暑くても寒くても














「最近暖かいね」
「そうね、ついこの間までは凄く寒かったのに……」
「まだ4月だから、ちょっと暑いよね」
「ふふ、フェイトちゃんは暑いの苦手だもんね」
「夏は机の上で溶けとるもんなぁ〜?」
「と、溶けてないよ!」
 
 
 
 
冬が過ぎ去り、春を迎えたある日、あたし達は今日も皆で揃って帰宅をしていた。
話題に上るのは最近の気候。
つい最近までは冬の名残か、随分と寒かったというのに、ここ数日は一気に暖かくなってきた。
今日なんて夏の気候に近い。
 
 
 
 
「夏場のフェイトちゃんは辛そうだよね……」
「せやなぁ〜、なのはちゃんも夏場はフェイトちゃんやのうて、私にくっついとったらええよ♪」
「ちょっ、何言ってるのはやて!?そんなのダメに決まってるじゃない!」
「けどフェイトちゃん、暑いのは辛いんやろ?なのはちゃんがくっついとったら、もっと暑うなるよ?」
「う、ぐ……な、なのはが傍にいてくれるなら、平気だもん……」
「っっっ!フェイトちゃーん!大好きっ!!」
「わわわ、な、なのは♪」
 
 
 
 
ムキになって言うフェイトに、なのはが嬉しそうに抱きつく。
フェイトは表面上慌ててるくせに、顔がだらしなくにやけてる。
鬱陶しい。
はやてもはやてだ、こうなるのが分かってて、フェイトをからかうんだから、まったく。
 
 
 
 
「気候よりアンタ達の方が暑っ苦しいのよ!!」
「いたっ!?」
「にゃっ!?」
「おー、いつもながらナイスな突っ込み」
「はやて、アンタも私の仕事を増やさないでくれる?」
「ええやんか別に、それともアリサちゃんもすずかちゃんにくっついて欲しいんか?」
「んなっ!?」
「ふふふ、じゃあ私もアリサちゃんにくっついちゃおうかな?」
「ちょっ、すずか!?」
 
 
 
 
いつも通りに、二人の後頭部を引っぱたいて突っ込みを入れる。
ついでにはやてに文句を言っておいたんだけど、これが逆効果だった。
分かっててもつい反応してしまう、自分が憎らしい。
しかもこういう時、大抵すずかはのってきてしまうわけで……
ちょ、すずか、腕、腕になんか柔らかい物体が当たってるんですけどぉー!!?
 
 
 
 
「さすが学年有数のバスト、アリサちゃんも骨抜きやなぁ〜」
「なっ!あ、アンタみたいな胸フェチと一緒にしないでよ!あたしはすずかだから好きなのよっ!!」
 
 
 
 
はやての言葉に、感情の赴くままに叫んだ。
……なんだか今、もの凄くあれなことを言った気がする。
待て、待つんだ、ちょっと、待て。
今何を言ったアリサ・バニングス。
 
 
 
 
「……ほ〜、アリサちゃんはすずかちゃんが、好きで好きでしゃーないんやなぁ〜」
「アリサ、凄いね……」
「ほぇ〜、さすがアリサちゃん……」
「うふふ、ありがとうアリサちゃん」
 
 
 
 
あーあーあーあー…………
忘れろ、ていうか忘れさせてほしい、お願いだから。
 
 
 
 
「なんやもう、アリサちゃん達もほんまラブラブやなぁ〜」
「うん、なのはちゃん達にだって負けないよ?」
「む、私達だって負けないよ、ね、フェイトちゃん♪」
「うん、なのは♪」
「…………だぁぁぁぁぁっっ!!うるさいうるさいうるさーい!あぁもう、帰るわよすずか!」
「うん、アリサちゃん♪」
 
 
 
 
段々、というか相当鬱陶しくなっていく会話を、叫んで止めさせるとすずかを引っ張るようにしてずんずんと歩き出す。
すずかは何も言わず、それに嬉しそうについてくる。
……腕を振り払うなんて出来るわけないじゃない。
 
 
 
 
「あー、ちょっと待ってよアリサちゃん、すずかちゃーん」
「あかんあかん、邪魔したらおっかないで?」
「それははやてが、からかうからだと思うけどなぁ……」
 
 
 
 
後ろからまだなんか聞こえるけど全部無視。
 
 
 
 
「ふふ、大好きだよアリサちゃん」
「……あたしだって好きよ、すずか」
 
 
 
 
大事なのはすずかの言葉を聞き漏らさないこと、それだけなんだから。
 
 
 
 

 
 
 
 
「なんか今度は急に寒くなったね〜」
「この間まではちょっと暑いくらいだったのにね」
「一気に冬に逆戻り、って感じよね」
「私も夏物の用意しちゃったんだけど……」
「あかんよ〜、この時期は気候の変動激しいから、両方用意しとかんと」
 
 
 
 
なんだか無駄に色々と暑かった日から数日後、今度はいきなり寒くなりだした。
そろそろシャツ一枚でもいいかも、と思っていた矢先のことだったので、身体の方が変化についていくのでいっぱいだ。
 
 
 
 
「あ、でも涼しくなったお陰でフェイトちゃんにくっつけて嬉しいかも♪」
「えぇぇぇ、な、なのは、私はいつだって……」
「そうよ、アンタ達はいつだって、くっつきっぱなしじゃないのよ」
「二人とも仲良しだもんね」
「べ、別にいつでもじゃないよ、本当はいつでもがいいけど、授業中とかは無理だし……」
 
 
 
 
相変わらずなバカップルぶりに、毎度のことながら眩暈を感じる。
ていうかフェイト、アンタ授業中までいちゃつきたいわけ?
 
 
 
 
「とか言ってるアリサちゃんとすずかちゃんかて、充分バカップルやと思うんやけど……」
「んなっ、なのは達みたいなのと一緒にしないでよ!」
「ちょ、それちょっと酷いよアリサ!」
「バカップルって言うと……こんな感じかな?」
「す、すずか!?アンタはまた何して……」
「ダメ?」
「う、ぐ、あ……」
 
 
 
 
はやての言う『バカップル』をわざわざ実演する必要なんて無いのに、すずかは満面の笑みで抱きついてくる。
引き剥がす?だから出来るわけないでしょうよ。やる気もないし。
 
 
 
 
「あー、いいなぁ、フェイトちゃん、私もー♪」
「う、うん、なのは」
 
 
 
 
って、しかもそこ、無駄に便乗してこないでよ。
ただでさえ暑いんだから。
 
 
 
 
「……うぅぅ、私だけなんや寂しいなぁ……帰ったらヴィータとシグナムに抱きついとこ」
 
 
 
 
なによ、結局はやてだって、帰ったらデレデレじゃないのよ。
 
 
 
 
「こうしてると暖かいね、アリサちゃん」
「そりゃ……すずかがいてくれるからでしょうよ」
 
 
 
 
暑かろうが寒かろうが、変わりゃしないわよ、アンタはあたしの一番大事な人なんだから。
なんて言葉には出来ないまま、触れ合った手の平を、ギュッと繋ぎ直したそんな春の日。

 
 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

明日用のコピ本の印刷待ち時間に、思わず書いてしまった一品。
人はそれを現実逃避と呼ぶ(笑)
最初は最近の気候の変動をネタにした、なのフェイの予定だったのに、気がつけばアリすずに。
これは、あれか、さっき隅田さんとメールで「今あさぎーは爆睡してるよー」なんて会話をしたせいか(笑)
あさぎのーアリすずマジック、恐るべし(笑)

2008/5/17


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