Trick or treat?

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
機動六課の朝は早い。
夜勤組とのローテーションも考えれば、当然ながら年中無休である。
そして本日、そんな機動六課では早朝から、部隊長による朝礼が行われていた。
 
 
 
 
「えー、本日は皆さんも知っての通り、夜にはちょっとしたイベントを企画しています」
 
 
 
 
はやてらしい朗らかな声が、ホールの中に響きわたる。
 
 
 
 
「準備はもうほとんど済んどると思うけど、まだ夜まで時間はありますから、皆さん確認の方をお願いしますー」
 
 
 
 
そんな風にその言葉を締めに、本日の朝礼はお開きになった。
 
 
 
 
 
 
 
そして、夜。
 
 
 
 
 
 
 
「んーっと・・・・ヴィヴィオ、もうちょっとこっち向いて?」
「んぁ」
「ここを留めてっと・・・・これでよし、っと。じゃあヴィヴィオ、そのままくるっと回ってみて?」
「うん♪」
 
 
 
 
なのはに言われ、そのまま一回転したヴィヴィオのスカートがふわっと舞う。
 
 
 
 
「うんうん、似合ってるよーヴィヴィオ♪」
「えへへ・・・・」
「じゃあ、皆になんて言うかは覚えてる?」
「うん、えっとね・・・・・とりっくおぁとりぃーと!」
 
 
 
 
そう、今日はハロウィン。
ヴィヴィオの今の格好は魔導師・・・・と、言うよりは、
絵本とかに出てくる魔法使いみたいな格好をしている。
とがった黒い帽子と、杖の代わりのレイジングハート(レプリカ)も忘れてはいない。
 
 
 
 
「はい、よく出来ました、じゃあ行っておいでヴィヴィオ」
「うん、いってきますなのはママ、フェイトママ♪」
「外じゃないから大丈夫だと思うけど、気をつけてね。エリオ、キャロ、ヴィヴィオのことお願いね?」
「はい、フェイトさん」
「他の子達もいますし、六課の中を回るだけですから」
 
 
 
 
私の言葉に頷いて、ヴィヴィオの手をとるエリオとキャロ。
二人も今日は仮装していて、エリオは吸血鬼、キャロはヴィヴィオとお揃いの魔法使いの衣装に身を包んでいる。
 
 
 
 
「ちょっと恥ずかしい気もしますけど」
 
 
 
 
そう言って、十歳にしては大人びた二人は苦笑するけれど、楽しんでくれているようだし、
出来ることなら歳相応にもっとはしゃいでくれても、私としては一向に構わない。
二人の性格からすると、中々難しいものがあるのかもしれないのだけれど。
 
 
 
 
「それじゃあ、いってきますフェイトさん」
「いこう、ヴィヴィオちゃん」
「うん♪」
 
 
 
 
二人に手を繋がれて、ご機嫌で部屋を出て行くヴィヴィオを、なのはと二人で見送る。
ちょっと一緒に行きたかった気もするのだけれど、お菓子を取りに回るのは子供達だけで、と決めていたので仕方が無い。
 
 
 
 
「フェイトちゃん、一緒に行けなくて残念?」
「うん、ちょっとね・・・・・」
「私もかな、でも楽しんできてくれるといいね♪」
「そうだね・・・・そういえば、私達も海鳴に居た頃にあちこち回ったよね」
「うん、まさかこっちに来てまで、やることになるとは思わなかったけどね〜」
 
 
 
 
そう言って笑うなのは。
確かに私も、ミッドに来てまでやることになるとは思わなかったけど。
 
 
 
 
「流石はやてちゃん、って感じかな?」
「ふふ、そうだね」
 
 
 
 
今回の事の発端、それは例によってはやてな訳で。
この間私となのはが、ヴィヴィオにハロウィンについて話したことを知るやいなや、
今回の計画を、圧倒的な速さで持ち上げたのだ。

理由は、隊員達のコミュニケーションのため。
六課の隊員は全体的に若く、既婚者はそれ程多くはないが、仕事柄中々家族と接することが出来ない。
隊員のモチベーション的にも、なるべく家族との時間は作ってあげたいが、
かと言ってそんなに簡単に、休みをほいほいあげるわけにもいかない。
そこではやては、こっちが行けないなら、向こうから来てもらえばいい、と考えたらしい。
そして隊員達にハロウィンの内容を教え、子供達に六課内を回らせることにしたのだ。

・・・・表向きの理由は。
 
 
 
 
「あ、フェイトちゃん、映像ちゃんときてる?」
「うん、大丈夫だよ、なのは」
 
 
 
 
言われてモニターを確認すると、そこには子供達の姿が映っていた。
うん、しっかり録画モードになってるよ、なのは。
 
 
 
