怪我の功名


 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
「さて、後は報告書を提出するだけっと・・・・・」
 
 
 
 
軽く伸びをして本局内の廊下を歩く。
任されていた任務を一つ片付けて、今さっき戻ってきたばかりだ。
夕方になればなのはも訓練が終わるって言ってたし、
さっさとこの報告書を提出してなのはのところに・・・・・
 
 
 
 
「おりょ、フェイトちゃ〜ん」
「ん・・・・はやて?」
 
 
 
 
廊下の後ろから声をかけてきたはやては、小走りにこちらまでやってくる。
 
 
 
 
「任務終わったん?」
「うん、そっちは?」
「こっちも今終わって戻ってきたとこや」
 
 
 
 
私は執務官として、はやては特別捜査官として、
職種は違うものの、二人ともあちこち飛び回ってることが多い。
ひらひらと片手で報告書を揺らしているところを見ると、
はやてもこれから提出しに行くところなのだろう。
 
 
 
 
「そんでな、なのはちゃんが今訓練室使ってるらしいんよ」
「・・・・なのはが?」
「うん、せやから覗きに行ってみようかと思うんやけど・・・・」
 
 
 
 
ガシッ!!
 
 
 
 
「是非お供させていただきます」
「・・・・うんまぁ、そう言うやろな〜思うたから誘ったんやけどな」
「うん、ありがとうはやて」
「ほんならさっさと報告書出してまおか?・・・・ええ加減掴まれた肩も痛いし」
 
 
 
 
そう言うはやての顔は、微妙に引き攣っている。
思ったより強く、はやての肩を掴んでいたらしい。
 
 
 
 
「あ、ご、ごめんはやて」
「あたた・・・・ほんま、フェイトちゃんはなのはちゃんの事になると夢中やな」
 
 
 
 
からかうように笑うはやてに苦笑で返す。
自覚はしているが、改めて言われると少々ばつが悪い。
 
 
 
 
その後は急ぐ気の無いはやてを引きずるように歩いていき、それぞれの担当上官に報告書を提出した。
反論の隙を許さず、畳み掛けるように全ての報告を済ませ部屋を出ると、
報告書の提出だけだったため、先に済ませていたはやてと再度合流し、足早になのはのところへと向かう。
 
 
 
 
「フェイトちゃん、任務の時より気合入ってへん?」
「・・・・そんなことないよ」
「ほうか〜?けどなフェイトちゃん、局内で身体に魔力付与して動くんはまずいんちゃう?」
「・・・・ちょっと抑えきれなくて魔力が漏れてるだけだよ」
「いや、せやからそれがあかんのやと思うんやけど・・・・・競歩とちゃうんやし」
 
 
 
 
そう言うはやても、私に合わせて同じスピードで歩いているため、
色々と聞かなかったことにした。
廊下は走らない、は守ってるんだし、うん。
 
 
 
 
「ほい、到着〜っと、なんや大した距離とちゃうのに、えらい疲れた気がするわ〜」
「気のせいだよ、はやて」
 
 
 
 
そう気のせいだ。
だって私は疲れてなんかいない。
息を整えているはやてをそのままに、私は各訓練室の中を見回した。
 
 
 
 
「次!誘導弾の制御とその防御!Aチームは射撃、Bチーム防御!」
「「「「はい」」」」
 
 
 
 
訓練室の中の一つから探していたなのはの声が聞こえる。
普段の優しい声音と違い、真剣な表情と相俟って凄く凛々しい。
職務上一緒になることがそう多くはないので、普段見れない彼女の横顔はとても新鮮だ。
 
 
 
 
「おぉ〜、なのはちゃん頑張っとるな〜」
「うん、気合入ってるね」
「あの普段とのギャップがまた堪らんゆー、局員も多いらしいで?」
 
 
 
 
・・・・本当にはやては、いつも何処からそういう情報を仕入れてくるんだろう?
もっとも、誰が相手でもなのはを譲る気なんて毛頭ないのだけれど。
 
 
 
