残業上がりの深夜の帰宅。
家のドアをそっと開けると、音を立てないように忍び足で家に入った。
静まり返った室内は家族が眠りについたことを教えてくれる。
零時過ぎなのだから当然だ。
それでも半分だけ寂しくて、半分だけほっとする。
「無茶するからなぁなのはは」
ヴィヴィオなんかは睡魔に負けて寝てしまうけど、なのはは時々頑張っていたりする。
待っていてくれるのは嬉しい。
顔を見たらほっとする。
でも朝の早いなのはが夜更かしをするのは心配だ。
だから、半々。
「ただいまぁ……」
人気のないリビングを素通りして、寝室のドアを開けると小声で言った。
返事はない。
よかった、ちゃんと寝ているらしい。
……なのに電気はなぜかついていて。
「……なのは?……あ」
ベッドの傍にそろそろと近づくと、横になったなのはの姿が目に入る。
いつものピンクのパジャマと手元に転がったファッション誌。
電気がついていたことからも、途中まで起きていたことが窺える。
……あぁやっぱり、待っていてくれたんだ。
「先に寝てって言ったのに……」
ちゃんとかかっていなかった毛布をなのはにかけ直しながらため息をつく。
明日仕事でしょ、先に寝てね、さっきそんなやり取りをしたのに困ったものだ。
……それなのに、待っていてくれたことが嬉しくて少しだけ頬が緩んでしまう私は、本当にダメな人間だと思う。
ごめんねなのは、でもやっぱり嬉しいよ。
「さて、私も着替えちゃお」
すやすやと眠るなのはにくっつこうとしてまだ制服だったことを思い出す。
このまま寝たら翌朝確実にしわになる……し、きっとなのはに怒られる。
だから逸る気持ちを抑えて制服を脱いでハンガーにかける。
そしてシャツに手をかけたところで……結局我慢しきれずになのはの隣に潜り込んだ。
毛布をかぶりなのは背中にぴとっとくっつくと、なのはの温度と香りにようやく肩の力をぬくことができた。
しわになるのがシャツくらいなら許してくれる、かな?
「うー……お休みが欲しい……」
一年の半分を次元の海で過ごし、戻ったら戻ったで書類や捜査任務に追われる日々。
自分で選んだ道を後悔はしないけど、こうして待っていてくれる人達には申し訳なく思う。
「うに……」
「なのは?」
「ふぇーとちゃん……すきー……むにゃ……」
起こしちゃったかな、と覗き込むけどどうやら寝言だったらしい。
普段らしからぬ舌っ足らずな声で私の名前を呼ぶなのは。
寝てるくせにどうしてそう可愛いことをするのかな君は……
「まったく、襲っちゃうよ?」
やれやれ、と小さなため息をつきながらぎゅっと抱き込む。
つんつんと頬をつつけば、ふにゃっとなのはの頬が緩んだ。
夢の中の私はずるいね、きっと今君の笑顔を見てるんだから。
「……おやすみ、なのは。夢でも君に会えるといいな」
でも朝になったら君を抱きしめて名前を呼ぼう。
だからなのはも私を呼んで?
おはようとただいまと、それから愛してるって、一番に君に伝えるから……
◇
「フェイトちゃんのバカ!」
「おはよ……えぇぇっ!?」
「バカバカ!起こしてくれると思ったのに!」
「え、え、だ、だって疲れてると思ったし……」
「おかえりって言いたかったのに!」
「……へ?」
「なんで起こしてくれなかったのもぉーっ!!」
「……えへへ」
「それからまだお疲れ様も言ってないのに……え、あれ、フェイトちゃ……にゃぁぁぁっ!?」
翌日、朝からなのはを美味しくいただきました、まる。
...Fin
あとがき(言い訳)
某所に送る予定だったSSなんですが、随分間も空いちゃったし、
全体公開で機会があれば見てもらう方がいいかな、ということでUPしました。
まぁなんだ。
ようするに全力でただ高町夫妻がくっついてるだけですねお疲れ様ですw
最近この程度の糖度の物が多いんで、もっとちゃんと甘いのが書きたい今日この頃ですw
2012/10/6著
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