好き嫌いはダメですよ? 「あ、もーまたピーマンだけ残してー」 「う〜、にがいのー・・・・」 「うん・・・・苦いけど、ちゃんと食べないとダメだよ、ヴィヴィオ」 それはいつもと同じご飯の時間で、 やっぱりピーマンの苦手なヴィヴィオは、見事にピーマンだけ残してしまっている。 当然、『ママ』としてのなのはがそれを見逃すはずもなく、 ヴィヴィオは口をへの字に曲げてごねている。 確かに苦いから、私もあまり好きではないんだけど、 偏食は早めに直した方が良い、というなのはの方針は間違ってはいないので、 ピーマンくらい別にいいよ〜、とは言えずにいる。 言ったらきっと、なのはに怒られるし・・・・・ 「・・・・・そーいやフェイトちゃんも昔ピーマン苦手やなかった?」 「うっ・・・・・」 ・・・・どうしてそこで私の話をもってくるのかな、はやて。 ああもう、ヴィヴィオがそうなの、って感じに見上げてくるし。 「む、昔の話だよ!今はちゃんと・・・・食べられるし」 「昔ゆーても、4年ほど前の話やろ?ピーマン食べられたのが14・5才言うんも随分あれとちゃう?」 「うぐっ・・・・」 それは・・・・そうなんだけれど。 助けを求めるように、なのはを見ると私を見て苦笑していた。 その顔を見て、そういえばあの時もこんな顔をしていたな〜って、 初めてちゃんと、ピーマンを食べた日のことを思い出した。 「・・・・フェイトちゃん」 「うぅ・・・ごめんなさい・・・・・」 その日、一般的にも休日で私は仕事も無く、同じく仕事が無かったなのはの家に遊びに来ていた。 そしてお昼になり、なのはがお昼ご飯を作ってくれたのだが、そこには緑の物体Xがいたわけで・・・・・ なのはにバレないように、こっそりと選り分けていたつもりだったんだけど、 目ざといなのはにはバレバレだったらしいく、ばっちり見つかってしまっていた。 「だめだよ、ピーマン残しちゃ」 「う・・・だって・・・・・」 「だってじゃありません」 「ごめんなさい・・・・」 なのはは、こういう事には割りと厳しい。 この歳になってピーマンを食べられない私にも、問題があるのだけれど。 見逃してはくれなさそうななのはを見て、覚悟を決めるしかないかな?と思っていると、 なのはは少し困ったように笑って言った。 「もう・・・・しょうがないなフェイトちゃんは・・・・はむ」 「あの、なのは・・・・んむっ!?」 「ん・・・んん・・・・・」 「んぁ・・・んぐ・・・・・」 苦笑とともに、ピーマンを自らの口に含んだなのはは、 なのはが何をするか分からずに、ぼーっとしていた私に口付けた。 しかもそれは深い方で、こじ開けられた唇から入り込んできた舌に翻弄され、 いつの間にか、口の中にピーマンを移されていたことにも気づかなかった。 「んむ・・・・どう、フェイトちゃん」 「ふぁ・・・・・苦い・・・・・・」 キスの最中はともかく、終わってから咀嚼したピーマンはやっぱり苦くて。 ちょっぴり泣きそうになってしまった。 「んむぅ・・・そんな泣きそうな顔しないの〜。さ、次いくよ?」 「うぅ・・・・うん・・・・・・」 その後も、結局口移しで食べさせられ、 苦いけどこれはこれで幸せだな〜って思ってたら、急になのはに突き放された。 「ん・・・・これで後半分くらいかな?」 「んく・・・・そうだね・・・・・・」 「じゃあフェイトちゃん、後はちゃんと一人で食べてね」 「え・・・・一人で?」 「うん、一人で」 ・・・・そんなに、にこやかに言わないで欲しい。 目の前にはまだ少し残っているピーマン、すぐ隣にはなんとも言えない威圧感を放つ愛しい恋人。 こういうのなんて言うんだっけ?