未知との遭遇、っていうんだろうか、これ。
「……」
夕方、今日は少し早めに帰れたし、ヴィヴィオとフェイトちゃんに美味しい物を作ってあげようと買い物も済ませた。
フェイトちゃんもヴィヴィオも喜んでくれるかな?
そう考えながら帰宅した私の眼前には、なぜか、こんもりとした白い塊が鎮座していた。
シーツをかぶっただけらしいそれは微動だにせずにソファの影で蹲っていた。
「えーっと……」
なんか変な生き物でも迷い込んだのだろうか、とも一瞬思ったけれど、鍵のかかった自宅でそんなことが起こるはずもない。
そうなれば必然的に白い塊の正体も検討がつくわけで……
「……フェイトちゃん」
「……」
「フェイトちゃん」
「……」
「フェイトちゃんってば!」
「っ……」
呼びかけても反応を返さないフェイトちゃんに焦れて、少し語気を強めて呼ぶと、ようやくその塊……フェイトちゃんが身じろいだ。
そう、外から入ってきたのでなければ、中にいた人間がシーツをかぶったということ以外考えられない。
ヴィヴィオはまだ学校、私は今帰ってきたばかり、はやてちゃんは事件で缶詰らしいからいつもの不法侵入も選択肢にない。
……となれば、昨日深夜に帰宅して、私が出掛ける時間になっても寝たままだったフェイトちゃん以外考えられないのだ。
よく見れば髪の毛の先が、シーツから微妙にはみ出したりしてるしね。
「なんでそんなことしてるの、フェイトちゃん?」
「う……そ、それは……」
「それは?」
「……ごめんなのはっ! わ、私……なのはプリン食べちゃったの!!」
「……はい?」
許してー! と叫ぶフェイトちゃん。
涙目でちょっと可愛いと思いつつ私は首を捻った。
……プリンなんてあったっけ?
「プリン?」
「う、うん……冷蔵庫の中の……」
「……あったっけ?」
「あったよ。蓋に食べるなって書かれてたんだけど、私気がつかなくて……」
ごめんね、としょんぼりするフェイトちゃんの頭をとりあえず撫でる。
悪気はなかったみたいだし、そもそもプリンのことなんて記憶にない私は縮こまるフェイトちゃんをギュッと抱き締めた。
「よしよし」
「なのはぁ……」
プリンの一つくらいで、私とフェイトちゃんの愛は壊れたりなんかしないんだよ?
……そんなことを考えながらフェイトちゃんを抱き締めていたところにそれは響いた。
「あーっ!!」
「にゃっ!?」
「うわっ!?」
「ヴィヴィオのプリンーっ!!」
「「……あっ」」
帰宅した娘の叫びだった。
◇
「ごめんねヴィヴィオ……」
「ヴィヴィオ、フェイトママも悪気はなかったんだよ?」
「むー!」
「ごめんってば〜……」
不機嫌です、という顔をしてそっぽを向いてしまうヴィヴィオ。
あのプリンの持ち主はどうやらヴィヴィオだったらしく、綺麗に空の容器だけになってしまったそれに、
帰宅してからのヴィヴィオは終始不機嫌だった。
「なのはママ、お鍋噴きそう。フェイトママ、手が止まってる」
「「す、すみません……」」
ヴィヴィオに言われ、慌てて手元に集中する私とフェイトちゃん。
なんとか娘のご機嫌を取るべく、夕飯の支度をする私と一緒に、フェイトちゃんもまたデザートのプリン作りに大忙しだ。
ちゃんと固まるといいけど大丈夫かな?
「……えへへ」
「フェイトちゃん?」
「あ、えと……帰ってきたんだなぁ……って思ってさ……」
「……ふふ、出張帰りだもんね」
「うん……やっぱり嬉しいな」
「怒られてても?」
「傍にいてくれるからね」
だから、嬉しい。
そう言って笑うフェイトちゃん。
娘に弱いんだから、もぉ……
「……私もフェイトちゃんが帰ってきてくれて嬉しいんだけどなぁ……」
「な、なのはっ!?」
「構ってくれないんだ?」
「いや、その……」
「寂しかったのに……」
「あ、う……」
ぴと、っとくっつくと顔を真っ赤にしてうろたえるフェイトちゃん。
昨日は自分から抱きついてきたくせに、へたれなフェイトちゃんはやっぱり可愛い。
そんなフェイトちゃんにすり寄ると、イチャイチャ禁止ーと叫ぶ娘の声がした。
そのヴィヴィオの声に混じって……夜になったら、という小さな囁きが聞こえると、私はフェイトちゃんの手をぎゅっと握った。
……期待してるからね、フェイトちゃん?
...Fin
あとがき(言い訳) イチャイチャべたべたを書こうとしてなぜかほのぼの?らしきものに落ち着きましたごきげんよう。
……うーん……なんか、ちょっと、スランプかも?(汗)
ここんとこ詰め込んで書いてたから、ネタはあるけど、エネルギーが切れてるっぽい、かな?
上手いこと充電せねば(--;)
あ、ちなみにプリンは半分だけ固まったそうです(ぇ)
でもフェイトママの愛がつまったプリンは美味しかったそうなw
2010/8/11著
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