誰のせい?














ゴロゴロゴロ……
 
 
 
 
「うわ……雷まで……」
「ママ、早く洗濯物取りこまないと、本降りになるよっ!!」
「ちょっと待って、今スペース作るから……」
「もぉー!」
 
 
 
 
ポツポツと雨が降り始めたのがついさっき。
お外には干してる最中の洗濯物。
これはまずいとヴィヴィオと二人で立ち上がったところで、今度はお空がゴロゴロと鳴り始めた。
両方一緒とかちょっと待ってな事態に、ヴィヴィオと二人で右往左往。
 
 
 
 
「中に干すと湿気がこもっちゃうんだけどなぁ……」
「そんなこと言ってる場合じゃないよなのはママ!」
「にゃはは、そうでした。よーし、ぱぱっと取りこんじゃお!」
「うん!」
 
 
 
 
えいや、と小雨の中に飛び出し、かかっている洗濯物を回収する。
せっかく朝はお日様が出てたから、ふっくらした仕上がりになると思ったのに……残念。
お日様の匂いがするシーツ、私もフェイトちゃんも好きなんだけどなぁ。
 
 
 
 
「ママ、呆けてないで早くあげてよ!」
「えー、呆けてないよ〜。ヴィヴィオはせっかちさんなんだから〜」
「なのはママはのんびりさんなのっ!!」
 
 
 
 
なんてやり取りをしながら中で待つヴィヴィオに洗濯物をバトンタッチする。
てきぱきと部屋の中に干していくヴィヴィオ。
うん、お手伝いをしてくれる娘ってありがたい。
 
 
 
 
「だいたいこんな感じかな?」
「ふふ、ありがとうヴィヴィオ」
「うん……あ、ほら本降りになってきたよ?」
「わ、ほんとだ……間に合ってよかった〜」
 
 
 
 
ヴィヴィオに言われて外を見れば、さっきまで小雨だったのに、いつの間にか本降りになっていた。
なんだか雷もゴロゴロからピシャーン! になってるし……
 
 
 
 
「結構本格的だね〜」
「梅雨だしね〜」
 
 
 
 
そういや今日は午後から大雨警報とかいってたっけ?
朝綺麗に晴れてたから予報ははずれかな、なんてたかをくくってたけど……ヴィヴィオが教えてくれなければ今頃大惨事だったに違いない。
ありがとう、と娘の頭を撫でるとえへへー、得気にヴィヴィオは胸を張っていた。
 
 
 
 
「ただいま〜……」
「あ、フェイトママだ」
「うーん、また凄いタイミングだねフェイトちゃん」
 
 
 
 
玄関のドアが開く音と共に、少ししょぼんとしたフェイトちゃんの声が聞こえてきた。
私とヴィヴィオが洗濯物を入れ始めたころならともかく、このタイミングでの帰宅だとたぶん降られちゃったんだと思う。
相変わらずちょっと運が無い。
 
 
 
 
「おかえりフェイトちゃん」
「おかえりなさいフェイトママ」
「あぅ……ただいま……」
 
 
 
 
ぽたぽたと制服や髪から滴る水滴。
水も滴るいい女、って言うけど、残念ながらしょんぼりしているフェイトちゃんなので効果が半減してる気がする。
もったいないなぁもぉ……
 
 
 
 
「私お風呂作ってくるね」
「あ、ご、ごめんねヴィヴィオ……わっぷっ!?」
「はーい、フェイトちゃんは動いちゃだめですよー?」
「な、なの……じ、自分で拭けるよ私!?」
「だーめ、私が拭いてあげたいの」
 
 
 
 
持ってきたタオルでフェイトちゃんの髪を拭いてあげる。
慌てる彼女を抑えこんで、その綺麗な髪から少しずつ丁寧に水気を取っていく。
いつ見てもつやつやなフェイトちゃんの金の髪はしっとりしていて、濡れてるから当たり前なんだけど、いつもと違う感じが新鮮だった。
 
 
 
