寝落ちフラグなんか怖くない2














「我が家に到着……っと。やっぱり、出張明けだと気分も違うね」
 
 
 
 
うんうん、と一人頷いて私は車からバックを引っ張りだした。
例によって例のごとく、海への出張から戻ってきた私は、報告書をやっつけると、
車をかっ飛ばして自宅へと帰ってきていた。
それもこれも、愛するなのはとヴィヴィオの笑顔を少しでも早く見る為である。
 
 
 
 
「……って、言っても、ヴィヴィオはもう寝てるだろうし、確かなのはも明日始発とか言ってたしなぁ……」
 
 
 
 
なんでも明日の訓練の出向先へは始発に乗って向かうらしく、今日も早く寝ちゃうかも、とのことだった。
いや、うん、いいんだ。
寝顔だけでも幸せだから。
 
 
 
 
「とりあえずそぉーっと……ただいまー……」
 
 
 
 
極力音を立てない様にドアを開けると、私はそっと声をかけてみる。
ちょっとだけ期待して……反応の無さにやっぱりな、と肩を落とした。
やっぱり寝ちゃったかぁ……
 
 
 
 
「夜更かしされるよりはいいんだけどね……って、ん……?」
 
 
 
 
私が言うのもあれだけど……無理しがちななのはのこと、不健康な生活よりはずっといい。
そう思いながら家の中へと足を踏み入れたのだけど、リビングからは控えめな明かりが漏れ出していて……
 
 
 
 
「…………」
 
 
 
 
まさか、と思いつつもこっそり中を覗くと……いた。
 
 
 
 
「…………」
「……なのは」
「……っ!? ……え、あれ……フェイトちゃん?」
 
 
 
 
じっ、と食い入るようにテレビを見つめていた後ろ姿は愛すべき我が妻だった。
どうしたものかと少しだけ迷ってから、それでも放っておくわけにもいかずその背中に声をかけた。
さすがに驚いたのか、びくっとなのはの肩が揺れて、ゆっくりとこちの方へ……向き直ってはくれなかった。
…………あれ?
 
 
 
 
「お帰りなさいフェイトちゃん」
「ただいま……えーと、それでねなのは……?」
「フェイトちゃん!」
「はいっ!」
「後3分待って!」
「……はい?」
 
 
 
 
言われた言葉に首を傾げる。
一体何にそれほど夢中になっているというのか。
 
 
 
 
「……スケート……?」
 
 
 
 
なのはが見つめているテレビを後ろから覗きこむと、そこに映っていたのはスケートだった。
しかも……安藤って……日本?
そしてテレビに取り付けられている、見覚えのある、それ。
 
 
 
 
「あの、なのは……?」
「よし、終わり! うん、ちょっとミスもあったけど転倒はなかったし……」
「なの……」
「あ、点数出た! うぅ〜ん勝てる、かなぁ……?」
「…………なのはっ!」
「ひゃいっ!?」
 
 
 
 
演技が終わってなお、うーん、とテレビを見て唸っているなのは。
少し大きめに声をかけるとようやくこちらを向いてくれた。
……出張帰りの夫よりもスケートの方が……いや、そうじゃなくて……
 
 
 
 
「明日始発で仕事、って言ってたよね?」
「う……そ、そうだけど……」
「朝……というか夜中の三時起きだったよね?」
「そう、だね……」
「……なんでまだ起きてるの?」
「あ、あはは……いや、ほら、結果が気になっちゃって、ね……?」
 
 
 
 
だからつい見ちゃったんだよ〜、と笑う私の愛する妻、なのは。
……その朗らかさがこういう時ばかりは少し腹立たしい。
 
 
 
 
「……」
「あ、ちょ、ふぇい……うにゃあぁぁぁ〜〜っ!?」
「まったく、毎回毎回……」
「はわわ、ふぇ、フェイトちゃん下ろして〜!?」
「ダメ、このまま部屋まで行くから」
「ま、まだ結果が分かんない……はわわわ」
「〜〜〜〜!!」
 
 
 
 
前回のW杯の時もそうだったけど、こう言う時は腕力が物を言う。
そう、主になのはを抱きあげる為の腕力が。
そして抱きあげられてなお結果を気にするなのは。
……どうして時空間アンテナなんてものが存在するのかなほんとにもう!
 
 
 
 
「全部明日! 寝るよ!!」
「あぅぅ〜、美姫ちゃんの結果がぁ〜!?」
 
 
 
 
ぶちん、とテレビを切ると問答無用で私はなのはを寝室へと連行する。
なのははまだうにゃうにゃ言ってて可愛いけど……抜け出さない様にしっかりと抱きしめたまま眠りについた。
なのはの体温とか香りとか……出張帰りでなおさら色々危なかったけど、ちゃんと我慢した私は偉いと思う。
 
 
 
 
そして翌朝。
 
 
 
 
「……ふむ」
 
 
 
 
テーブルの上に一枚ぴらりと置かれた白い紙。
『大勝利!!』と書かれたそれに、
寝不足もなんのその、上機嫌で出かけたなのはを思って、私もまた笑顔になったのだった。
 
 
 
 
……でもほんっっっとに、時間がない時はちゃんと寝ようね、なのは…………



 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

美姫ちゃん優勝おめでとぉぉぉぉぉぉ!!!!!!(>▽<*)

……ということで書いてたSSをほっぽりだしてこんな物を書いてしまったキッドです。
ま、ほら、これも一つの愛の形ということでw(違うだろ)
いつぞやのW杯に続き時事物ですねん、今回も活躍してます時空間アンテナさん。
怒ったフェイトさんによってしばらく使用禁止にされて、
代わりにフェイトさんとにゃんにゃんすることになればいいと思います。
使用禁止なのは私の頭の方ですねまぁいつものことですwwww
以上ハイテンションなキッドがお送りしました、したらば!

2011/5/2


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