金の閃光は聖夜を駆ける 〜 Right now to you 〜1

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
12月25日。

俗に言うクリスマス当日。

私のボルテージは最高潮に達していた。
 
 
 
 
「・・・・ねぇ、シャーリー、ティアナ」
「は、はい、なんでしょう?」
「あ、う、ふぇ、フェイトさん?」
「これって一体どういうことなのかなぁ・・・・・」
「いえ、あの、私達に聞かれましても・・・・・」
 
 
 
 
そう、怒りのボルテージで真っ赤に。

なんでかって?

それはね・・・・・・・
 
 
 
 
「・・・・どうして緊急出動なんてかかるのぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
 
 
 
 
大事な日なのに、お仕事になっちゃったからだよ。
 
 
 
 
 
 
 
 
「ふぇ、フェイトさん落ち着いて」
「落ち着く?どうやって?」
「いや、あの・・・・・」
「今日はこれからヴィヴィオにプレゼント持って帰って、なのはとイチャイチャする予定だったんだよぉーっ!!?」
「そのへんの心情はせめて心の中に留めておいてくださいよ〜・・・・」
「無理!」
 
 
 
 
必死に私を宥めようとするシャーリーとティアナに向かって、盛大に不満をぶちまける。
普段なら考えられないことだけど、今日この日のためにプレゼントを用意し、休暇の準備をしていた私にとっては一大事だ。
しかも先日まで別次元の事件に駆り出されていたので、今の私は完全になのは欠乏症。
私にとっては死活問題なのに、ようやくなのは分を補給できると思った矢先の出来事だった。
叫びながらも、まだ職場に止まっていられるのが奇跡のようなものだった。
 
 
 
 
「うーん、事件は時と場所を選んでくれませんからね〜」
「暢気に言ってないでよシャーリー!」
「しかも内容が"痴話げんかのもつれで、男性の方がキレてレストランで人質とって立て籠もってる"ですからね・・・・」
「惚気だよね、喧嘩売ってるんだよね、そうに違いないよねっ!!!」
「まぁ、馬鹿馬鹿しい内容ですけど・・・・人質に政界の大物が含まれてるらしいですから・・・・・」
 
 
 
 
そう、実に馬鹿馬鹿しい事件の内容に、できることなら断りを入れたいくらいだったのだが、
なんでも政界の誰だかが人質に含まれているらしく、急遽次元航行から戻ってきたばかりの私達に白羽の矢が立てられたのだ。
お偉いさんがいるからって、なんで私達に回ってくるわけ?
管理局って警察&司法組織みたいなもんなんだから、贔屓ってしちゃいけないと思うんだけど。
ねぇ、そうだよね!?
 
 
 
 
「フェイトさん、気持ちは分かりますけど、そろそろ出ないと・・・・」
「うぐぅ・・・だって、だってぇ〜・・・・・・」
 
 
 
 
あまりの事態に、思わず目頭が熱くなる。
いくら事件が時と場所を選ばないっていっても、何もこんなにピンポイントでこなくてもいいと思う。
半泣きに近い状態でぐずる私に、普段の執務官としての面影は何処にも無かった。
 
 
 
 
「もー、フェイトさんってば〜・・・・・」
「あ、シャーリーさん、最終兵器がきましたよ」
「ほんと?繋いでちょうだい♪」
 
 
 
 
呆れた表情で私を宥めていた、シャーリーとティアナの言葉が耳を掠める。
最終兵器って・・・・なに?
いや、たとえなんであっても、私は現場に行きたくな・・・・
 
 
 
 
『あ、繋がった。フェイトちゃーん?』
『フェイトママー?』
「え・・・・なのはっ!?ヴィヴィオっ!?」
 
 
 
 
半ば意地になっていた私の視界に映ったのは、繋がれた映像通信のなのはとヴィヴィオだった。
 
 
 
