「……ん、今何時……?」
ごろりと転がり携帯で時間を確認すれば既に午後……あかん、もう授業ないやん。
てかお昼食べてへん。
「……お腹すいた」
そう呟いて枕に突っ伏す。
心理状態がどうあれお腹は減るとか、生理現象とは恐ろしい。
「……怜は、もう来たんかな……?」
どれくらい遅れるにしろ、休みでないのならもうきているはずだ。
「……会いたいなぁ」
あかん、そう思うとめっちゃ会いたなってくる。
何言うてええかもどんな顔したらええかも分からんのに。
「会いたいて、誰に?」
「誰にてそんなん怜に決まって……と、怜っ!?」
「私……?」
聞こえた声にがばっと慌てて身を起こす。
ちょ、だ、まだ色々と心の準備が……!?
「……はっ、そ、そうや、身体大丈夫なん怜!?」
「平気やで、ひと眠りしてから来たし……」
「そ、そか……」
「大体それ言うたら私やなくて竜華の方やん。目の下にこんな隈まで作って何してるんよ」
「うぅっ、ご、ごめん……」
つぅっと私の目の下を怜の指がすべる。
怜の言葉通り怜自身は特に問題はないらしく、今日はもっぱら方々に迷惑かけっぱなし私の方がよほど問題だ。
「……あれ、そういえば怜、なんでおるん?」
「なんでて……もう放課後やからな。これ、鞄とお弁当」
「あー、持ってきてくれたんか、ありがとう〜」
差しだされた鞄を受け取って中のお弁当を見ると、お腹がぐ〜と催促した。
……素直なんはええけどもう少し恥じらいってものを持てんのかな、いやお腹に言うてもしゃーないけど。
「……まぁ、その様子なら大丈夫そうやな。それやったら私は先部活いくわ」
「え、あ、ちょ……い、一緒に行ってくれへんの?」
「でも竜華、お弁当食べるやろ?」
「う、あ、べ、別にええで、お弁当くらい一つ二つ食べんでも……」
ぐぐぅ〜。
「……」
「……」
……意気地ないわ、私のお腹。
「……食べてからきたらええやん」
「う、ん……でも……一緒にいたいんやもん……」
「……ん、そか」
なら待ってるわ、とベッド脇の椅子に怜は腰をおろした。
引き止めてどうするのか、と思うけど、理性より感情が先に走る。
怜と一緒にいたい。
私の想いがどうあれ、それはいつもと変わらない。
……てゆか私ここで食べるん?
「こぼさんかったら平気やで?」
「あんた時々食堂にも教室にもおらんと思たら……」
どうやらここでそのまま食べていたらしい。
そらこぼさんかったらあれかもしれんけど、行儀は絶対良くないで?
「平気や、先生今日はしばらくおらんし」
「……なんや悪いことしてる気分やわ……」
溜息をつきながらしぶしぶ私はお弁当箱の蓋をあけると、いつもと同じお母さんのお弁当をいつもとは違ってベッドの上でつつき始める。
「……」
「……」
……気まずい。
「……竜華」
「んぐ……な、何……!?」
「……昨日はごめんな、あと今朝のメールも……」
「あ、あぁ、いや……気にせんでええよ……」
「……」
「……ちょぉ寂しかったわ……」
「ん……ごめんな……」
聞かなければ、と思っていたことを怜の方から切り出してくれた。
拗ねていたのか怒っていたのかは分からないけど、とりあえず嫌われたわけじゃないようでほっとする。
……でもあともう一つ、聞かなければならないことが残っている。
「あ、あのな例の、ら、ラブレター……のこと、なんやけ、ど……」
「あぁ……もう断ったで?」
「そう断っ……はい?」
断ったって……いつ?