 
「でも車で帰ってきたんだよね? なんでこんなに濡れたの?」
「うん……車止めた後、郵便物だけ見たんだけど……風で飛ばされちゃって……回収してるうちにザーッと……」
「もぉ、フェイトちゃんってばどうしてそううっかりさんなの?」
「う、む、昔よりはだいぶましに……」
「なってるかなぁ?」
「そ……そんなこと言ったら、なのはだって相変わらず無茶するしマイペースだし天然だし……!!」
 
 
 
 
どうやら車から降りた後で雨に濡れてしまったらしい。
そこまで風は強くなかったと思うんだけど、それでも郵便物が飛んで行ったのはフェイトちゃんのうっかりか、はたまた本当に間が悪かっただけなのか。
うっかりさん、ってからかったらフェイトちゃんもムキになって反論してきたけど。
唇を少しとがらせて言うフェイトちゃんは可愛いけど、言ってる内容には大いに文句を言わせてもらいたい。
 
 
 
 
「ご飯も食べないで無茶したり、寝ないでふらふら帰ってきたり、タラシなのはフェイトちゃんじゃない」
「ちょ……前二つはともかく最後は違うよ!」
「だってこの間も局でラブレターもらってたし」
「ど、どうしてそれ知って……あっ」
「やっぱり……」
 
 
 
 
機動六課の解散以来、元々それなりにあった知名度が跳ね上がった私達。
はやてちゃんなんかは「バレンタインはうはうはやー、いやっほーい♪」とか喜んでたけど、色々心配ごとが増えてしまうのは嬉しくない。
ちらっと見ただけだから、この間フェイトちゃんがもらってたそれがラブレターかは分からなかったけど、鎌を掛けてみただけなんだけど当たりだったらしい。
……むぅ、こんなこと当たってもあんまり嬉しくないよ。
 
 
 
 
「フェイトちゃんはモテモテだもんね」
「……なのはに言われたくないよ」
「私、フェイトちゃん程モテないもん」
「……手強いライバルが多いって意味では絶対私の方が大変だから」
 
 
 
 
そう言ってフェイトちゃんは深々と溜息をついた。
……ライバルって言われても、私フェイトちゃん以外見てないし。
それにフェイトちゃんと渡り合えそうな人なんて……いたかなぁ……?
 
 
 
 
「……出来ることなら、他の誰にも君の笑顔は見せたくないよ、なのは」
「う……」
 
 
 

不意打ちのように零される言葉。
ほら、やっぱりフェイトちゃんの方がタラシだよ。
さらりとそんなこと言わないでほしい。
だって、心の準備がまったくない時にそんなこと言われたら……凄く、困る……
 
 
 
 
「……なのは? ……うぷっ」
「見ちゃダメ」
「え、なんで顔見せてくれな……ふもっ」
「見なくていいの」
「えぇぇっ!?」
 
 
 
 
急に黙り込んだ私の様子を窺おうとするフェイトちゃんの頭を、乗せたままだったタオルで包み込む。
だって、フェイトちゃんの言葉で真っ赤になってるところなんて、恥ずかしく見られたくないから。
あっさり私の心を捕まえてくれるのが嬉しくて、でもちょっとだけ悔しくもあって、だから視界を遮るタオルをそのまま乱暴にガシガシと上下させる。
ちょっと待ってとか言ってるけど絶対待ってなんかあげないもん。
 
 
 
 
「ちょ、苦し……なのはっ!」
「あぅ……」
 
 
 
 
でも残念ながら力の差は明白で。
その体格のどこにそんな力あるの、って思うくらいの力でばりっとタオルと引き剥がされると、勢いよく顔を上げたフェイトちゃんと目が合った。
途端、もう一度集まり始める、熱。
きっとあっという間に赤くなっただろう私の顔をまじまじと見たフェイトちゃんは……ちょっとだけ意地悪な笑みを浮かべた。
 
 
 
 
「そっか……照れちゃってただけか……」
「〜〜〜っ……フェイトちゃんの、せいだもん……」
「うん……凄く可愛いよ、なのは」
「バカ……んっ……」
 
 
 