 
『もう本局に戻ってきてるんだよね?お疲れ様フェイトちゃん』
『フェイトママおつかぇさまぁ〜』
「う、うん・・・・」
『シャーリーとティアナもお疲れ様』
「お疲れ様です、なのはさん」
「お疲れ様です。んー、でも私は事務系ですから、二人に比べたら楽ちんなんですけどねー」
『もう、シャーリーはまたそんなこと言って・・・・いつもフェイトちゃんを支えててくれて、嬉しいよ?』
「あはは、ありがとうございます、なのはさん」
 
 
 
 
突然の出来事に、ほけーっとなのはを見つめている私を余所に、
なのははティアナやシャーリーとも、会話を交わす。
うん、お世話になってます。
なのは不足で、発狂しかけた時とか特に。
 
 
 
 
『あ、そういえばフェイトちゃん、さっき緊急出動かかったんだよね』
「え、あ、うん、どうしてそれを・・・・・」
『うん、さっきシャーリーとティアナからその件で連絡くださいって、通信もらったんだけど』
「えぇっ!?」
 
 
 
 
バッ!と、二人を見ると、二人とも慌てて視線を逸らした。
どうやら私がぐずるのを見越して、先手を打っていたらしい。
見事な副官っぷりだが、なぜか凄く嬉しくない。
 
 
 
 
『出動前にごめんね、フェイトちゃん』
「う、ううん!そんなことないよ、なのは!」
 
 
 
 
なのはも私の表情から、事態を察したのだろう。
少し困ったように笑いながら、話を続ける。
 
 
 
 
『今ね、ヴィヴィオと一緒にご飯の支度してるんだけど』
『してるのー』
「うん」
『八時くらいを目処に準備してたんだけど・・・間に合わなそうかな?』
『だめー?』
 
 
 
 
ご飯やらケーキやら、私が無事帰れることを前提に二人が準備をしてくれていた。
モニターの中でなのはが首を傾げると、隣のヴィヴィオも一緒に首を傾げて聞いてくる。
そんな愛する妻と娘の姿を目の当たりにして、言うべきことはただ一つ。
 
 
 
 
「いや、大丈夫だよ!仕事なんてすぐに終わらせて、八時までにはちゃんと帰ってみせるから!!」
 
 
 
 
拳をぐっと握り、モニターに向かって宣言する。
そうだ、私は何を迷っていたのだろう。
早く現場に向かって処理した方が、早く帰れるに決まってるじゃないか!
そんな当たり前の事実に、今更ながら気づかされる。
 
 
 
 
『ふふ、分かった、じゃあその予定で準備しておくね?』
『おくねー♪』
「うん、絶対に時間までには帰るから!!」
『約束だよ、フェイトちゃん?』
『やくそくだよぉーフェイトママ』
「もちろんだよ!待っててね、なのは!ヴィヴィオ!」
 
 
 
 
私は決意を新たにすると、二人に時間までに帰る旨を約束し、通信を終えた。
そして勢いよく踵を返すと、転送ポートへと向かう。
 
 
 
 
「迷惑かけてごめん。行こう、シャーリー!ティアナ!」
「はい、フェイトさん!」
「それでこそ、フェイトさんです!」
 
 
 
 
背筋を伸ばして歩く私の姿には、先程までと違い全身からやる気がみなぎっている。
これでこそ、フェイト執務官というものだろう。
なのはのお陰で、執務官としての顔を取り戻した私は、めまぐるしい勢いで事件解決のプランを練り始める。
全ては、妻と娘のために。
待っててね、なのは、ヴィヴィオ、私は必ず二人のもとに帰りついてみせるから!!
私は、その決意と共に、強く拳を握り締めたのであった。

 
 
 
 

...To be Continued

 
 


なかがき(言い訳)

クリスマスに更新しようと頑張って、結局終わらないうえに長くなりそうで、
頭を抱えこんでいるキッドです、ごきげんよー。
そんなわけで、続きます。

生暖かい目をしたまま待て!!(笑)

2007/12/25著


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