足元にすり寄る小さな身体。
見上げてくるつぶらな瞳。
これといって寄ってくる理由なんて見当たらないのだけど、寄ってきたものは邪険に出来ない。
「っていうか本当になんで寄ってくるんだろう……」
傍にこられるのが嫌なわけじゃない。
むしろ嬉しい。
警戒心むき出しとかの方がショックだし。
『にゃー』
「うーん……でも私はご飯もってないよ?」
『にゃー?』
「言っても伝わらないよね……」
いや、でも私がご飯持ってるかどうかなんて猫には丸わかりかもしれない。
匂いとかでばれそうだし。
それでもそんな私の足元をウロウロぐるぐる、最後にすりすり。
外回りから戻ってきた私に甘える猫。
「構ってほしいのかな……?」
『にゃー♪』
私が屈んで手を伸ばすと今度はその手に猫がじゃれついた。
これはご飯じゃなくて構ってほしいってことなのかな?
そう思って頭や首を撫でてあげると嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
なんとも懐っこい。
首輪はついてないから飼い猫ではないと思うのだけど。
「六課の隊員や一般の人もよく通るとこだし、人に慣れてるのかな?」
六課にほど近いこの公園は隊員が休憩によく来るし、一般の人もよく見かけるからきっと皆に可愛がられているのだろう。
嬉しそうに私の手にすり寄るその姿に自然私の頬も緩む。
そういえば甘えてくる時のなのはもこんな感じかもしれない。
「……なのは」
『にゃー?』
「なのは……なーのはっ♪」
「……何してるのフェイトちゃん?」
「はぅぁっ!?」
『にゃっ!?』
「あ……逃げちゃったね……」
「な……な、なななの、は……」
そう言えばこの子白いし目も青みがかってるし、ちょっとなのはっぽいかも。
……なんて思ったら本当になのはが猫になって私に甘えて来てるんじゃないか、なんて思えてきちゃって、思わずなのはと呼びながら猫と戯れてしまっていた。
直後、背中から聞こえた本当のなのはの声に飛び上がることになるなんて思わずに。
「ど、どうしてここに……」
「え、あぁ、フェイトちゃんがここにいるってスバルとティアナが教えてくれて……」
スバル、ティアナ、なんていうタイミングで……いや二人のせいじゃないのは分かっているけど。
「……えーっと、フェイトちゃんそういう趣味が」
「ないよ!?」
誤解過ぎる。
別になのはの代わりに猫と戯れたかったわけじゃない、というかそこまで病んでない。
いやなのはが猫でも愛せるけど。
むしろどんななのはも愛してるけど!
「フェイトちゃん声出てるから……」
「はぅ……ごめん……」
そんなこと大声で言われても恥ずかしい……となのはは下を向いてしまった。
怒っているわけじゃないみたいだけど機嫌を損ねてしまったのかもしれない。
なんとか弁解しなければ、と私は慌ててなのはに手を伸ばした。
――その手、が。
「……なのは?」
「……にゃぁ」
「っ!?」
伸ばした手に触れるなのはの髪、なのはの頬。
まるでさっきの猫のように、けれど比較にならないほどの艶を帯びた表情と仕草でじゃれる。
そして最後に一つ、私の指を甘く噛んで、ふいっとそっぽを向くようになのはは離れた。
「……」
「にゃぁ♪」
「〜〜〜〜っ」
白昼堂々、恥ずかしいのはどっちなのかな本当に。
そう不満に思うより先にふりふりと尻尾のように揺れるなのはの髪とその背中を追って歩き出す。
仕事?お昼ご飯?後回しだよそんなもの。
君の方から誘ったんだ、責任とってよね、なのは。
...Fin
あとがき(言い訳) 久しぶりにふつーのなのフェイSSです。……普通か、これ?ww
前になのはさんが黒猫からフェイトさんのことを連想するSSを書いたんで今度は逆で……
と思ったら結局なのはさんが甘えて誘ってました(笑)
映画ももうすぐだし、vividあたりもアニメ化してくれんかな〜?
動くなのフェイをいっぱい見たいわ〜(笑)
2012/6/24著
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