娘は見た!














珍しく今日は早く帰れたぞ、と足取りも軽く帰宅した夕暮れ。
事件は起きた。
 
 
 
 
「きゃあぁぁぁぁぁっ!?」
「っ!? なのはっ!?」
 
 
 
 
今まさに玄関のドアに手を掛けようとしていたその瞬間、愛する妻の声が聞こえた。
それも悲鳴だ。
私は即座にドアを開けると声がした場所へと駆けこんだ。
 
 
 
 
「いやぁぁぁぁっ!?」
「なのはっ!?」
 
 
 
 
慌てて駆けつけた先には、叫びながら蹲るなのはが姿があった。
場所はキッチン。
何かに危害を加えられた、ということではなさそうだが、それならば一体何に対して怯えているのか?
 
 
 
 
「なのは! いったい……っ!?」
 
 
 
 
なのはが無事なことに安堵しつつも、原因を探るべく声をかけようとして……気がついた。
 
 
 
 
カサ……カサカサ……カサカサカサカサ……!!
 
 
 
 
キッチンの床を我が物顔で闊歩する、季節外れのGの姿に。
 
 
 
 
「っっ!! バルディッシュ!」
『Yes sir,Plasma Lancer』
「ファイア!」
 
 
 
 
ジュッ!
 
 
 
 
「……やった、かな?」
 
 
 
 
新聞を丸めて叩く、とかも考えたけどなのはのためにも一刻も早く確実に処分するのが先決だ。
そう思った私は出力を最小限にまで絞ってプラズマランサーを撃ち出した。
狙いは過たずGを直撃、ジュッと音がした元Gの物体は、プスプスと音を立て炭という名の物体へと生まれ変わった。
来世があるならG以外になってほしい。
 
 
 
 
「なのは! しっかりして、もう大丈夫だよ!」
「ふぇ……フェイトちゃ〜ん……」
「ぅ……」
 
 
 
 
急なことで腰がぬけてしまったのか、立ち上がれずにいるなのはの傍に行くと潤んだ瞳で見上げられた。
普段の立ち振る舞いや教導時の凛々しさからは想像も出来ない弱々しい姿。
それが自分にはこうして見せてくれることを嬉しく思い同時に……私への理性ブレイカーになっていることを彼女は知らない。
ガラガラと崩れ落ちる理性を必死に修復する小人さん達を、少しは労ってあげてほしい。
言ったら怒られそうだから言わないけれど。
 
 
 
 
「ぐす、い、いきなりで怖かったよぉ〜……」
「あー、よしよし……もう平気だから……」
 
 
 
 
ふぇーん……と泣きついてくるなのはの背中に手を回し、優しく撫でる。
おかげで小人さん達は過労死しそうだ。
でもきっと悔いはない。
 
 
 
 
「もう一度ホイホイもかけ直しておくから、ね?」
「ひっく、ぐす……うん……」
 
 
 
 
その夜、私は妻を美味しくいただいた。
 
 
 
 

 
 
 
 
「という風に王子様のように颯爽と駆けつけたフェイトママは、なのはママを守ったのでした」
 
 
 
 
厳かに進む授業の中にあって、その作文を朗読する娘の声ははっきり聞こえた。
ついでに私に向かって集中する周りの視線もしっかりと。
 
 
 
 
「金色の閃光という二つ名で呼ばれるフェイトママみたいに、私も立派な魔導師になりたいです。高町ヴィヴィオ」
 
 
 
 
パチパチパチ……と響く拍手にお辞儀をして着席をするヴィヴィオ。
あぁうちの娘は可愛いなぁと思うのだけど、なんとも言えない居心地の悪さに笑顔が少しだけ引きつった。
 
 
 
 
「えと、フェイトちゃん……大丈夫?」
「……うん……ねぇなのは……」
 
 
 
 
授業参観って、ちょっぴり怖い時もあるんだね……
 
 
 
 
たまらず妻にそうこぼす私であった。



 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

土曜日だ―、更新せねばー、ということでなんか出来上がりましたごきげんよう(ぇ)
……ええ、はい、日記をご覧の皆様はお気づきかもしれませんが実話です。
いえ、場所はキッチンでもなければキッドは魔法も使えませんし、Gのサイズも極小ではあったんですが。
布団に転がって原稿を手書きしてたら、視界の端を1.5cmくらいの茶色いGが走ってきたんですからびっくりです。
朝早くから普通に叫んでしまっても仕方のないことだと思います……思いますよねっ!?(泣)
というわけで早速ネタに使わせていただきました。
内容も内容ならタイトルもタイトルですね。家政婦は見たじゃないんだからと思いつつつけてしまった(笑)
あ、原稿の進捗はただいま50%くらいです。
……早い方ですよ!締め切りの4日前に50%もキッドが原稿書いてるなんて!(マテ)
思春期なのフェイは書いてて、いいからさっさと付き合っちゃえよー!しか出てこないと実感してる今日この頃です(笑)

2010/12/5


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