いつでも君が














身体がだるい、頭が痛い……
 
 
 
 
「げほ、ごほ……」
 
 
 
 
ついでに言えば咳も出る……
 
 
 
 
「うぅ……最悪……」
 
 
 
 
出張から帰ってきた翌日、私を襲ったのはそれらの症状。
夜中のうちに忍びより、あっと言う間に芽吹いてしまった。
うん、間違いなく風邪だね……はは……
 
 
 
 
「大丈夫フェイト?」
「今日は休んだ方がいいわね」
「うぅ……ぐす……うん……」
 
 
 
 
金曜日から土日を挟んだ出張はちょっと長めで、結局三日かかって帰ってこれた。
疲れるのは確かに疲れたけど、明日学校に行けばなのはに会える!
そう思って布団に入ったはずだったのに……あぁもぅ、ほんと情けない。
 
 
 
 
「出かける準備、整いましたよ〜」
「ありがとうエイミィさん」
「ずず……いってらっしゃい……」
「……やっぱりあたしだけでも残ろうか、フェイト?」
「ううん、へいき……ぐす……」
 
 
 
 
心配そうなアルフに大丈夫だから行ってきて、というとアルフはしぶしぶ立ち上がった。
母さんとエイミィはいつもどおり仕事があるし、アルフもここのところ無限書庫のユーノの手伝いに出ていた。
つらいことはつらいけど、もうダメ、何もできない……ってほどじゃないし、これくらいで皆の仕事を休ませるなんて忍びない。
……まぁアルフにはいてもらってもいいかも、とか一瞬思ったけどさ。
 
 
 
 
「じゃあいってくるねフェイト」
「ちゃんと寝てるんだよフェイトちゃん」
「つらいようだったら、誰かに連絡するのよ?」
「うん……」
 
 
 
 
いってらっしゃい、とベッドから手を振ると、皆バタバタと出かけて行った。
本当はもっと早く出るはずだったのだから、慌ただしくなるのも仕方ない。
それでも急に人がいなくなった自分の部屋は、どこか少し寂しげで。
広い部屋の中にポツンと一人、取り残されたような気持ちになった。
 
 
 
 
「……まだ皆出かけたばかりなのに……情けないな……」
 
 
 
 
少しだけ滲んでしまった目許をごしごしとこすって、ベッドの中にもぐりこむ。
薬も飲んだし、もう寝てしまおう。
そうしたらきっと、こんな寂しい気持ちにならずに済むから。
 
 
 
 
「……あぁでも……」
 
 
 
 
大切な人の笑顔が、意識を掠めた。
なのはは今どうしているだろう。
朝一でメールをしたから、通学路で待ちぼうけをしている心配はないけれど、会えない寂しさはまた別だ。
時間的に学校についているころで、きっとアリサ達と談笑していることだろう。
少しくらいはきっと、私のことを心配してくれているかもしれない。
 
 
 
 
「心配かけたくないのに心配してほしいとか……わがままだな、私……」
 
 
 
 
一番心配をかけたくないのも一番心配をしてほしいのも、私とってはどっちもなのはで、矛盾してるって分かっててもどうにもならない。
なのはを想うと胸が暖かくなるけど、会いに行けない今は寂しさの方が募ってしまう。
これ以上そんなことを考えていると、それこそ念話の一つも飛ばしてしまいそうだ。
 
 
 
 
……ガタ。
 
 
 
 
「よし、やっぱり寝ちゃお……う?」
 
 
 
 
そう思い掛け布団をかぶり直したところで、何かが聞こえた。
……風の音かな?
 
 
 
 
……ガタ……ガタガタガタッ!
 
