法案成立?


 
 
 
 
 
 
 
 
「みーほこー?」
「……」
「美穂子?」
「……」
「美穂子ってば」
「……」
 
 
 
 
ぷいっ、とそっぽを向いたっきり私の呼び掛けに応えない美穂子。
拗ねてるところも可愛いと思うけど、かれこれ一時間近くもこの調子なので、そろそろ原因が知りたいところ。
毎回なんかしら私の方に思い当たる節があるので、今回も胸に手を当てて考えてみたのだけど、結局美穂子の方が胸あるわよねーという感想しか浮かばなかった。
……いや、うん、別に悔しくはないわよ?
人並みにはあるんだし。
美穂子の触り心地がいいのは嬉しいし……じゃなくて。
 
 
 
 
「美穂子、ちゃんと言ってくれないと分からないわ」
「……分からないの?」
「んー……ごめん」
「……昨日」
「うん」
「朝早かったわ」
「うん」
「帰りも遅かったわ」
「うん」
「でもいつもならちゃんとしてくれるのに……一回もちゃんとしてくれなかったから……」
「……うん?」
 
 
 
 
後ろから美穂子を抱き締めると、美穂子はようやく話し始めてくれた。
ポツポツと紡がれる言葉に耳を傾けていたのだが……してないって……何を?
 
 
 
 
「だからその……キス……」
「……あー……」
 
 
 
 
最後にぽつりとこぼしたきり黙り込む美穂子。
耳まで赤く染まっているのが見えるが、たぶん私も似たような状況だと思う。
……何この可愛い生き物。
付き合ってどれだけ経ってると思ってるんだか。
そんな美穂子にきゅんときてしまう自分も自分なのであれなんだけど。
よーするに二人とも成長してないということよね。
……うん、悪くないわ。
 
 
 
 
「ごめん、そういや昨日はしなかったわね。ひょっとして待ってた?」
「してくれると思ったんだもの……」
「それで寝たふりまでしてたんだ?」
「わ、分かってたの?」
「うん、なんか可愛いことしてるなーってしばらく眺めてた」
 
 
 
 
しかし悲しいかな、半分以上寝ぼけた頭ではその理由までは思い至らず、眺めているうちに眠りの淵へと落ちてしまった。
……残念、すればよかった。
 
 
 
 
「なるほどねー、キスしてほしかったのねー」
「う……久のバカ……」
「ごめんごめん、可愛かったからつい、ね」
「……久は、したくない?」
「……ううん、したい」
 
 
 
 
言ったそばから、こちらを見上げるように窺っていた美穂子の唇に自分のそれを重ねる。
軽く何度か重ねると小さく、もっと、と美穂子がねだる。
たったそれだけのことにどれだけの気力を費やしているのか、赤く熟れた美穂子の顔を見ればよくわかった。
 
 
 
 
「ねぇ美穂子」
「ん……なぁに、久?」
「一日一ちゅー義務化法案?」
「ええ」
「義務でいいんだ?」
「……久の意地悪……」
 
 
 
 
返事の代わりに唇を軽く啄んだ。
ごめんなさいね意地悪な恋人で。
 
 
 
 
「嫌だって言ってももう離さないから」
「久……ん、ぁ……」
 
 
 
 
溺れちゃってるのはきっと私の方なのよ。
 
 
 
 
「とりあえず今日は二日分頑張るから」
「え……ま、まだお夕飯の準備が……きゃぁっ!?」
 
 
 
 
問答無用でフローリングに押し倒す。
結局その日は、美穂子に怒られながら随分と遅い夕飯をとったのだった。
 


...Fin


あとがき(言い訳)

新聞の政治欄を読みながらこんなことを考えたキッドです。
末期ですね、分かりますwww
同棲してて卒業間近で結婚秒読みなんだと思います(マテ)
永遠にいちゃついてればいいさー(笑)

2009/10/24著


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