 
「まぁ、ちょっと職権乱用的な感じもするんだけどね・・・・・」
「うん・・・・いや、でも子供の成長の記録はきちんと撮っておかないと!」
 
 
 
 
ぐっ、と拳を握って言うと、なのはは少し苦笑しつつも頷いてくれた。
そう、今回の企画の本音はこれ。
可愛い子供達の思い出のメモリーを確保することなのだ。
特にヴィヴィオは私達の正式な娘となってから、まだ日が浅い。
これから先少しでも多く、その笑顔を残したい、そう思いはやての計画に二つ返事で乗ったのだ。

親バカと言うなかれ・・・・いやむしろもっと言えば、親バカで何が悪い、だ。
誰だって、子供は可愛いものなのだ。

ちなみに、はやてのところからはリインとヴィータが参戦している。
最初は「アタシは子供じゃねぇ!」と渋っていたヴィータだったが、リインに乞われて結局折れたらしい。
もちろん、本人がお菓子好きなことも手伝ってはいるのだろうが。
 
 
 
 
「・・・・あ、そうだフェイトちゃん、私達もやろうか?」
「はぇ? なのは?」
 
 
 
 
そんな風に事の経緯を思い出していると、不意になのはから声がかかった。
かち合ったその瞳には、悪戯っぽい光が浮かんでいて・・・・・
 
 
 
 
「フェイトちゃん、Trick or treat?」
「えと・・・・」
 
 
 
 
案の定、なのはからそんな言葉が飛び出した。
不意打ちだったから、少しは慌てたけど、私のポケットには子供達にあげたお菓子の残りが入っている。
それを取り出そうとして・・・・でも、なんとなく引っ込めてしまった。
 
 
 
 
「フェイトちゃん?」
「無いみたい・・・・かな」
「・・・・さっき子供達に渡してた残りは?」
「えと、どっかいっちゃったのかも・・・・・」
「もう、そんなこと言ってると、悪戯しちゃうよフェイトちゃん?」
「うん・・・・ねぇなのは、Trick or treat?」
「ふぇ?」
 
 
 
 
反対に私がなのはに聞くと、なのはは自分のポケットに手を入れて・・・・・
私と同じように、何も取らずに抜き出した。
 
 
 
 
「私も無い・・・かな。えへへ・・・・・」
「ふふ、じゃあ悪戯しちゃおうかな?」
「いいよー、私もしちゃうから・・・・・」
 
 
 
 
そうして、くすくすと笑い合いながら、口付けを交わしていく。
啄ばむように、何度も、何度も。
やがて、それは深いキスに変わって・・・・・
 
 
 
 
「ん・・・ぁ・・・フェ・・・トちゃ・・・・・」
「ふ・・・・んぁ・・・・なのは・・・・・」
 
 
 
 
ギュッと抱き締めてキスを続けると、目を開いたなのはの瞳をかち合う。
その瞳はさっきまでとは違って、私にしか見せない情欲の光を包んでいた。
 
 
 
 
「ふぁ・・・・フェイトちゃん・・・・・・」
「ん・・・・大丈夫、時間はたっぷりあるよ、なのは・・・・・」
 
 
 
 
タイムリミットは子供達が戻ってくるまで。
広い隊舎内を、子供の足で一つ一つの部屋を回る。
当然、相応の時間がかかるし、子供達が戻ってくる時刻に合わせてアラームもセットしておいた。
なにより、今は時間の心配などして余所見をしている場合ではない。
だって・・・・・
 
 
 
 
「フェイトちゃん、大好き・・・・・」
「私も、なのはが大好きだよ・・・・」
 
 
 
 
二人の夜は、まだ始まったばかりなのだから・・・・・・・・・

 
 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

Trick or treat? いえいえ、二人にとってはTrick & treat♪ といったところでしょうか♪
そんな感じで微妙にR指定まで入りかけちゃいました!危うくいちはち禁になっちゃうとこだったじゃないか!
いや、ほら、でも私のせいじゃないってば!二人がいちゃつきすぎるだけd(SLB)

げふげふ、そんな訳で最初はほのぼのハロウィンの予定だったのに、
いつの間にか、なのフェイ夫婦のイチャイチャになってました(笑)
あ、ちなみにヴィヴィオの格好のイメージは、軽トラさんで掲載されたハロウィン漫画のイメージでよろです♪
ていうか、あれを見てハロウィン書きたくなっちゃったんだけどさ(笑)

え、ぶっちぎった、いちはち禁部分?
書こうかどうしようか、まだ決めてないんだけど・・・・・・・見たい?(ぇ)

200710/31著


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