「昨日。開けたら番号書いてあったから」
「かけたん!?」
「病院の公衆電話からな」
「あ、あぁなるほど……」
まさか携帯からかけたのか、と焦ったけど、怜がそんな不用心なことをするはずもない。
ていうか公衆電話からとか、よく相手電話でたもんやな。
「まぁ非通知でかけてもよかったんやけど」
「どっちも変わらんわ……」
いや、若干公衆電話の方が出てくれる確率はあがるだろうか。
非通知とか一番出たくない電話やし。
あくまで五十歩百歩くらいな気はするけどな。
「またあの辺で声かけられるん待つのも億劫やったし、相手の学校までいく必要もないからな」
「まぁ、そやな……」
「律儀な竜華は知らんけど」
「わ、私は別に……」
相手の学校までとか行ったことないし。
そりゃ通学路でってことはあったけど……はっ。
「い、いやちゃうで! 私は怜一筋やし!」
「えっ……」
「はぅっ!?」
段々ジトッとしてきた怜の視線に何か言い訳を、と思ったら何か凄いことを言った気がする。
普段だったらそのまま何かしら友達ワードにつなげていくけど、自分の気持ちに気がついてしまった今は適当な続きが思いつかない。
ていうか今までどうやって流してたん私?
全然思いだせへんし……
「や、ほら、あれや、私が一番大事なんは怜……はわわ」
「う、うん……」
「え、と……な、何にしても早めに片付いてよかったな〜……あ、あはは……」
ぎこちない空気が私の言葉でどんどん重たくなっていく。
地雷原にいる気分でどこに進んでも危ない気がする。
というか既にいくつか踏んだんちゃうか?
「……」
「……えーと……」
明らかにそわそわし始めた怜と挙動不審になってきた私。
傍から見たらもの凄く滑稽だと思うけど、当の私達にそんなことを考える余裕なんてない。
ていうかそわそわしとる怜が可愛い。
あれか、こ、ここ、これはまったく脈無しやないっちゅーフラグみたいな……
「りゅ、竜華」
「ななな何?」
「わ、私もちょっと聞きたいんやけど」
「う、うん」
「その……」
「……」
「いつもお世話になってる人に感謝とか、その、色々伝えたいて思うんやけど、どうしたらええやろか?」
「……へ?」
これってちょっといい雰囲気なんとちゃうやろか?
……なんて思っていたのも束の間、怜の口から出てきた言葉に意識が凍る。
……え、それってあれやろか、こう、誰かそういう相手がおるってことで……え、え?
「や、その、深い意味は……そんなないんやけどな?」
どっちやねん。
「なんやその、面と向かって言うんはちょぉ恥ずかしい言うか……」
「あ、あはは……そ、そうなんや」
「う、うん」
天国から地獄ってこういうことを言うんかも。
てか誰?
誰なん?
あれか、いつもお世話にっちゅーことは病院の人やろか。
最近は男性の看護師さんもおるし……はっ、もしやイケメンのお医者さんか看護師さんがいるんか!?
「それで竜華……どうしたらええと思う?」
「アー……ソ、ソレコソテガミトカ、エエンチガウカナーナンテ……ハハハ、ハ……」
どうもこうも、今すぐ泣きたいわ私は……
「手紙か……うん、ええなそれ」
「エッ」
「早速試してみるわ。ありがとうな竜華」
じゃあ私は先部活行くわー……と、怜はそそくさと保健室を出ていった。
……え?
「あれ、一緒に行こうて……え、え?」
ポツン、とベッドの上に取り残された私。
怜に好きな人がいても負けへんでー!……と思いたいけど、すでにダメージが大きい気がする。
わ、私をほっぽってくほど好きなんかー!?
「う、うぅ……スタートラインが、遠いなぁ……」
初恋なのに始まる前に二回も躓くとか悲しすぎる。
「ま、負けへん……負けへん、で……ぐす」
残ったお弁当の煮物をつつきながら怜への気持ちを再確認する。
……ごめんお母さん、今日はもうお弁当の味とか分からんわ私……怜のあほぉ……はぁ。
...Fin
あとがき(言い訳)てことで竜怜の続きでっす☆まだ続くけどなー(笑)
コピー本に載せたのはこの次の4まででした。更に4の続きを書くか……検討中w
ちゅーするまでの初恋かぽーっていいよね(・∀・)ニヨニヨw
2013/1/25著
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