朧月夜














寒いのは苦手。
こたつに入っている方が好き。
それなのに寒空の下、外へ出てしまったのはきっとその月のせい。
 
 
 
 
「フェイトちゃん!はやくはやく!」
「待ってよなのは」
 
 
 
 
夕食も終えて娘も早々に就寝した夜、ふと窓の外を見れば丸い月が浮かんでいた。
ミッドの月は地球とは違う。
それなのに今日の月はぼんやりと金色に輝いて見えて、気がついたらフェイトちゃんの手を引っ張って家の外へと飛び出していた。
 
 
 
 
「そんなに急がなくてもお月様は逃げないよ?」
「むぅ、そうだけど……」
 
 
 
 
苦笑気味に言うフェイトちゃんにちょっぴり頬を膨らませてしまう。
お月様は逃げないけれど私達の時間は有限なのだ。
明日も早朝から訓練が入っている私と、捜査会議が入っているフェイトちゃんはあんまり夜更かし出来る状況ではないのだから。
 
 
 
 
「偉くなればもう少し違うかな?」
「うーん、はやてちゃんを見てるとあんまり変わらない気がしちゃうかも……」
 
 
 
 
出世して偉くなればお給料もあがるし時間も出来る。
……なんて簡単な構図にはなっていない。
階級が上がればそれだけ責任は増えるし仕事も増える。
最前線から外れる人もいるけど私もフェイトちゃんも、そしてはやてちゃんもそれは望んでいない。
大変でも手を伸ばせる現場にいたいと思ってしまう。
 
 
 
 
「……ところでなのは、どこまで行くの?」
「ふぇ?」
 
 
 
 
言われて立ち止まると家からは結構離れてしまっていた。
月が見やすいようにと坂をのぼるだけのはすだったのに……歩きすぎてちょっと寒い。
 
 
 
 
「にゃはは……行き過ぎちゃった」
「もう……あぁ、でも確かに綺麗だね」
 
 
 
 
しょうがないな、って苦笑して、私の手を握るフェイトちゃんが自分のコートのポケットに手を入れた。
片手だけなのにどうしてだろう、すごくぽかぽかした気持ちになるのは。
 
 
 
 
「でしょう?あのね、なんかいいなって思ったの」
 
 
 
 
はっきりと白く見える月も嫌いじゃないけど、こんな風にぼんやり見える月もいいと思う。
霞みがかって金色に光る朧月。
私の大好きな人の色。
優しくてふんわりしていて、ずっと見ていたくなるような。
 
 
 
 
「うん、素敵だね」
「星がちょっぴり見えにくいけどね」
「でも優しい色だよ」
「うん♪」
 
 
 
 
どうやらフェイトちゃんもこの月を気に入ってくれたらしい。
それが嬉しくてまた少しだけフェイトちゃんの方に身を寄せて、その肩に頭を乗せた。
ぽかぽかにちょっぴりどきどきが混じる距離。
大人になってもこのどきどきは治らなかった。
 
 
 
 
「……ねぇなのは」
「……ん?」
「……月が綺麗ですね」
 
 
 
 
そう言ったフェイトちゃんの瞳は何故だかとても優しげで。
その肩に頭を乗せたまま、軽く首を傾げた私にフェイトちゃんはまた一つ微笑んだ。
 
 
 
 
「愛してるよ、なのは……」
 
 
 
 
寒いのに寒くない、私達二人だけの朧月が輝く夜。



 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)


お久しぶりです、生きてます、キッドです(笑)
間があきまくりましたごめんなさい(汗)
とりあえず先日月が綺麗だったので気付いたらフェイなのがいちゃついてましたw
国語嫌いななのはさんは某漱石さんの言葉とかよく覚えて無くて、
生真面目に覚えてたフェイトさんが使ってはみたけど、
結局最後はストレートにとかそんなオチでしたw

2012/12/2


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