真夜中の戦い














しん、と静まり返る周囲。
そこに生き物の気配は感じない。
だけど……
 
 
 
 
「……油断しちゃだめだよフェイトちゃん」
「うん……分かってるよなのは」
 
 
 
 
そう、油断はできない。
姿は見えなくても確かに奴はここにいる。
 
 
 
 
「……そこだ!」
 
 
 
 
ぷぅ〜ん……という微かな羽音を頼りに奴を捕捉すると、私は両の手で飛びかかる。

ぱぁんっ!!
 
 
 
 
「フェイトちゃん取った!?」
「…………逃げられた…………」
「あぅ……」
 
 
 
 
開いた手の平を見つめてがくっと肩を落とす私となのは。
確かに捉えたと思ったのに、私が失敗したのか、それとも奴が私以上の身のこなしを見せたのか、私の手は何も掴んでいなかった。
……むぅ。
 
 
 
 
「うぅぅ……私明日教導早いのに……」
「ご、ごめんねなのは、私が不甲斐ないから……」
「ふぇ、フェイトちゃんのせいじゃないよ。フェイトちゃんは頑張ってくれてるもん」
「なのは……」
「フェイトちゃん……」
 
 
 
 
見つめ合う私となのは。
明日がつらいのはなのはの方なのに、私をいたわってくれる優しい妻。
夫冥利につきるってものだよね!
そしてそのまま触れ合おうとした私達の間を……
 
 
ぷぅ〜ん……
 
 
羽音の主が割って入った。
 
 
 
 
……冥府に送ってやる!
 
 
 
 
「とりゃー!!」
「わわ、フェイトちゃんあっちあっち!」
「ここかー!!」
「……ママ達何してるの?」
「ていやー!……あ、ヴィヴィオ」
「『あ、ヴィヴィオ』……じゃないよもう、こんな時間にどうしたの?」
 
 
 
 
何してんのこの人達、と言いたげな目で入ってきたのは娘のヴィヴィオだった。
トイレかなんかで起きだしてきて部屋の前を通ったらうるさかったから入ってきた、といったところらしい。
でもそう考えるとあれか、私となのはの愛の営みも場合によっては危ないということでそれは娘の情操教育上とてもよろしくない気がするわけで……
って、今はそれどころじゃない。
 
 
 
 
「入っちゃだめだよヴィヴィオ! 今この部屋は奴が飛翔してるんだから!」
「奴って……蚊?」
「そうだよヴィヴィオ、私もフェイトちゃんもさっき起こされちゃったんだから」
「……えーっと……」
 
 
 
 
間違ってヴィヴィオについていってしまったら大変だ、と慌てる私となのは。
そんな私達にヴィヴィオは何か言おうとして……結局溜息をついた。
と、次の瞬間ヴィヴィオに抱かれたクリスが僅かに光る。
サーチの魔法……?
 
 
 
 
「えいっ」
「あ」
 
 
 
 
ジュッ。
 
 
 
 
「……」
「……これでいいよね。じゃあ私もう寝るね、おやすみなさいなのはママ、フェイトママ」
「お、おやすみ……」
「おやすみヴィヴィオ……」
 
 
 
 
ふぁぁ、とあくびをしながらヴィヴィオは部屋へと戻って行った。
残された私達の間に降りる沈黙。
そんなことに魔法使っちゃうのはあれだよとか最近娘の視線が痛いとかetc……
 
 
 
 
「……寝ようか」
「うん、寝よう……」
 
 
 
 
さっきとは違う意味で見つめ合った私達はのろのろとベッドにもぐりこむ。
 
 
 
 
「……とりあえず、Gが出た時とかも極力魔法は控えるようにしないとね……」
「うん……」
 
 
 
 
あと親としてもうちょっと狼狽えないようにしよう、と頷き合う私となのはだった。

 
 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

ぷぅ〜ん、と宙を飛び回る奴が暴れる時期になってきましたごきげんよう!!
寝ようとしたとこにぷぅ〜ん、ときていやー!な今日この頃です;;;;
ヴィヴィオやなのはさん達みたいに魔法でサーチしてジュッと焼けたらどんだけ楽だろうと思います、ぐすん。
叩いたつもりでも反射神経か、それとも目が悪くなったせいか、取り逃がしを多いわけで……
蚊とGを見ると、あぁ、夏だなぁ……と思うあたりダメな気がしてなりません;;;
……ミッドチルダにも蚊やGぐらいいるよね、きっと?ww

2011/6/14


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