 
ぐっとフェイトちゃんに引き寄せられると唇を塞がれる。
雨に濡れて少し冷たいフェイトちゃんとの温度差に、一瞬だけ身体が跳ねる
だけどすぐに差し入れられた舌の熱さは私と一緒で、溶け合って一つになった。
 
 
 
 
「んっ……ふ……」
「ふぇい……ふぁっ……」
 
 
 
 
フェイトちゃんに下から支えられるようにして抱き寄せられる。
フェイトちゃんの方が背が高いから、いつもなら逆なんだけど、
今日はまだ靴を履いたままのフェイトちゃんと違って私が段差の上にいるから、私が見下ろすような形になっていた。
普段と違う角度の口付に私もフェイトちゃんも溺れていく。
少し動いた際に唇が離れそうになって、フェイトちゃんの頭を抱えるように抱きつくと、腰を引き寄せられて強く抱き締められた。
こんなところでと思う反面、私もフェイトちゃんも抑制が効かない。
 
 
 
 
「なのは……ん……」
「あ……んむ……んん……」
 
 
 
 
そんな末期のタイミングで、それは起こった。
 
 
 
 
『ピーーーーーーッ!!』
 
 
 
 
「うわっ!!」
「にゃぁっ!?」
 
 
 
 
バッ、と慌ててお互いに距離を取ると、視界に入ったのはお風呂が出来たことを告げるコンソールのランプ。
もうそんなに時間がたったんだ、とも思うけど、いいところを邪魔された気もして少し乱暴に突然現れたコンソールを閉じた。
 
 
 
 
「……な、なのは……」
「ん? ……どうしたのフェイトちゃん?」
「……お風呂、ヴィヴィオが作っててくれたはずだよね?」
「……あ」
 
 
 
 
心なしか青ざめた表情のフェイトちゃんにどうかした? と首を傾げれば、返ってきたのは姿が見えない娘の話だった。
言われたことを理解した瞬間、私もフェイトちゃんのように青ざめたに違いない。
私はまずい、と急いでヴィヴィオの姿を探そうと身体を反転させる。
けれどその目の前に出現していた、空中に魔力で描かれた文字を見つけ目を丸くした。
そこにあったのはヴィヴィオから、たった一言だけ。
 
 
 
 
『空気を読みました』
 
 
 
 
……という伝言だった。
 
 
 
 
「あー……」
「見られた、かな?」
「うん……」
 
 
 
 
状況から見てヴィヴィオが様子を確認してから自室に行ったことは間違いないはずだ。
問題はどのタイミングで見たかということ。
ガシガシやってたりからかってるタイミングでならいいけれど……その、あれしてるタイミングだったら……すごく、まずい……よね?
 
 
 
 
「……」
「……」
「とりあえず……」
「うん……」
「お風呂、一緒に入ろうか?」
「……うん……」
 
 
 
 
だけど起こっちゃったことはしょうがないわけで、私もフェイトちゃんもこの問題を一旦棚上げすることにした。
あぁでも、後でヴィヴィオに会ったらなんて言おう……
 
 
 
 
「えと、ほら、私もつい調子にのっちゃったし……」
「……うん……わかった、じゃあフェイトちゃんのせいだって言うね」
「え、えぇーっ!? そ、それは酷いよねなのはっ!?」
 
 
 
 
聞こえなーい、と両手で耳を塞いで首を振ると、なのはー……とフェイトちゃんから少し情けない声が上がる。
 
 
 
 
「ふふ……ほら、早くいこ、一緒に入るんでしょ?」
「っ……う、うん!」
 
 
 
 
私が微笑んだ途端元気になったフェイトちゃんの手を引いて脱衣所へ。
こうなったらもう羞恥心も親の威厳も、まとめて水に流してしまえ! とばかりに私達はお風呂場に飛び込んだのだった……



 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

文字通りいいわけさせてください。
気がついたらなのはさんとフェイトさんが玄関でちゅっちゅしてました!www
わわわ、私のせいじゃないんだー、タイトルも違う意味だったのにーwww
そんなわけで今日もなのはさんとフェイトさんはいちゃラブ中でした、はい。

2010/7/3


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