ピンチの後に・・・?




降り続いた秋の雨も引っ込んで、
久しぶりに青空が広がった今日、事件は起きた・・・・



「冗談でしょう・・・・」
「すまん・・・・」
「だって今さっきまで・・・・」
「確かにな・・・でも今はもうないんだ・・・・」「そんな・・・・」



・・・・注意しておくが愛憎のもつれなどではない。
いや、どう見たって昼メロのノリだけどさ。



「本当にすまん・・・・」
「勘弁してよ、お父さん・・・・」



そう、会話の相手は父だったりする。
事の発端は30分ほど前に遡る。
午前中、私は父の書斎で調べ物をしていた。
そして調べ物も一段落したところに家の電話がなった。
だから書斎をでて電話にでた、・・・・ここまではいい。

問題はその後だ。

そこへちょうど入れ違いになるような形で父が書斎に入った。
父は父で調べ物をしに来たのだが・・・ハプニングは起こった。
(すでに勘のいい読者は予想ができていると思うのだが)

父が積み上げた分厚い本の山、その父が誤ってそれを崩してしまったのだ。
当然、本は重力に逆らうことなく落下し・・・・脇に置かれていたあるものを直撃した。
そして電話を終えて戻ってきた私が見たものは、
微妙な部屋の空気の中でうなだれる父と、無残に押し潰された私の眼鏡だった・・・・

そして父から事の経緯を聞かされ冒頭の台詞につながる、というわけだ。
とにもかくにも、眼鏡を外したまま電話に出たことが悔やまれてならない。
だがまぁ、うなだれてしょんぼりしている父をこれ以上責めてもしょうがない。
せめて眼鏡の買い換え費用に期待しておこう。



「しょうがない、代えの眼鏡を・・・っ!?」
「ん?どうした?」
「・・・・ない」
「ない?」
「昨日修理にだしたばかりだ・・・・」
「あ・・・・」



そう、昨日フレーム修理に預けてきたばかり。
なんて間の悪い・・・・



「まぁしかし今日は家にいるんだろう?一日くらい問題ないだろ」
「さっきまではそのつもりだったんだけどね・・・・」



タイミングが悪い時はとことん重なるものである。
ついさっき、電話で出かける約束をしたばかりなのだから。



「お、そうだ!この間使い捨てのコンタクトレンズを買ったんだがそれを使ったらどうだ?」
「う・・・・」



背に腹は変えられないというが・・・・
どうする蔦子、約束の時間は迫ってきている。
躊躇している余裕はないぞ。
そうして自分に言い聞かせるようにして徐々に決意を固めていく。

そしてふと思った、これは17年の人生の中で最大のピンチかもしれない、と。




午後1:55、きっちり約束の5分前に到着すると彼女すでに着いていた。
人込みの中でも彼女の顔立ちや雰囲気のよさは、
自然と人目を引くものかあるので探し出すのは容易だ。
伊達にモデルをしていた訳ではない、
今もその愛らしい表情は困惑気味で・・・・え?困惑?



「・・・・」



見間違いではない、彼女は表情を曇らせ何かにじっと耐えている。


・・・・何に?


その理由はすぐに分かった。
人込みを抜け、改めて視界におさめた彼女のそばに・・・・ハエが二匹ほど飛んでいた。



・・・ぷち。



クールで知的なキャラで売っていた武嶋蔦子、
人生で初めて切れる音を聞いた瞬間であった・・・・




「君、可愛いね〜」
「俺達と遊びにいこうよ」



・・・・さっきから何度同じ事を言えば気がすむのだろう?
いい加減返答するのも億劫になってきたところで、



「ダメ。彼女、私のだから」



そう言って私の肩を抱きよせたのは・・・・



「蔦子さま!!」



約束の相手、武嶋蔦子その人であった。



「行くよ」
「は、はい!」



突然乱入についていけず、
ポカーンとしている彼らなど意にかいさず蔦子さまはずんずんと歩いていく。
当然肩を抱かれたままの私も同じ様に歩いていく。
この状況、嬉しいといえば嬉しいのだが・・・・
隣から強烈な怒気を感じるので正直それどころではなかったりする。



「あの、蔦子さま・・・・?」
「・・・・ごめん」
「え?」
「私が遅くなったせいで嫌な思いさせて」
「そんな!?蔦子さまのせいじゃありません!時間より早く来すぎたのは私のせいだし・・・・」

「だけど・・・!」
「もう!気にしないでいいですってば!!それに、その、う、嬉しかったですし・・・・」
「あ・・・う、うん、まぁ勢いというかなんというか・・・・」
「それでも嬉しいです・・・・」
「うん・・・そろそろ行こうか?」
「はい!」




笙子ちゃんを奪還したものの、怖い思いをさせたことにかわりはない。
おまけに、なんか凄いことを口走った気がするし・・・・
もちろん、笙子ちゃんの言葉でそんな鬱屈とした気持ちは飛んで行ってしまったのだけど。
我ながら現金なものだ。
これじゃあ祐巳さんや由乃さんのことを笑えない。

・・・・にしても、今日は人生初の多い日だ。
コンタクトに始まりマジギレに姉バカ風味ときたものだ。
思わず苦笑を漏らすとそれに笙子ちゃんが反応した。



「蔦子さま?」
「ん、あぁいや、今日は人生初の多い日だな〜、って」
「人生初、ですか?」
「そ、人生初。笙子ちゃんとのデートも初めてだし、ね♪」
「はぅ・・・・」



あらら、真っ赤になっちゃった。
こういうところ祐巳さんみたいで見てて飽きない。
なんて悠長に考えてたら・・・・



「!?」
「えへへ」



抱きつかれた腕に柔らかい感触が・・・・ってそうじゃない。



「しょ、笙子ちゃん!?」
「・・・・ダメですか?」



うっ・・・・か、可愛い。



「いや、その、ダメじゃないけど・・・」
「よかった♪さ、行きましょう蔦子さま♪」



半ば引きずられるように歩き出す。
最終的にはこんな風に振り回されることになるのかもしれないが・・・・
それはそれでいいのかもしれない。

・・・・なんて思う時点で、
かなり脳内が祐巳さん達に近づいてることに気づかされるのであった・・・・




....To be continued                       


あとがき(言い訳)

クリスマスは卒論と過ごしたキッドです、ごきげんよう(泣)
まぁでも第1回目の卒論提出は一応すみまして、かつ内定がでたこともあって
ちょっぴりだけ余裕が出来た今日この頃♪
・・・その余裕も滞っていた諸々の作業で忙殺されることは間違いなさそうですが。
なんて現実的なことは忘れて作品解説に行きましょう!!(逃)

はい!マリみてエアラインでのあとがきで、いつか書く!
と言っていた蔦笙SSです!しかも甘い!!(笑)
姉妹なのか、とか恋人なのか、とかいう細かい設定はしてないんですが、
そんなことお構いなしにこの二人は勝手に二人の世界に行ってしまいました(笑)
最近菜々ちゃんや笙子ちゃんがマイブームなんで他でもまだまだ出番があるかも?
そしてこのSS、続きます!!
いや、もう十分甘いんでここまでで良いかな〜って思ったんですが、
この後のデート編が読みたい!との声があったんで、もう1本書くかな〜って♪
とりあえず年明け後に執筆予定なんで、更新されるまで脳内補完してください(笑)
それでは来年もまったりと〜♪よい御年を〜♪ごきげんよ〜(キ^^)ノ


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