パパですから!














パシャ! ピカッ! パシャ!
 
 
 
 
「はいOKです、お疲れ様でした!」
「「お疲れ様でした〜」」
 
 
 
 
フラッシュの閃光とカメラのシャッター音がようやく止まる。
あれやこれやと撮り続けた監督さんからOKの合図が出る。
撮影してくれたカメラマンさんと監督さんにニコっと笑顔で返したのはフェイトちゃんとヴィヴィオ。
どうやらやっと撮影が終わったらしい。
 
 
 
 
「おそーい」
「ごめんなのは、お待たせ」
「ごめんねなのはママ」
「もう、待ちくたびれちゃったよ二人とも」
「うぅ、で、でもなのはがヴィヴィオと撮影した時も私結構待って……」
「何か言ったフェイトちゃん?」
「……や、なんでもないです……」
「弱いね、フェイトママ」
「ふぐぅ……」
 
 
 
 
ニコニコとヴィヴィオを抱えたままやってきたフェイトちゃんに、
待たされた私の攻撃と、ヴィヴィオの追加アタックのコンボをお見舞いする。
あぅあぅ、といつもどおりにおろおろしてへこむフェイトちゃん。
ただ今日は、なんていうか……
 
 
 
 
『……なんか今日のフェイトママ、元気だね』
『うん、なんだかつやつやしてるし……』
『私、いつまで抱っこされてればいいのかな、なのはママ?』
『うーん、いつまでだろうね……』
 
 
 
 
そう、今日のフェイトちゃんは私たちの攻撃を受けてもなんのその。
つやつやのキラキラで、ついでに髪の毛はさらさらだ。
さっきももの凄い笑顔で撮影へと臨んでいた。
雑誌の表紙になることを考えるといいんだか悪いんだか……なんか複雑。
 
 
 
 
『どうしようかなのはママ?』
『どうしようか……うーん……』
『……そうだ! なのはママがヴィヴィオの代わりに抱っこしてもらえばいいんだよ!』
「えぇぇっ!?」
 
 
 
 
撮影前からニコニコだったけど、撮影が終わってもニコニコオーラ全開のフェイトちゃん。
これはあれだ、たぶん『私がパパですから!』的な心境なんだと思う、うん。
もうほんっっとに嬉しそうなんだもん。
とりあえずどうやってこの状態のフェイトちゃんにヴィヴィオを下ろしてもらおうかと思ったら、ヴィヴィオがとんでもないことを言い出した。
念話でひっそりこっそり話していたのも忘れて、思わず声に出して叫んでしまった私にフェイトちゃんは首をひねる。
 
 
 
 
「ん、どうしたのなのは?」
「なななな、なんでもなっ……」
「あのねフェイトママ、なのはママもフェイトママに抱っこして欲しいって!」
「えっ!?」
「ちょ、ヴィヴィオ!」
 
 
 
 
お願いだからこの状態のフェイトちゃんに迂闊なことを言わないで!
 
 
 
 
「……なのは」
「や、あの、フェイトちゃん今のは忘れてほし……おーい」
「ごめんねなのは、気がつかなくて……」
「ちょっとー……」
「待ってる間、寂しかったよね?」
「もしもーし、フェイトちゃーん……」
「大丈夫、私の愛する奥さんはいつだってなのはだけだよ?」
「聞いてってば……」
 
 
 
 
ヴィヴィオのとんでも発言にフルフルと身を震わせたフェイトちゃん。
ようやくヴィヴィオのことを下ろしたと思ったら、今度は矛先が完全にこちらに向いてしまったらしい。
真剣な表情でじりじりと詰め寄ってくるフェイトちゃんから、じりじりと後ずさりしながら距離を詰めさせない私。
……そして我関せず、と早々に離脱してお茶を飲み始めた娘。
いやいやいや、待ってよ、何かおかしいでしょ!?
 
 
 
 
「うっ……」
「ふふ、行き止まりだよなのは……大丈夫、優しくするから」
「や、それ形容詞がなんかおかしいでしょフェイトちゃん?」
「そういえば出逢った頃はなのはが私をお姫様抱っこしてくれたんだよね。懐かしいな」
「遠い目をしながらさり気に腰に手を回さなくていいいから。手首掴んで引き寄せなくていいから!?」
「遠慮はいらないよなのは。もうそんな関係じゃないでしょ?」
「するよ!? 公衆の面前だよ!?」
「大丈夫、その次の号の表紙が私達になるだけだから」
「そ、そういう問題!?」
 
 
 
 
そうしているうちに進退窮まってしまった。
後ろは壁、正面にはキラキラを通り越して、なんかちょっと……ギラギラしてきたフェイトちゃん。
ど、どこかに逃げ道は……
 
 
 
 
「はーい、フェイトちゃんさっさと抱き上げたらこっち向いてな〜?」
「……って、はやてちゃん!? 今日仕事なはずなのになんでここに……」
「暇つぶし?」
「なっ!?」
「わかったよはやて」
「別名をエスケープって言うんやけどな?」
「ダメでしょ!? ……きゃぁっ!?」
「ほな、カメラに向かってスマイルな〜」
「いくよなのは」
「ちょっと待っ……いやぁぁーー!?」
「はいちぃ〜ずぅ〜」
 
 
 
 
パシャ!
 
 
 
 
………………
 
 
 
 
「……ねえなのは」
「なのはママ……」
「んー? どうしたの二人とも」
「その、どうしてこんなにピーマンがてんこ盛りになってるの、かな……?」
「……苦いの嫌い……」
 
 
 
 
どん、とテーブルに置かれた山盛りのピーマン炒め。
ヴィヴィオの皿にもかなりあるがフェイト皿には更に多い量が盛られていた。
笑顔で二人の前にそれを置いた張本人は完璧な笑顔で二人の質問にさらりと答えた。
 
 
 
 
「好き嫌いは克服しないとダメだよ? フェイトちゃんも、娘のためなら苦労の一つくらい分かち合ってあげれるよね?」
「「…………いただきます…………」」
 
 
 
 
笑顔が怖い高町なのは、主婦兼管理局のエースオブエース。
食卓を握っている彼女に逆らってはいけないと、深く反省したフェイトとヴィヴィオであった。

 
 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

コンプエース10月号の表紙が『パパですから!(きらーん☆)』に見えてしょうがないキッドです、ごきげんよう。
似合いすぎだろ!と爆笑してたらなんだかこんなSSが出来上がったのさらしてみました。
阿呆ですみません。でもキッドのデフォルトなんで諦めて♪(笑)
ええはい、背後にえーすおぶえーすの気配を感じます。
あ、ちょ、SLBはもうくらい慣れてっ……ジュ!(焦っ)
げふげふ、ちくしょうやるじゃないかコンプエースさん。
そんなわけでパパ全開なうちのフェイトそんでした。ママでパパだよこの人は、うん。

2009/8/27


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