眠いんです。














眠い。
それはもう果てしなく。
目の前で天使の囁きが聞こえるんだから、それもしょうがないとは思うんだ。
うつらうつらきてる私の前で、一生懸命訓練の効率性について説明してくれている愛しいなのは。
愛する彼女が、ゆりかごの如き安らぎを声一つで実現してくれるのだから、寝るなと言う方が無理だろう。
 
 
 
 
「で、ここがこうだから……」
「……」
「その分こっちがこうなって……」
「……」
 
 
 
 
あぁでも、その真剣な表情ももっと見ていたい。
流れる亜麻色の髪。
モニターに落とした視線。
言葉を紡ぐ薄紅色の唇。
うぅーん……ヴィーナス。
 
 
 
 
「だから最終的に……って、フェイトちゃん聞いてる?」
「……」
「フェイトちゃん? おーい、フェイトちゃーん?」
「……」
 
 
 
 
うん、聞いてる。
大丈夫だよ、なのは。
ものすんごく眠くても、君の声を聞き逃したりはしないから。
 
 
 
 
「もしもーし、フェイトちゃーん?」
「……」
 
 
 
 
でも、そう返事をしたつもりで、どうやらまったく反応していなかったらしい私の唇。
夢の世界に旅立っていたと気づくのは目が覚めた後だった。
 
 
 
 

 
 
 
 
「……ん?」
 
 
 
 
ごそごそ、と動く何かを感じ、その正体を確かめようと目を開けば、見慣れた天井が目に入る。
続いて視界の端に映る亜麻色と肩にかかっている重みに気がついた。
……はて?
 
 
 
 
「……はっ! ……私はいったい……」
「むにゃ……」
「え、あれ、なのは……?」
 
 
 
 
起き抜けに反射的に立ち上がろうとした身体を無理やり抑える。
その頭が私の肩から落ちてないことを確認して一安心。
 
 
 
 
「そっか、眠っちゃったんだ私……」
 
 
 
 
私の身体にはなのはがかけてくれたのだろう黒いブランケット。
ソファーでなのはの話を聞きながら眠ってしまった私を気遣って、起こさないようにしてくれたのだろう。
そして私の肩に頭を預けて、すやすやと眠るなのは。
ぴと、っとくっついた部分が意識し始めるとちょっと熱い。
なのは自身も疲れがたまっていたのか、それとも私と離れたくなかったのか……個人的には後者が大半であって欲しいのだがどうだろう。
 
 
 
 
「むに……ふぇーとちゃー……」
「なのは……」
「……んふふ、もうそんなとこダメだってばー……」
「むっ……」
 
 
 
 
すやすやと眠りつつ、夢を見ている様子のなのは。
寝言で名前を呼ばれた瞬間は嬉しかったけど……なにやら、きゃっきゃうふふしてそうな夢の中。
そんな夢の自分に嫉妬するのはしょうがないと思うんだ。
……心が狭いとか言うな。
 
 
 
 
「むー……寝よ」
 
 
 
 
出来ればその寝顔をのんびり眺めていたかったんだけど……
なんかちょっと、面白くなくなった私はなのはとくっつきなおして寝ることにした。
こうなったら私も夢の中でなのはときゃっきゃうふふをたくさんするんだ!
……なんてことを考えていたわけではない。
そうだとも。
 
 
 
 
「おやすみ、なのは」
 
 
 
 
その額に軽く口付けを落とし、私も再び夢の中へと落ちていく。
翌朝、夢の中の君は、なぜかエクシードモードで私に向けてバスターを乱射した。
私が邪まなことを考えたからではないと信じたくなるのは、それからきっかり8時間後のお話だった……

 
 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

ねむー、ちょーねむー、とか思いながら書いたらなんかとても眠いフェイトさんが出来上がってました。
なのはさんは夢の中でも、フェイトさんの邪まセンサーに反応する模様です。
これも愛だよ、うん。……たぶん。

とりあえず……キッドも、寝る(笑)

2009/6/17


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