台風の試練?

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
機動六課の某日、
昨日未明に上陸した台風は、現在六課付近をものの見事に直撃していた。
 
 
 
 
「はやてちゃ〜ん」
「ん、なのはちゃん?」
「外が凄いことになってるけど、大丈夫かな?」
 
 
 
 
ちょっと不安になった私は、通信ではやてちゃんに確認をとる。
 
 
 
 
「六課自体は平気やし、倉庫類も問題あらへんよ。元々水のある場所やから備えとったし」
「そっか、じゃあ後は出動する事態にならないことを祈るだけかな」
「せやな、本業とちゃうっちゅうのもあるし、災害救助なんて、暇に越したことないしな〜」
「そうだね」
 
 
 
 
お互いモニタ越しに苦笑する。
出動がかかればもちろん出るけど、私達が出るような事態にならないのが一番なのだから。
 
 
 
 
「じゃあ、私は部屋でヴィヴィオといるから、何かあったら連絡してね」
「了解や。はよヴィヴィオのとこ行ったり〜」
「うん」
 
 
 
 
それだけの短い通信を終えて、部屋向かって足を進める。
コレだけの暴風雨だ、きっと怯えているであろうヴィヴィオを思い、自然早足になる。
 
 
 
 
「アイナさんがいるから大丈夫だとは思うけど・・・・・」
 
 
 
 
なんて思ってたんだけど・・・・全然ダメだったらしい。
部屋に着くなりヴィヴィオは、私に飛び掛るようにしてしがみついてきた。
 
 
 
 
「ままぁ〜・・・・・・」
「あー・・・・お手数おかけしました、アイナさん」
「いえいえ、あまりお役に立てなかったみたいで」
 
 
 
 
そう言って苦笑するアイナさん。
この様子じゃあ、ヴィヴィオが相当ぐずったんだろうな〜・・・・
こんなに凄い嵐は初めてだから、しょうがないけれど。
 
 
 
 
「じゃあ私は部屋に戻ってますので」
「はい、ありがとうございました、アイナさん」
 
 
 
 
アイナさんにお礼を言って、ヴィヴィオを抱き上げると、ヴィヴィオは泣き顔のまましがみついてくる。
 
 
 
 
「ふぇ・・・まま・・・・」
「大丈夫だよ、ヴィヴィオ。外は・・・ちょっと凄いけど、お部屋にいれば安心だから」
「うん・・・・・」
 
 
 
 
目に涙を浮かべたまま、私を見上げる瞳。
その瞳に過去の映像が重なる。
ああそういえば、子供の頃の彼女も同じように私にしがみついてたな、って。
いや、今でもちょっぴり苦手らしいのだが。
 
 
 
 
「フェイトちゃん、大丈夫かな・・・・」
「ふぇいとままぁ?」
「ん、まだ帰って来て無いからね・・・・多分、もうすぐだと思うんだけど・・・・・」
 
 
 
 
どうしてもはずせない仕事で、地上本部まで出向いているフェイトちゃん。
時間的にはもうそろそろ帰ってくるはずなんだけど・・・・大丈夫かな・・・・・・?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・一方その頃、フェイトは嵐の中を車でひた走っていた。
 
 
 
 
「うぅ・・・・も、もっと早く帰れるはずだったのに・・・・・・」
 
 
 
 
そう、それもこれもあの将校がっ!!
思い出してぐっとハンドルに力が入りすぎ、車の挙動が一瞬おかしくなる。
慌ててハンドルを切り直し、車を制御した。
 
 
 
 
「あ、危ない・・・・気をつけないと本気で事故っちゃうな、これは」
 
 
 
 
なにせ、外はかなりの暴風雨だ。
色んな物も飛んできてるし、スリップでもしようものなら、天国への片道切符になりかねない。
 
 
 
 
「じょ、冗談じゃない・・・・・」
 
 
 
 
そんな恐ろしい想像を、頭を振って振り払う。
我が家(六課の寮)では、愛する妻と娘(当然なのはとヴィヴィオ)が、
私の帰りを待っているのだ。
こんなところで、天に召されるわけにはいかない。
 
 
 
 
「待っててね、なのは!今帰るから!!」
 
 
 
 
フェイト・テスタロッサ・ハラオウン(後、高町フェイト予定)、愛する妻と娘のためなら、たとえ火の中水の中、
・・・・現実にもの凄い水量と暴風にさらされているのだが、
こんなところでのんびりしているわけにはいかないのだ!
頑張れ私!大丈夫!雷は鳴っていない!!
私は自らを叱咤しつつ、出来うる限りの速さでもって、六課へ向けて車を走らせた。
 
 
 
 
「・・・・なんとか、無事に着きそう、かな」
 
 
 
 
そしてとうとう六課に戻ってきた。
途中で小さい雷が光った時には、一瞬意識が遠退きかけたけど無事だった。
頑張った・・・・なのは、頑張ったよ私!
駐車スペースに車を止めて、ぐっと拳を握る。感無量だった。
だけど、神様の試練はまだまだこんなもんじゃない、ってことをこの直後身をもって教えられた。
傘なんか役に立たないので、そのまま走って寮内に戻ろうと車外に出た瞬間、風に私のリボンを持っていかれたのだ。
 
