背中合わせの恋心1














大切な人がいます。
 
 
 
 
「あ、お帰りなさいフェイトちゃん」
「ただいま、なのは」
 
 
 
 
十年間、ずっと見つめ続けた笑顔。
私の始まりは彼女の笑顔と、涙に濡れた蒼い瞳だった。
 
 
 
 
「ヴィヴィオは?」
「寝ちゃった。最近寝付きいいから」
「そっか、残念。今日はもう少し早く帰ってこられる予定だったんだけどなぁ……」
「本局の方だっけ?」
「うん……そろそろ復帰に向けて動かないといけないから……」
「もう、そんな時期なんだ、ね……」
 
 
 
 
守りたいと願い続けた人と、一年という限られた期間をここで共に暮らした。
機動六課での一年は、間もなく部隊の解散をもって終わりを告げる。
悲しいことも、辛いこともたくさんあって、それでも幸せだったと呼べた日々は、所詮期限付きの夢にすぎない。
夢が覚めてしまえば、私達はまた別々の道を歩み始める。
覚悟は、していた。
 
 
 
 
「戻ったら……また、すぐに出るの?」
「たぶん。海はいつでも人が足りないから……」
「そうだね……」
 
 
 
 
だって、
 
 
 
 
「いきなり長い航行に、ってことはないと思うけど、いずれは、また……」
「執務官、それにフェイトちゃんは優秀だから引っ張りだこだもんね」
「優秀かどうかは分からないけど……出来ることはやっていきたいから」
 
 
 
 
私達は、家族じゃないから。
 
 
 
 
「……」
「なのは?」
「……フェイトちゃんは、カッコいいね」
「ぶっ!? なな、なに急に!?」
「フェイトちゃんもはやてちゃんもカッコいいよ。自分の目標に向かって、真っ直ぐだもん」
「あ、うん……はやてもか……」
「?」
「いや、その……」
 
 
 
 
舞い上がったのも一瞬、自分のことだけじゃないとわかって軽く落ち込む。
すでに幾度と無く経験しているが、なのはの他愛ない一言に一喜一憂する自分はいつになったら成長するのだろうか。
……無理、かな?
ひょっとしてひょっとしなくても。
 
 
 
 
「なのはだって教導隊があるでしょう?」
「うん……そうだね。皆別々に歩いていくって決めたもんね」
「……寂しくなった?」
「……ちょっとだけ」
 
 
 
 
少しだけバツが悪そうに微笑むなのは。
道を違えたのは私達自身。
同じところに繋がっていると信じてはいても、ふとした時の寂しさまでは拭えない。
今まではあえて意識しないできたことだったけど、ここでの生活で私もなのはも思い出してしまった。
……いや、初めて知ったのかもしれない。
共に在ることが、これほど心安らぐものだったのだと。
 
 
 
 
「……ずっと皆一緒だったからね」
「ほんとだよー、はやてちゃんは凄いよね、有言実行って感じで。本当に自分の部隊を作って皆を集めちゃうんだもん」
「期間限定なのが惜しい、かな?」
「でも、六課がやらなきゃいけないことはもう終わったから……」
 
 
 
 
それなら、ずっと一緒にいればいい。
私がずっとなのはの傍にい続けるから。
……そんな言葉を、甘えるように少しだけもたれてくるなのはを抱き止めるしか出来ない私に、言う資格はあるのだろうか?
一年の半分以上を海で過ごす私に、大切な人を支え続けることが出来るのだろうか?
いつだって、そんなことばかり考えて動けない自分に嫌気が差す。
 
 
 
 
「こんなに私が甘えてたらヴィヴィオに怒られちゃうかな?」
「……いいよ、内緒にしておくから」
「じゃあ……もう少しだけ……」
 
 
 
 
臆病な私は、愛してるの一言さえ言えないままで、少しだけ強く、君を抱きしめることしか出来ずにいた。

 
 
 
 

...To be Continued

 
 


続きますよー。
別名を生殺しといいます(キリッ)ww

2010/4/5


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