台所の戸棚の中。
たくさんの食器が並べられている中にあって、その二つは特別だった。
規則正しく並べられたピンクと黄色のマグカップ。
なのはママとフェイトママのカップ。
「……」
戸棚の外から眺めるそれは、ママ達と一緒。
お互い別の物なのに、寄り添い合うように並んでいる。
「……いいな」
いいな。
ただポツリと、それだけ思った。
あるべき場所にある、いるべき場所にいる、そんな風に見えて。
だから、本当になんとなく、いいな、って思ったんだ。
◇
「ヴィヴィオ、何か欲しい物はある?」
「あ、フェイトちゃん、またそうやってヴィヴィオとお菓子を買い込む気?」
「きょ、今日は違うよ。ただヴィヴィオは何か欲しい物ないかな〜って思ってさ」
出掛けにそんな物を見てきてしまった、だからだろうか?
三人で出た買い物中にフェイトママが言った言葉に反応してしまったのは。
欲しい物、……ひとつだけ、ある。
わがままを言っても、いいのかな……
「……ヴィヴィオ」
「……」
「なのは? ヴィヴィオ?」
「……ヴィヴィオは、何が欲しいの?」
「……あれ」
「あれって……マグカップ?」
ピッと指差した先にあるのは、たくさん並んだマグカップ。
その中の一つを、私の指は正確にポイントしていた。
「これでいいの?」
「ちょっとヴィヴィオにはまだ大きいと思うけど……」
「これがいい」
「そっか……」
「……じゃあ、これを買おうか」
私がマグカップを指した時は少し驚いていたママ達。
でも私がそれを欲しいと言うと、特に何を言うでもなくそれを買い物かごの中へと入れた。
お会計を済ませると、フェイトママがカップを渡してくれたので、落とさないようにそれをしっかりと抱えこんだ。
「じゃあ、今日からはそれがヴィヴィオのマグカップだね」
「帰ったら早速キャラメルミルクをいれようか」
「うん」
お家に帰ると、約束どおりなのはママがキャラメルミルクをいれてくれる。
フェイママのは黄色のカップに、なのはママのはピンクのカップに。
そして私の分は新しく買ったばかりのカップの中へ。
三人で一緒になのはママのキャラメルミルクを飲む、そんな当たり前の光景。
違うのは、私の手に握られたカップのみ。
「さて、じゃあ片付けちゃおうか」
「手伝う」
「おっと、せっかく買ったカップが落ちちゃうよヴィヴィオ」
「わわわっ」
カップの上まで注がれたていたキャラメルミルクを飲み干すと、なのはママに続いて立ち上がった。
その拍子にお盆からこぼれそうになるカップをフェイトママが止めてくれる。
カップを台所まで持っていくと、なのはママが手早く洗ってくれた。
それをタオルで水気をふき取って、戸棚の中へと戻していく。
フェイトママの黄色のカップ、なのはママのピンクのカップ、そして、ヴィヴィオの青いカップ。
「……えへへ」
同じところにカップが一つ並んだだけ。
ただそれだけのこと。
でもとても大切だった……かもしれない、そんな一幕。
...Fin
あとがき(言い訳) 更新するかもー……とか言っちゃったから書いてみた。わお。
ごきげんよう、眠い目こすってるキッドです。
あ、はい、すみません、もう寝ます(現在朝の4時)
ネタは自分のカップ見てて思いつきました。なんか、自分のものがそこにあるって安心したり。
居場所……てのは大げさかもですが。
とっても些細なことだけど、意外と大事だったりするかもしれないってことはありますよね。
生きるってそういうのの積み重ねでもあったりするんかな。
……強く生きてやるー(笑)
2009/3/30著
リリカルなのはSS館へ戻る