「じゃあ私達先に行きますね」
「うん、私も後から行くから、準備の方お願いね」
「はい!」
昼食が終わりぱたぱたと駆けだして行く教え子たち。
元気だし、やる気があることはいいことだ、とその後ろ姿を見送った。
「うっ……」
けれど、見送った私の方が元気かというと、何気にちょっと微妙な状況だった。
大したことではない、と思うんだけど……
「ぅー……」
チクチク、でもなく、ズキズキ、でもない。
かといって、その、月一回のあれのような感じ、でもない。
例えるならそう、空腹時に軽く胃が差し込むような痛みにとても似ていた。
「……ご飯、食べたばっかりなのに……」
確かに朝ご飯を少なめにしてしまった関係で、いつもより若干お腹がすくのは早かった。
昼食に入る前軽く胃の痛みは感じていたけど、食べてしばらくすれば大丈夫、そう思っていたのに。
「……治まらない……」
胸やけでもない、お腹の調子が悪いわけでもない、空腹は満たされた。
なのに何故か痛み続ける私のお腹。
我慢できない程ではないけど、原因が分からないところにこの痛みはちょっと辛い。
「でもこの後はまた訓練だし……後ででも、いいよね?」
これから待っているのは午後の訓練。
ティアナ達は既に訓練場に向かっているし、私もじきに向かわなくてはならない。
危機を乗り越えた教え子達に、出来るだけ多くの物を持たせてあげる為の大事な時間。
大事でもないのに、訓練を遅らせるなんてわけにはいかないし。
「よし、頑張ろう」
一瞬シャマル先生のお怒りモードが浮かんだけど、それはそれ。
大したことないしきっとこのままでも大丈夫、そう考えて私も訓練場に行こうと向きを変えた。
「なのは」
「あ。」
だけど、そうは問屋が卸さなかった。
「どこに、行くのかな?」
「ふぇ、フェイトちゃん……」
問屋、つまりフェイトちゃんが私が振り返った先に立っていた。
ニコリ、と微笑み私に向かって問いかける。
暑くも無いのに、汗が流れた。
「さて、それじゃあ行こうか?」
「えっと、あの、私訓練が……」
「なのは?」
「……あぅ」
さぁ、と私の手を取るフェイトちゃんに、無駄な抵抗と知りつつもあがく私。
だけどもちろんフェイトちゃんがそれを許してくれるわけもなく、笑顔で私の訴えを一蹴した。
笑顔が怖いフェイトちゃん、それは最上級のお怒りモードだ。
シャマル先生とどっちが怖いか、実に甲乙つけがたい。
「まったく……どうして体調不良を放っておこうだなんて思うのかな」
「べ、別に体調不良ってほどじゃないし、それに放っておくわけじゃ……」
「なのは、怒るよ?」
「うぅ……」
握った手をぐいっと引き寄せられて近い距離で睨まれる。
もう十分怒ってるくせにぃー、と内心思う。
それでもちょっとだけ下がっているフェイトちゃんの眉毛の角度に、怒っていると困っている、それから心配の色を見つけてしまう。
「大人になったっていうのに、目を離せないよ」
「う、い、いつもはフェイトちゃんの方が……」
「なのはの方が心配。私より隠すの上手いし」
嬉しくないけど、とフェイトちゃんは唇を少し尖らせる。
そうだ、隠すの、というか上手くやることには少しばかり自信がある。
はやてちゃんみたいに煙に巻いたりはそうでもないけど、なんでもない顔は出来ないわけじゃない。
さっきだってちゃんとやれていたはずなのに。
「分かるよ、だってなのはのことだもん」
「……答えになってないよフェイトちゃん」
「じゃあ愛の力ってやつだよ、きっと」
だからなのはのことだけは他の人よりずっとずっと分かるんだ、なんて。
そんな風に不意に優しく笑うから、トクンと鼓動が一つ胸をうつ。
「……フェイトちゃん」
「……ん?」
気が弱くてへたれで時々ちょっぴり情けない。
それなのにこんなに優しくてカッコいいなんて、なんかズルイ。
反則だ。
意地っ張りな私がいっぱい叫ぶ。
……だけどやっぱり大好きで。
「……ありがと」
「……うん、なのは」
惚れ直しちゃってるなんて、絶対言ってあげないんだから……
...Fin
毎度どーも、お久しぶりなキッドです。日記はぽつぽつ書いてるけども。
冬の原稿が修羅場でもうダメだー、ばかりしてました。
半月、いや一月近くぶりの短編です、すみません;
内容は、うん、先日の私の腹痛から。
何これー、変に痛い〜、って状態だったのでなのはさんい被害にあっていただきました。
身に降りかかった事をネタにするのはデフォルトですよね、作家の皆さん。
そしたらフェイトさんがカッコよくて、なのはさんが可愛いいじっぱりになりました。
お互いなんかのたびに心配しあって、その度に惚れ直してればいいと思いますですはい。
無茶しぃーのは当分直らなそうですね(笑)
2011/12/20著
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