その心の内側を

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その人はいつも側にいるけれど、
 
 
 
決まっていつも一歩引いてて、
 
 
 
それがずっと気になってる。
 
 
 
そのスタンスに助けられているはずなのに、
 
 
 
もっと側にいたらダメなのかな?って。
 
 
 
そう言ったら彼女はなんて言うだろう。
 
 
 
私の大切な親友で、小さな身体に、大きな優しさをもった人その人は。
 
 
 
 
 
 
 
 
「んー・・・あ、いた」
 
 
 
 
夕闇に染まり始めた教室、はやてちゃんは窓際の席で、ぼんやりと外を眺めていた。
 
 
 
 
「はやてちゃん、一緒に帰ろ♪」
「んあ、あぁ、なのはちゃん。他の皆はどないしたん?」
「フェイトちゃんはお仕事で、アリサちゃんとすずかちゃんは習い事だよ」
「ん、ほんなら今日は二人っきりやな〜」
 
 
 
 
ニシシと笑うはやてちゃんに笑い返しながら、正面の席に座る。
 
 
 
 
「ふふ、そうだね♪・・・・ねぇ、はやてちゃん、何を見てたの?」
「んー?別になーんも。ただぼーっとしとっただけや」
「・・・ほんとに?」
「ん、ほんまに。・・・・・どないしたん、なのはちゃん?」
「ううん、なんでも無い、ごめんね」
「別に謝らんでもええよ?」
「うん」
 
 
 
 
声をかける前に見たはやてちゃんの横顔は、
なぜか陰りを帯びていて、それがどうしても気になった。
本当に、何も見てなかったのかな・・・・?
 
 
 
 
「・・・・そない気になるん?」
「・・・うん」
「・・・・空見とったんや」
「空・・・・?」
「せや、ほんで空飛んどるなのはちゃんのこと考えとった・・・・って言うたら信じる?」
 
 
 
 
いつものように、優しい口調で、優しい声で、
笑いながらはやてちゃんは言うけれど、瞳だけは笑ってなくて。
少し苦しそうな、困ったような、形容しがたい痛み含んでいるような、そんな気がして。
机に置かれたその手を、そっと包みながら私は答えた。
 
 
 
 
「・・・・はやてちゃんがそう言うなら、私は信じるよ」
「ん、ありがとう・・・・なんかな?」
「うん・・・・でも私はごめん、かな?」
「んー?なして?」
「だって、はやてちゃんの表情を曇らせてるのは、私ってことだよね?」
 
 
 
 
はやてちゃんが、私の飛ぶ姿を思っていたなら、あの曇った表情は私のせいだ。
 
 
 
 
「また・・・・心配かけちゃってる?」
「心配は、いつもしとるよ?私もフェイトちゃんも、皆も・・・・」
「そっか・・・・・」
「なにせ、誰かさんがほんまに無茶ばっかするんやもん」
「あ、あはは・・・あー、ごめんなさい・・・・・」
「謝るより、もちっとおとなしゅうしてくれると、ええんやけどな〜」
「でも、私・・・・航空魔導師だよ?」
「せやかて限度っちゅーもんがあるやろ、まったく」
 
 
 
 
やれやれ、と呆れたように溜め息を吐かれる。
そんなに無茶、してるかな?
だけど・・・・
 
 
 
 
「心配はいつもしてる、ってことは、違うことを考えてたの?」
「・・・・なのはちゃんは妙なところで鋭いから困るわ、ほんま」
「えーと、誉めてる?それとも貶してる?」
「さぁ?どっちやろな」
「むぅ、意地悪だよ、はやてちゃん」
「あはは、ごめんて、せやけど拗ねとる顔も可愛えで?」
 
 
 
 
もう、はやてちゃんってば、人が本気で心配してるのに、すぐこういうこと言うんだから。
 
 
 
 
「・・・・そうやって、結局教えてくれないつもりなんでしょ」
「んー?・・・・知らん方がええことも多いで?」
「・・・・はやてちゃん」
「・・・ごめんて、降参するからそない怖い顔せんと、な?」
 
 
 
 
私にこんな顔させてるのは、はやてちゃんでしょうが。
それでも、やっと教えてくれる気になったのかと思っていたのだけど、
やっぱりはやてちゃんは、一筋縄じゃいかなかった。
 
 
 
 
「さて問題です、以下の例題から問1について答えなさい」

「・・・・はい?」

「額へのキスは友情のキス」
「は、はやてちゃん!?」
「瞼の上へのキスは憧憬のキス、頬へのキスは厚意のキス」
 
 
 
 
突然降り始めた口付けに、慌てる私に構わず、
はやてちゃんは次々と、言葉にしながら口付けてくる。
 
 
 
 
「そして唇へのキスは・・・愛情のキス」
 
 
 
 
言葉と共に、私の唇をはやてちゃんが顎に沿えた手の親指でなぞる。
一瞬、本当にするのかと思ったけど、唇からは逸れて、
けれど、限り無く唇に近いところに口付けられる。
 
 
 
 
「問1、現在私が口付けたい場所はどこでしょう?」
「え・・・・え、え、えぇ!?」
 
 
 
 
どこって・・・・どこ?
って、え、あれぇ?
 
 
 
 
「・・・・正解はここ」
「手の平・・・・?」
「そっ。さて、問2、これにより推測されることについて答えよ。・・・ま、考えへんでもええよ、これは」
 
 
 
 
軽いパニックになった私に笑いかけて、
はやてちゃんは私の手の平に口付けると、次の問題を出してから立ち上がった。
考えなくてもって言われても・・・・・
 
 
 
 
「さー、ほんならそろそろ帰ろか?結構遅くなってもうたし」
「え、あ、うん・・・・」
 
 
 
 
はやてちゃんは、未だパニック状態の私の手を引いて立ち上がらせてくれる。
 
 
 
 
「・・・・そない深刻ならんでもええて。大したことやないんやから」
「はやてちゃん・・・・」
 
 
 
 
反射的に頷きかけて、慌てて首を振る。
簡単に伝えられる話なら、わざわざ問題形式になんかしたりはしないはずだ。
今はまだ、それが何なのかは分からない、だけど・・・・
 
 
 
 
「・・・・私、ちゃんと調べて、考えるからね」
 
 
 
 
ぎゅっと手を握り、宣言するかのように答える私に、はやてちゃんは苦笑して頷いた。
はやてちゃんが何を想っているのか、今はまだ分からないけど、
もっと笑って欲しいから、もっと近くにいて欲しいから・・・・・だから、ちゃんと考えるよ。
私は・・・・もっと、はやてちゃんのことが知りたいんだ・・・・・・

 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

真面目になのはやを書いてみた!・・・が、なんかシリアスになりすぎた(滝汗)
しかもなのはやっていうか、まだなのは×はやてにもなってないですね。
なのは→←はやて、な感じでしようか?ほとんど自覚無しななのはさんですが(苦笑)
パラレルなのはやに向けての、最初の一歩、って感じでしょうか♪

このあとコレの裏として、はやて師匠Verを用意してます。
後日UP予定♪

2007/9/12著・2007/9/13掲載


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