アリすずの場合的な

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「うーん、まぁこれくらいかしらね……」
 
 
 
 
あたしはテーブルに用意したお菓子やティーセットをしばらく眺めてから頷いた。
今日は久しぶりになのは達が帰ってくる。
三人ともお休みがかぶったらしく、加えてなのは……と一応フェイトの一人娘のヴィヴィオも春休み。
じゃあ短い滞在だけど帰ろうか、という話になったらしい。
……別に個別でもいいから帰ってくりゃいいじゃない、ねぇ?
 
 
 
 
「……ちょっとお菓子、多いかな……?」
 
 
 
 
それでもあたし自身、いつもよりはしゃいでいるのか今日はどうにも調子がおかしい。
目覚ましなにそれな時間には起きるし、気がついたらあれもこれもと買い込みすぎたし、
目の前に盛ったお菓子もよく考えると多い気がする。
いやほらヴィヴィオのためよ、とか、なのはは甘い物好きだし、とか、何かにつけて理由を探す。
 
 
 
 
「まぁ、うん、余ったら後で食べればいいわよね……」
 
 
 
 
一人うんうんと頷いたりして。
……なんて調子でずっといたから気付かなかった。
今日がなんの日かなんて覚えてるはずがない。
 
 
 
 
「アリサちゃん、出来た?」
「ええ、ばっちりよすずか」
 
 
 
 
家の中からテラスへと出てきたすずかに返事を返す。
そうここはすずかの家。
そして転送ポイントにと提供しているすぐそこの庭にもうすぐなのは達が降り立つはずだ。
 
 
 
 
「……ねぇアリサちゃん」
「んー?」
「私のこと、好き?」
「は? ……何よいきなり……好きよ?」
 
 
 
 
いきなりの問いに少しばかり頬が熱を持つのを感じたが、私は務めて冷静にそう返した。
たまに照れくさい時もあるし、人前だとまぁちょっとあれだけど、今ならそれくらいは素直に言える。
いつもみたいに喜んですずかもまた返してくれるのだろう……そう思った。
……けれど返ってこない返事にすずかの方を振り向いてぎょっとした。
 
 
 
 
「あ……」
「ちょ……」
「アリサちゃんの、バカーッ!!」
「す、すずかー!?」
 
 
 
 
振り向いた先のすずかはぎゅっと拳を握ってぷるぷると震えていた。
何事!?と慌てて身体ごと向き直れば、何かを聞く間もなくすずかはダッと駆けだした。
……って、ちょっと!今のどこがまずかったわけ!?
なんなのよもぉー!?
 
 
 
 
「ちょ、ちょっと待ちなさいすずか!」
「アリサちゃんのバカ! 今日はエイプリルフールなのにっ!!」
「……はぁぁっ!?」
 
 
 
 
逃げるすずかを追って庭をぐるぐると大爆走。
あたしはすっかり失念していたのだけど今日は4月1日、そうエイプリルフールだった。
……って、つまり何、あたしは「好き」じゃなくて「嫌い」って言えばよかったわけ?
そんな分かりにくネタを仕込むとか止めてほしいんだけど……
 
 
 
 
「っていうか言えるわけないでしょ! 好きなんだから!!」
「……っ!!」
 
 
 
 
叫んだ拍子に僅かに鈍ったすずかの逃げ足。
そのすずかの左手をあたしは掴むと有無を言わさず引き寄せて抱き締めた。
 
 
 
 
「たく、もぉ……!」
「あ、アリサちゃん……」
「……言わないわよ」
「え……?」
「嘘でだって言わないわよ。嫌いだなんて……」
「……アリサちゃん……」
 
 
 
 
……ごめんね、と腕の中でしゅんとするすずかに、まぁいいわよと言って抱き締め直す。
すずかがこんなことを言い出すのは珍しい。
きっとなのは達の事を気にしてばかりのあたしにもう少し自分の方を向いてほしかっただけなのだろう。
そう、なのは達…………ん?
 
 
 
 
「……ねぇ、今何時?」
「……え?」
 
 
 
 
そういえばあたし達は今か今かとなのは達の到着待っていたのではなかっただろうか?
……と、そう気がついた時、傍の庭が光を発した。
 
 
 
 
「「あっ」」

「はい到着〜♪」
「ヴィヴィオ、気分悪くない?」
「だいじょうぶ!」
「心配性やなフェイトちゃんは。転送酔いなんてそうなるもんでも……ぉ?」
「え?」
「ふぇ?」
「?」
 
 
 
 
文字通りあっという間に消えた光の中からは待ちに待っていたなのは達が姿を現す。
相変わらず元気そうでほっと……する間も無く、互いにこの状況に気がついて凍りついた。
あたし達の体勢は、その、あたしがすずかを抱き締めたままだったりするわけで……
 
 
 
 
「……おぉー、意外に大胆やなアリサちゃん。どっかのヘタレとは大違いや」
「へ、へたれじゃないよ!? 私だって、なのは二人っきりの時には、たぶん……」
「ご、ごめんね二人とも、大事な時に飛んできちゃって!?」
「……なかよし?」
 
 
 
 
三者三様、プラスでヴィヴィオもそれぞれの反応を返してくれた。
なのはとヴィヴィオは予想通り、はやてもむかつくけど予想通り、
フェイトは……同志を見る様な目で見つめてきて一番むかつく顔だった。
 
 
 
 
「な、ぐ……」
「ごめんなーアリサちゃん、すずかちゃん。あ、もっかい出なおそか?」
「〜〜〜〜っ!!」
 
 
 
 
へらっ、とニシシッ、がくっついたような笑い方でそう言うはやて。
うん、こいつは後で制裁決定。
腕の中で耳まで赤くなっている恋人へのお仕置きはとりあえず皆が帰ってからね。

だから今、何はともかく、だ…………
 
 
 
 
「……エイプリルフールなんて、だいっっっきらいなんだからぁぁぁぁーーーっ!!」



...Fin


あとがき(言い訳)

どうしてこうなった(笑)な感じに久しぶりのアリすずです。
なんだかんだいってこの二人も甘甘です。
もうちょいてきとーに流すはずが思ったよりはいちゃついてました。
飢えてたんですかねアリサさん……げほぁっ!?(蹴☆

そんな感じでこれからもイチャイチャしてくれればいいと思います、はい(笑)

2012/4/14


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