 
 
 
「あ、ちょ、まっ・・・・・」
 
 
 
 
慌ててそのリボンを追いかける。
私のリボンはどれもなのはが選んでくれたもので、とても大切なものだったから。
たかがリボン、されどリボン。
こうして、台風の中の鬼ごっこが始まった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・遅い」
 
 
 
 
フェイトちゃんの帰宅予定時刻は、もうとっくに過ぎていた。
外の状況は台風が近づくにつれ、酷くなる一方で、未だその中にいるであろうフェイトちゃんの安否が気にかかる。
フェイトちゃんだから大丈夫だとは思うけど、それでもやっぱり心配なわけで。
 
 
 
 
「ままぁ・・・・」
「あー、うん、大丈夫だから・・・・」
 
 
 
 
だけど、こっちもほっとけないこの状況では、不用意に動くこともできず、
いたずらに時間ばかりが、過ぎていっていた。
そんな時、ようやくドアの開く音がして、待ち望んでいたフェイトちゃんが姿を現した。
 
 
 
 
「・・・・・ただいま」
「フェイトちゃん!おかえりなさ・・・・って、びしょ濡れじゃない!!」
 
 
 
 
見ればフェイトちゃんは、完全に濡れ鼠で、今もぽたぽたと沢山の雫が滴り落ちていた。
慌ててタオルを持ってきてフェイトちゃんを拭いてあげる。
 
 
 
 
「もう、なんでこんなにびしょびしょなの〜?」
「うん・・・・駐車場でリボン飛ばされちゃって・・・・ちゃんと掴まえたんだけど、海に落ちちゃって・・・・・」
「うー・・・・フェイトちゃんのバカっ!」
「ご、ごめんなさい・・・・」
 
 
 
 
リボンを大切にしてくれるのは嬉しいけど、それでフェイトちゃんに何かあったら困るよ?
まったくもう・・・・
 
 
 
 
「フェイトママぁ〜・・・・」
「え、あ、ヴィヴィオちょっと待って・・・・あぁ・・・・」
「あー・・・・・」
 
 
 
 
そんな風にフェイトちゃんに気を取られていて、ヴィヴィオに注意を向けるのを忘れていた。
ヴィヴィオもまた、やっと帰ってきたフェイトちゃんに甘えたかったのだろう。
トテトテと駆け寄ると、フェイトちゃんの足元にひしっ、と抱きついた。
びしょ濡れのフェイトちゃんに抱きつく=しっかり濡れる。
 
 
 
 
「おかぇりなさぃ、フェイトママ」
「あー、うん、ただいまヴィヴィオ・・・・・」
 
 
 
 
これはもう、二人ともお風呂場行き確定かな?
って、そう思ってからちょっと考える。
・・・・どうせなら、私も行きたい。
 
 
 
 
「・・・フェイトちゃん」
「え、・・・なの、はっ!?」
 
 
 
 
ヴィヴィオに抱きつかれて、ああ濡れちゃうよヴィヴィオ、
って感じに呆然としていたフェイトちゃんに、私もガバッと抱きついた。
そのまま慌てるフェイトちゃんを、ぎゅっと抱き締める。
 
 
 
 
「な、なの、なのは・・・濡れちゃう・・・・よ?」
「そうだね・・・・だから・・・・三人で、お風呂行こ?」
「・・・・そっか、そうだね」
「うん♪」
 
 
 
 
三人で一緒に入りたいと言う私を、フェイトちゃんも抱き返してくれて、
二人で瞳を合わせて笑い合う。
足元でなんだかよく分からなそうに、こちらを見上げるヴィヴィオに三人でお風呂だよ、
って言うと、ぱっと顔を輝かせてヴィヴィオが笑った。
 
 
 
 
大変なことは沢山あって、時々こんなハプニングもあって。
 
 
 
 
・・・・だけど、私は今・・・・とても、幸せです。

 
 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

台風の上陸に合わせて、お前は何を書いとるんだって感じですね(笑)
元々は台風に怯えるヴィヴィオを書くだけのはずだったんですが、なんか三人でお風呂ネタや、
ちょっと壊れ気味なフェイトさんが出来ちゃいました(笑)

そして偶然にも、先日sirosumiさんからいただいたSSも台風ネタだったので、
あれの続きになる形で、フェイトさんの雷苦手設定を受け継ぐ形にしました。
そして試練を乗り越えて(笑)帰ってきたフェイトさん、家族三人でのお風呂タイム♪
もうアニメがあれなんで、最近糖分やらヴィヴィオ分やらが補完したくしょうがないキッドは、
こうやって自己補給してるわけなんです(笑)ああ、やっぱいいな〜、幸せ家族♪

 

2007/9/9著・2007/9/12掲載


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