四面楚歌? 囲まれるまではいってないけど、逃げられるものなら今すぐ逃げ出したい。 「そんな顔しないでフェイトちゃん」 「だって・・・・・」 私の様子にまたしても苦笑を浮かべたなのはは、身体を寄せると囁くように言った。 「ちゃんと一人で頑張れたら、ご褒美をあげるから」 「ご褒美って・・・・・?」 「ふふ、さっきの続き、かな」 「・・・・!!?」 悪戯っぽく微笑まれ、私が頑張っちゃったのは言うまでもなく、 結局その日以来、ピーマンが食べられるようになったのだった。 ・・・・・苦手なのは、今も変わってないのだけれど。 「フェイトママ〜・・・・・・」 「え、あっ・・・・」 ヴィヴィオのその声で、回想に飛んでいた意識を引き戻される。 見ると未だに一口も手をつけられていないピーマンが、お皿の上に鎮座していた。 その前には泣きそうなヴィヴィオの顔。 これは、どうしたものか・・・・・ 「どうやったらピーマンたべられるの〜・・・・?」 「え、や、それは・・・・」 再び思い出し、顔が熱くなる。 返答に困りなのはを見ると、彼女も顔赤くしていた。 い、言えない、『なのはママに口移しで食べさせてもらって、ご褒美も貰ったからだよ〜』なんて・・・・・・ 「フェイトママ?なのはママ?」 「「・・・・・」」 「くっくっく・・・・・まぁママ達は昔っから仲がええ、っちゅうことや♪」 「?」 はやての突っ込みに反論することも出来ず、固まる私達を、 不思議そうな顔でヴィヴィオが見上げていた。 後日、結局ヴィヴィオのピーマン克服に、またしてもなのはの『ご褒美』が投入されることになった。 ・・・・断っておくが、私の時とは当然同じではない。 「ヴィヴィオ、あーん?」 「んぅぅぅ・・・・・・」 「ほらヴィヴィオ、頑張ろう」 「全部食べ終わったら、ヴィヴィオの大好きなキャラメルミルクいれてあげるから、ね?」 「んぅ・・・・あー・・・・・・ふぇ・・・苦いの〜・・・・・」 「偉いよヴィヴィオ、後少しだから頑張ろう」 「えぅ・・・うん・・・・」 ヴィヴィオの大好きなキャラメルミルク、これならばと試してみると、 しぶしぶながらも、ヴィヴィオに食べさせることに成功した。 顔をしかめながらも、一生懸命ピーマンを食べるヴィヴィオに思わず笑みが漏れる。 あの時のなのはもこんな気持ちだったのかな? 「フェイトママ?」 「ん、何ヴィヴィオ?」 「フェイトママもなのはママに、きゃらめるみるくをつくってもらったの?」 「え、あ、う、うん・・・・ど、どうだったかな・・・・・」 「?」 首を傾げて私を見上げてくるヴィヴィオ。 純真無垢なその瞳に、なんだかいたたまれない気持ちになったのは、内緒にしておこうと思った。
...Fin あとがき(言い訳)ヴィヴィオ分を自己補充中のキッドです、ごきげんよう♪(笑) っていうか、勝手にフェイトさんをピーマン嫌いにしてしまった、ごめんなさい(汗) 内容的には、苦いのに甘いお話、みたいな♪ ご褒美の詳細は各自脳内補完するように。 まぁとりあえずこんな感じで、間の部分はヴィヴィオの日記で一部補完されてます。 ・・・・×××な部分じゃないですよ?(ぇ) 純粋に可愛いヴィヴィオですからね(笑) そうそう、この後は原稿もあるので、次の更新はおそらく夏コミ後の予定です。 ・・・でもね、超反則設定でなのは様(マテ)を書いちゃったから・・・・早めにその連載も始めちゃうかも(汗) 時間が2倍は欲しい今日この頃(- -;) 2007/8/15著
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