蛙の子














「うわっと……」
 
 
 
 
グラッと揺れる地面。
私は咄嗟に壁に手をついたけど強めに揺れたのはその一瞬で、程なくしてその揺れは収まった。
 
 
 
 
「急だとちょっとびっくりするね、クリス」
 
 
 
 
ウサギ型の私のデバイス、クリスも私の言葉にうんうんと頷いた。
自宅のあるミッドチルダでは、基本的に地震は多くない。
それでもこうして時々くる揺れには、やっぱり驚くこともあったりする。
 
 
 
 
「まぁでも、物が倒れたりする程じゃない……し……」
 
 
 
 
それでもとりあえず、とキッチンに確認に来た私とクリス。
思った通り、物は落ちたりしてなかった。
……代わりにそこにあったのは……
 
 
 
 
「……何してるの、なのはママ?」
「……ふぇ? ……あ、ヴィヴィオかぁ……」
「ヴィヴィオかぁ……じゃなくてさ……なんで机の下にいるの?」
「だ、だって地震だよ? 机の下に潜るのが普通……だよね?」
「……」
 
 
 
 
キッチンの机の下にいたのは、なのはママその人だった。
いや、うん、確かにそういう話は聞くけどさ……ミッドチルダでそれってどうなの?
 
 
 
 
「海鳴と違ってこっちは大きな地震なんてこないと思うけど……」
「わ、分からないよ! ある日突然、大地震が来るかもしれないよ!?」
 
 
 
 
くわっ、と相変わらず机の下で力説するなのはママ。
天変地異なんていつ起こるか分からないけど、地球、特に地震大国なんて言われる日本と、ミッドチルダの状況は大きく違う。
地形的な問題も考えると……ミッドチルダじゃ大きくたって震度三がいいとこだと思う。
油断は大敵なんだよー! とか相変わらずママは言ってるけど……でもまず、そこから出ようよなのはママ……
 
 
 
 
「もぉー、今日はフェイトママが帰ってくるから、って料理してるんじゃなかったの?」
「……はっ、そうだった……イタッ!? ……あぅぅ……頭ぶつけた……」
 
 
 
 
一か月ぶりに帰ってくるフェイトママ。
さっきもうすぐ出れるよー、なんてメールが来たからそう時間を置かず帰ってくることだろう。
それを思い出したなのはママも急いで立ち上がろうとして……盛大に机に頭を打ち付けた。
フェイトママがいたら、机の下にもぐっちゃうなのはママも、
慌てて机に頭をぶつけるなのはママも、何この可愛い生き物、とか言って抱き締めるんだろうなぁ……
いや、なのはママは可愛いと私も思うけどさ、うん。
 
 
 
 
「ほらママ、まずは机から出て……」
「うぅ……うん……」
 
 
 
 
結構強くぶつけた頭をさするなのはママの手を引いて、机の下から誘導する。
お仕事や訓練してる時はカッコいいのになぁ……あ、それはフェイトママもか。
 
 
 
 
「まったくもう……じゃあ私はトレーニングに行ってくるからね?」
「いたた……うん、気をつけてねヴィヴィオ」
 
 
 
 
いってらっしゃい、と手を振るなのはママに見送られ、クリスと一緒に自宅を後にした。
……気をつけてはなのはママの方だと思うのですよ、ヴィヴィオさんは。
 
 
 
 
「まぁ完璧超人、とかだったら怖すぎるし……いいバランスなんだよね、きっと」
 
 
 
 
 ◇
 
 
 
 
「……なんてことがさっきあったわけで……」
「ふーん……なのはさんも結構面白い人だよな」
「そうなんだよねー」
 
 
 
 
いつも通りの訓練場。
休憩中のノーヴェと談笑がてらさっきの話をすると、やっぱりノーヴェも苦笑した。
するよね、そりゃあ。
 
 
 
 
「まぁなのはさんは出身地の関係もあるわけだし……っと」
「わっ?」
 
 
 
 
会話の途中で再び揺れる地面。
やっぱり揺れは小さかったけど、立て続けなんて珍しい。
でも特にニュースも流れてないし……たぶん続いただけみたい。
 
 
 
 
「多いな今日は」
「だね、なのはママがまた机の下に……って、え?」
「ん?」
 
 
 
 
訓練場の端にある机。
何気なく視線を巡らすと、その下にいる人物が目に付いた。
……なんでそんなところにいるんですか、アインハルトさん?
 
 
 
 
「ぶっ、ははははは! アインハルトにも苦手なもんがあるんだな」
「わ、笑いごとじゃないですノーヴェさん! 地震はベルカでも大きな災害の一つで……って、聞いてますかっ!?」
「はは……なのはさんだけじゃなくてアインハルトもなんだなぁ……ん、どうしたヴィヴィオ?」
「ふぇっ!? ななな、なんでもないよっ!?」
「いや、声裏返ってるぞ……」
 
 
 
 
ぽけっ、と机の下で顔を赤くするアインハルトさんを見ていたら、ノーヴェへの返事がおかしなことになった。
いや、でも、だって、ほら……あのアインハルトさんが机の下にかけ込むとか……うぐぅ……か、可愛すぎる……
 
 
 
 
「その……呆れてしまいましたか、ヴィヴィオさん……?」
「へっ!? い、いいえ、全然! むしろ今すごくフェイトママの気持ちが分かるんです!」
「……はい?」
「はっ……いえ、その……と、とにかく、呆れてなんかいませんから!」
「は、はい……?」
 
 
 
 
誤解をされたくないから私が必死にそう言うとアインハルトさんは、少し疑問に思いながらも納得はしてくれたらしい。
うん、ごめんなさい、素直に可愛いとか思っちゃっただけなんです。
とても言葉には出来ないだけで。
 
 
 
 
「……でもママ達みたいなばかっぷるじゃないもん……たぶん……」
 
 
 
 
可愛いよなのはー! ……なんて言ってなのはママに頬ずりするフェイトママ程じゃないと思いたい。
でも蛙の子は蛙とも言うわけで……なんだか最近、いろいろと自信が無くなってきた気がするのでした……はぁ……
 
 
 
 
 ◇
 
 
 
 
「……はっくしゅんっ!」
「フェイトちゃん?」
「うぐ……おかしいな、風邪なんて引いてないんだけど……」
「暖房つけた方がいいかな……って、ふぇ、フェイトちゃん、そろそろ離して……」
「えぇっ!? 一か月ぶりなんだよ!? ましてや机の下で震えながら出迎えてくれるとか……離すなんて無理!」
「ふぇ、ふぇい……にゃぁっ!?」
「あーもー可愛いよなのは! 愛してるーっ!!」
 
 
 
 
そんなばかっぷるっぷりが確実に娘に影響を与えているなどと、全然気づいていないなのフェイ夫妻なのでありました。



 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

ここ二、三日地震が多いな〜と思って書いてみた。
なのフェイにヴィヴィアイをプラスしたらなんだか変なことにwwww
混ぜるな危険?混ぜなるな自然?さぁどっち!(笑)
mixiでヴィヴィアイとなのフェイ、って言われたの混ざっちゃいました(笑)
べっこに書けってのねぇ。
次はなのフェイ、あ、アリすずも書きたいでふ☆

2010/9/30


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