 
 
 
「って、えぇぇっ!? ちょ、い、一体何……っ!?」
「……うぅー……よいしょっと……開いた開いた、なんかちょっと、立てつけ悪くなったかな?」
「あ、そういえば油差すの忘れてた……って、だからなんでなのはが……ごほごほっ……!?」
「わわ、と、とりあえず横になってフェイトちゃん!」
「うん……けほっ……」
 
 
 
 
風の音、なんて抽象的なものじゃなくて、人為的にガタガタと揺れるガラスの音に飛び起きた。
まさか白昼堂々と泥棒が!?
とか思ってたら、ガラスを開けて入ってきたのは今一番会いたいその人だった。
 
 
 
 
「ごめんねフェイトちゃん、ほんとはもっとこっそり入るつもりだったんだけど……」
「いや、それは私が油差し忘れたからで……て、そうじゃなくてねなのは?」
「ん?」
「ん? でもなくてね……なんでいるの?」
「えーっと……私も、や、休んじゃったり、なんかして……あはは」
「……」
「いや、うん、ちゃんとノートのお願いはしてきたよ?」
「そ、そういうこと言ってるんじゃないよ、もぉっ!!」
 
 
 
 
あはは、ごめんごめん、とベッドの隣で笑うなのは。
私のせいだと分かっているけど、ただでさえ危ない出席日数を思うと目眩がする。
……卒業、できるのかな、私達。
 
 
 
 
「……なのは」
「うん?」
「学校、戻ってよ。今からなら遅刻か、二時間目からなら出れる……」
「ストップ、そこから先は言っちゃダメだよフェイトちゃん」
「だけど……」
「大体フェイトちゃんだって、この間私が休んだ時同じように飛んできてくれたよね?」
「だ、だってあれは、なのはが倒れたって聞いたから……」
「同じだよ、私だって心配したんだからねフェイトちゃん。言うこと聞かないと、その口塞いじゃうからね?」
「なっ……う、ぐ……」
 
 
 
 
学校に戻って、そう促すけど、本当は傍にいてほしい。
そんな私の気持ちを見透かしたように、なのははここにいると言ってくれる。
喜んじゃいけないのに、やっぱりどうしようもなく嬉しくて。
なのはの言葉に絶対赤くなっている頬が更に熱くなった気がした。
……うん、今なら四十度だっていけそうだ。
 
 
 
 
「ほら、ちゃんと横になってフェイトちゃん」
「うぅ……うん……」
 
 
 
 
風邪以外のものにもやられっぱなしで、色々おかしくなりそうだ。
いや、きっともうなっている。
だって私には、なのはのことしか見えていない。
 
 
 
 
「にゃはは、薬が効いてきて眠くなってきたんだよ」
「うん……でももっと、なのはのことだけ見ていたい……」
「あぅ……じゃあ、フェイトちゃんが眠るまで、こうしてるね」
 
 
 
 
少し頬を染めたなのはが、ベッドの脇に座りこむ。
目線が同じ高さになると、私の左手がなのはの手に包まれた。
 
 
 
 
「……なのは、あったかい……」
「傍にいるから、寂しくないよねフェイトちゃん」
「うん……さびしく、ない……」
 
 
 
 
心も身体も、弱っている時はどうしようもなく寂しくなる。
だけど、君がいるなら、大丈夫。
 
 
 
 
「なのは……」
「ん?」
「……だいすき……」
「うん……私も大好きだよ、フェイトちゃん……」
 
 
 
 
優しい君のぬくもりに包まれて、穏やかな眠りの中に落ちていく。
目覚めたら君のことを抱き締めて、来てくれてありがとうって言わなくちゃ。
もちろん、愛してるって言葉も忘れずに……ね。



 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

眠いー、とか言いながら書いてる時が一番はかどるキッドです。
うんもう立派な廃人ねwww
なんか前にも書いたことある気がするけどフェイトちゃんの風邪っぴきネタです。
過去作品に何があるが、最近忘れがち……、というか書きすぎてもうわかりませんwww
ちょっとしょんぼりな気持ちを書きたいと思ったら、自然にフェイトさんが風邪ひいてました。
ごめんねフェイトさん、なのはさんあげるから許してね?(をぃ)
これに目が覚めた後の話でも書いて冬に収録しようかなーとかも思ったり。
目が覚めたら新妻ななのはさんとか素敵よね(笑)

2010/10/9


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