会いたくてたまらない














次元航行任務から帰還して自室のドアを開く。
 
 
 
 
「……」
 
 
 
 
ただいま、なんて言う相手もいない私は無言でベッドの上へと崩れ落ちた。
 
 
 
 
「疲れた……」
 
 
 
 
ボソっと呟いた言葉はシーツに染みて溶けた。
だけど圧し掛かった疲労がそれで溶けるはずもなく、私の身体は鉛のように重かった。
 
 
 
 
「ダメだな、私。このくらいで音を上げてる場合じゃないのに……」
 
 
 
 
たかだか二ヶ月程度の航行任務、今後はもっと長期のものだって出てくるはずなのに、
こんなことくらいでこの様では先が思いやられるというものだ、情けない。
 
 
 
 
「うー……無理」
 
 
 
 
そうは思っても、疲れきった身体は言うことを聞いてくれない。
おいおいなんとかしていく必要があるとはいえ、今日はとりあえず戻ってきたのだ。
少しでも身体を休めておくべきだろう。
本当なら着替えてから寝たほうがいいのだが、今日はもうこのまま寝てしまおうか?
 
 
 
 
「んー……ん? メール……?」
 
 
 
 
もはや考えることすら放棄して、完全に寝る体勢に入っていた私の視界で倒れこんだ時に放り投げた携帯が明滅していた。
時を同じくしてぶぶぶ、っと微弱ながら携帯の振動がベッドに響く。
どうしようかと思ったけど、手だけを伸ばして携帯を掴み取ると、一応内容を確認する。
 
 
 
 
「んと、何々……!?」
 
 
 
 
メールの内容を読みきると、私はがばっと起き上がった。
え、疲労?
あったっけそんなもの?
 
 
 
 
「えっと、端末と鍵はっと……」
 
 
 
 
そしていそいそと部屋を出る準備を整えると、私は自室を飛び出した。
ダッシュで寮の廊下を駆け抜ける。
ちょっと問題行動だけど、人目もないので……もし見てしまってもちょっと御目こぼしをしてほしい。
 
 
 
 
「次の角を曲がって三つ目……」
 
 
 
 
タッタッタ、と廊下に私が走る音が響く。
私は目的の場所まで来ると、ノックも無しに合鍵でドアを開けた。
 
 
 
 
「なのはっ!!」
 
 
 
 
そして視界に入った愛しい人に抱きついた。
 
 
 
 
「ふぇ、フェイトちゃんっ!?」
「会いたかったよなのは!!」
 
 
 
 
突然乱入した私の登場に、私の腕の中で目を白黒させるなのは。
そんな彼女の様子すら可愛くて、私は抱きしめたまま彼女に頬ずりをする。
ごめんねなのは、ノックして待つ時間すらもったいなかったんだ。
 
 
 
 
「……にゃはは、うん、私も会いたかったよフェイトちゃん」
「なのは……」
 
 
 
 
『お疲れ様フェイトちゃん、私も今部屋に戻ったところ』となのはからメールが届いてから僅か一分。
さすがになのはもこんなに早く私が来るとは思っていなかったのだろう。
だけど驚きから立ち直ると、すぐにいつもの笑顔で私の背に手を回してくれた。
なのははあったかくて優しくて、触れているとどうしようもなく好きなんだって想いが溢れ出す。
 
 
 
 
「会いたかった、会いたかったよなのは……」
「私もだよフェイトちゃん……ん」
「ん……なのは……」
「フェイト、ちゃん……んっ」
 
 
 
 
押さえきれない想いのままに、その唇に口付ける。
啄ばんで、重ねて、深く……
乱暴にならないように、と気をつけはするがそれでも性急に求めてしまう。
それでも同じように応えてくれるなのはに、なのはも一緒の気持ちなのかなってちょっと思う。
本当に本当に会いたかったよなのは。
 
 
 
 
「ごめんなのは、今日は……」
「うん……いいよ、フェイトちゃんの好きにして? 私も、その方が嬉しい……」
 
 
 
 
息が上がり上気した面持ちで頷かれると、後はもう言葉なんていらなかった。
私はなのはをベッドの上に押し倒すと、会えない時間の寂しさを埋めるようになのはを求め続けたのだった……
 
 
 
 
 
<おまけ>
 
 
「……動けない」
「……なんで私じゃなくて、フェイトちゃんの方が動けないのかな……」
 
 
 
 
翌日、私はあろうことかなのはのベッドでぐったりと横になったままだった。
決して途中で、その、攻守が変わったとか、そんなわけではない。
昨日は結局、散々身体を重ねて明け方近くに眠りについた。
状況だけ見ればなのはの方が圧倒的に負担が大きかったと思うのだが、現実には普通に動けるなのはに対し起き上がれない私。
……はて?
 
 
 
 
「……ひょっとしてあれかな?」
「なにが……?」
「きっとなのは分を補充したからだよ」
「……は?」
 
 
 
 
昨日の数時間で大量摂取したなのは分。
そうだ、原因はきっとそれに違いない。
 
 
 
 
「えと、あんまり状況が見えないんだけど?」
「んー、つまり、ね?」
 
 
 
 
小首を傾げて疑問符を飛ばすなのはの耳に唇を寄せて囁いた。
 
 
――暖かいものでいっぱいで、身体まで重くなっちゃったんだよ、って……

 
 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

絶賛逃避中のキッドです、ごきげんにょー(ぇ)

ってか、マジで原稿やら無くちゃいけないのに、何書いてるんでしょうね、私。
逃げ出してどうにかなるなら、仕事も原稿もほっぽってますよ、ほんと(苦笑)
あれですよ、冒頭の仕事帰りで死んでるフェイトそんはまんまキッドの状況です。
もう無理、もうだめ、もうあかん、な感じ。
違うところって言ったら、フェイトそんと違って癒しが少ないとこかしら……(ホロリ)

仕事はマジでドタキャンやらバックレやらクレームやらが相次いで、この二週間ばかしはホント厳しいです。
対人相手の仕事はいい時はいいけど、なぜか悪いときは怒涛のように色々と押し寄せます。
ええもう、色々とイロイロで(苦笑)

って、仕事の愚痴書いてる場合じゃないですね。
絶賛修羅場なキッドですが、サンクリ、リリマジ、コミケ、と新刊が出せるように頑張りますねー(*>▽<)ノ

……これ、誰かに絵をつけてもらってサンクリ本に載っけようかな……?(笑)

……や、割とマジかも(爆)

2008/9/4


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