じて応援せな!」
ぐっと拳を握りしめて後半もきばってくでー!と叫ぶセーラと竜華。
いやそういうん自分家でやってくれんかな?
うるさいて苦情言われんの私なんやけど。
「あ、怜、冷蔵庫のジュース飲んでええ?」
「酒はないんかー」
「買ってきたらええやん」
「えー、せやけどそろそろ後半始まるやん……」
「…………」
いや、ええねん、百歩譲ってうちにたむろするくらいは許したる。
けどな、けど、なんで安眠を妨害されたうえに冷蔵庫の中身にまで文句たれられなあかんの?
てか未成年やでうちら。
「よっしゃ!後半始まるでー!」
「点取り返してやー!……ん、どないしたん怜?」
「怜……?」
「…………」
スタスタ……ブツンッ。
「「あぁぁぁーーーーっ!?」」
後半もこの調子で騒ぐつもりらしい二人にさすがに私もカチンときた。
テレビの横に行って後半開始のホイッスルと同時にテレビの電源コードを引っこ抜く。
後半戦?
知らんわそんなん。
私はもう眠いんや。
「いやぁーっ!?怜ぃーっ、テレビ返してぇーっ!?」
「騒がへん、もう騒がへんからぁーっ!?」
叫ぶ二人に知らん顔をして電源コードを抱えたまま横になる。
あぁなんでこんなもん抱えて転がらなあかんねん。
もうしばらく離してなんかやらんけど。
「許してや怜ぃーっ!?」
「頼むわぁーっ!!」
半泣きになってきたけど二人にはもう少し反省をしてもらおう。
そう思いながら私はイヤホンの音量を上げた。
『さぁ後半戦が始まりました。追いついてくれ日本!』
……最近の携帯って便利やなぁ、ほんま。
...Fin
あとがき(言い訳)リアルタイムでサッカーのなでしこ見ながらこんなん書いてたキッドです(笑)
頑張れニッポンーとか思ってたら書き上がったとこで試合終了でしたおぅおぅ(;ω;)
でもせっかく書いたからUPする。
気が向いたらその後編を後日UPしますわん。コミケ前だから書けるかびみょいが(苦笑)
2012/8/10著
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