すーぱーまん














空は青く、白い雲が流れてく。
今日はこれといって仕事も無く、宿題もきちんとやってあるので、泣きながら問題をマッハで解く必要も無い。
つまり普段であれば、文句無しに穏やかな日であるといえただろう。
普段どおりであれば、だけど。




「……最悪」




言葉とともに深く溜め息をつく。
普段どおりとは程遠い自分の体調に嫌気がさす。
どうにもならないと分かっていても、また溜め息がでた。




「……っ!……くぅ…………」




訪れるそれを何とかやり過ごそうと、歯を食いしばる。
そうして波が通り過ぎると、三度溜め息をついた。
あぁ、この分だと教室に行ける前に、溜め息で埋まってしまいそうだ。




「ありえない例えなのに、なんか現実になりそうで怖いなぁ……」




自嘲的な言葉を象徴するように、また溜め息が出る。
……思えば、朝から調子は悪かった。
でもまぁ、なんとかなるだろうと高をくくっていたら、この様だ。
学校についたまではよかったけれど、皆とのおしゃべりもそこそこに、教室を飛び出した。




「うぅ……毎月のことだけど……さすがにこの期間だけは自分の性別を恨むかも……」




そう、早い話が現在ブルーデーに直面している、というただそれだけなのである。
基本的に毎月恒例なのだから、いい加減慣れてもよさそうなものだが、そうはいかない。
このなんとも言えない鈍痛や気だるさにどうやって慣れろというのか、方法があるなら是非とも教えて欲しいものだ。
お陰で教室を飛び出した後はトイレに篭り、そこから脱出した後はこうして人気の無い階段で休むハメになっているのだから。




「でもなぁ……保健室とかは、ちょっと……」




別に最初から保健室に駆け込めばいいのだが、それを誰かに見つかれば心配をかけてしまう。
ついでに言えば、理由を聞かれたときにブルーデーだからと答えるのも、また何か悔しい。
しょうがないことなのだけれど、なんとなく素直に無理、というのは納得がいかないのだ。
……実際問題として、我慢したところで何にもならないと分かってはいるくせに。




「うぅ……お腹痛い…………」




相変わらずズキズキと鈍く痛むお腹。
あぁ、せめて鎮痛剤を切らしてなければ……と後悔に沈む。




「まいどー、八神の宅急便です〜♪」
「ありがとう〜……って、はやてちゃんどっからきたのっ!?」
「階段の下から」
「いや、そーだけどさ……」




何度目か分からない溜め息をついたとき、階段の手すりを越えてはやてちゃんが顔をだした。
満面の笑みとともにはやてちゃんが突き出した物は、今私が一番欲しいものだった。




「……バレてた?」
「バレバレやな」
「あぅぅ……」
「あんなぁなのはちゃん、下手に我慢しとる方が心配かけてしまうんやで?」
「うぅ……ごめんなさい……」




ぺしぺしと私の頭をはたきながら言うはやてちゃん。
心配をかけまいとして、結局余計に心配をかけてるあたり、自分の進歩の無さに頭が上がらない。




「ま、ええわ、早いとこ薬飲んだほうがええし」
「あ、うん、ありがとうはやてちゃん……」




薬と一緒に調達してきた水のペットボトルを振りながら、はやてちゃんは私の隣に腰を下ろす。
私は薬と水をはやてちゃんから受け取ろうとして……


ヒョイッ♪


……見事に避けられた。




「……はやてちゃん?」
「んー?」
「んー、じゃなくて薬頂戴」
「いやや」
「いやってちょっと……んぐっ!?」




薬を渡してくれないはやてちゃんに文句を言うも、そちらもさらりと避けられる。
いやってじゃあ、なんのために薬持ってきてくれたよ?
そう言おうとして、開けた口にはやてちゃんが錠剤を投げ込んだ。




「むぅむむむぅ……!(お水頂戴よ!)」
「そやなー、ええよ?」
「むむぅ?んっ、むぅっ!?(ほんと?え、ちょっ!?)」




水無しでも飲めないことも無いが、喉に引っかかったりしたらしゃれにならない。
いまだはやてちゃんの手に握られたままの水を求めると、意外とあっさり頷いてくれた。
だけどはやてちゃんは私じゃなくて、自分の口に水を含むと、私の唇を塞いできた。




「ん……むぅ……ふぁ……」




そこから流れ込んできた水で、錠剤を喉の奥へ流し込む。
って、ちょっ、舌まで絡めないでよ!?




「ん……ふ……」
「んんっ……むぁ……ぷはっ!はやてちゃん!!」
「あかんー、悪い子にはお仕置きや♪」
「そんなっ……んむぅっ!?」




一度は引き剥がして抗議するも、はやてちゃんには通じない。
加えて今回は心配をかけた分、私の方が分が悪い。
しばらくそんな感じで攻防が続いたのだけれど……なんかもぅ、途中で諦めた。




「ぅん……ぁ……」
「ん……」
「ふ……はぁ、いきなりだよはやてちゃん」
「んー、いやいや、貰うもんは貰っとかんとな?」
「もぉ……」




ようやく唇が離れると、ニカッと笑いながらそう言うはやてちゃん。
まったく、すぐこういうことするんだから。
……でも本当はいつだって優しくて、私を想ってくれる大事な人。




「お、なんや、今日はちょお積極的?」
「そうだね……ふふ、はやてちゃんはスーパーマンみたい」
「すーぱーまん?」
「うん、だって、私が困ったときはいつも来てくれるんだもん」
「あぁ、ええなぁそれ、ほんなら私はなのはちゃんだけのスーパーマンや♪」
「うん♪」




肩を抱いてくれているはやてちゃんに、身をゆだねると、抱き締められた。
そのまま、うりうりと擦り寄られる。
お返しとばかりに、私も擦り寄ると、私はスーパーマンみたいと口にした。
いつだって、私が辛い時に駆けつけてくれるはやてちゃん。
それがどれだけ凄いことか、きっと知っているのは私だけだ。




「はやてちゃん大好き……」
「私もやでなのはちゃん……」




呟いて身を寄せる私達。
もうちょっと甘えようかな?と顔を上げたところで……


キーンコーンカンコーン……


……始業のチャイムが鳴った。




「なのはちゃん、今の……」
「うん、始業のチャイム、だね……」
「……」
「……」
「って、あかんやん!?」
「そうだよ!どうしようはやてちゃん!?」
「と、と、とりあえず教室行くで!」
「う、うん!」




バタバタと慌てて階段を駆け下りる私達。
そうして走りながらはやてちゃんが叫んだ。




「愛しとるで〜なのはちゃん!」
「っ!?私も、はやてちゃん大好き!」
「なはは〜♪」




私も叫び返すと二人で教室を目指して走る。
結局、二人揃って遅刻になった私達には先生のお説教が待っていたけど、多分あんまり反省してない。
だってきっと、私もはやてちゃんも笑っていたから。

普段とちょっと違う、でもいつものように暖かい、そんな日のお話。

 
 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

久しぶりのはやなのでーす♪(どんだけ需要があるかは知らないが)
おぉう、ほのぼののはずだったのに、なぜか気づけば微妙にR指定?
流石です、はやて師匠(笑)
んー、でもこのくらいのちゅーなら15禁までいかないかしら?はてさて?
まぁとにかく、師匠はエロスってことですよ、うん。

さて、メイン原稿はあがったものの、キッドはまだまだやること山積みです。
特にリアルの方で洗濯機と冷蔵庫がご臨終されたの……あわわわ。
まだ当分バタバタしそうですが、これからもいつも通り、まったりお付き合いくださいませ〜♪

2008/4/21


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