 
「にしても、今日の子達はちょお動き悪いんちゃう?」
「・・・そうだね、配属され間もないんじゃないかな?」
「そうやろな、けどあんな無茶な動きしとったら・・・・危ない!!」
「・・・・なのはっ!?」
 
 
 
 
訓練を受けていた中の一人が、防御に失敗し吹き飛ばされる。
そこに残っていた魔法弾が、追い討ちをかける。
防御魔法の展開も間に合わず、皆が直撃を覚悟した中、動いたのはなのはだった。
強引に魔法弾の軌道に割り込み、防御魔法を展開する。
全ての魔法弾が消えるのを確認すると、なのはは崩れるように膝をついた。
 
 
 
 
「・・・・っ」
「教導官!?」
「高町教導官!!」
 
 
 
 
慌てて一緒に訓練をしていた局員達が、なのはの周りに集まる。
どうやら魔法弾の軌道に強引に割り込んだ際に、足首を痛めたらしい。
 
 
 
 
「いたた・・・・ごめん、ちょっと失敗しちゃったね」
「いえ、そんな!自分のせいです、申し訳ありません!」
「自分が魔法弾を止められていれば・・・・!!」
「医務室で手当てしてもらいましょう、自分お連れします!」
「いや、自分が・・・・!」
 
 
 
 
困ったように笑うなのはに、局員達が自分の非を詫びている中、
私はなのはの元へ近づいた。
 
 
 
 
「・・・・なのは」
「あ、フェイトちゃん」
「摑まってて」
「え・・・・ひゃっ!?」
 
 
 
 
突然の私の乱入に周りが唖然とする中、私はなのはの傍までくると、
躊躇無くその身体を抱き上げた。
 
 
 
 
「医務室までは、私が連れて行きますのでご心配無く。皆さんは訓練を続けてください」
 
 
 
 
その言葉と同時に、むしろ近づくな的に冷気を乗せた一瞥をくれる。
そしてそのまま踵を返し、足早に歩き出す。
途中、チラリと後ろを見やると、全員固まったまま何人かは怯えていた。
・・・・ちょっとやりすぎたかな?
 
 
 
 
「フェイトちゃん、私自分で歩けるよ・・・・」
「ダメだよ、なのはは怪我してるんだから」
「だけど・・・・ちょっと恥ずかしいかも」
「イヤ?」
「・・・ううん、嬉しい・・・・・・・」
 
 
 
 
そう言ってなのはは私に抱きつく腕に力を入れる。
 
 
 
 
「むしろ怪我してちょっと得しちゃったかも♪」
「どうして?」
「格好良いフェイトちゃんが見れたし、お姫様だっこしてもらっちゃったし」
「なのはが望むなら、いつでもしてあげるよ」
 
 
 
 
嬉しそうに笑うなのはに、私も笑顔で返す。
そのまま医務室につくまでの間、すれ違う局員達に見せ付けるように、
悠然と局内を闊歩したのであった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・完全に二人の世界やな・・・・この後始末、私にどないせえっちゅーねん」
 
 
 
 
そして一人残されたはやてには、固まった局員の解凍と、怯える局員へのフォローという、
極めて面倒くさい作業が、強制的に押し付けられたのでありました。
 
 
 
 
「・・・・逃げてまおうか?」
 
 
 
 
一瞬そんなことを本気で考えたとか、考えなかったとか。

 

  
 

...Fin


 


あとがき(言い訳)

どうも〜、やっぱりアニメ18話がムフフらしく、まだ見てないけど微妙に復活してるキッドです、ごきげんよう♪
テレ玉は明日の夜中なのよねー、待ち遠しいわ(笑)

わーい、フェイトさんとなのはさん、らぶらぶー(殴)
そしてはやて師匠貧乏くじ(苦笑)
うーん、最初は怪我したなのはさんをフェイトさんが抱っこしてくだけだったのに、
はやて師匠が出てくると、物語が円滑に進んでくれてありがたいわ(笑)
でも結局二人の世界だったけど。いや、あっついあっつい(^^;)

さてさて、なんだかんだで、次回作が記念すべき短編10本目です!
割と速い段階で書いたSSで、シリアスラブでお送りします♪楽しみに待っててちょー♪

2007/8/1著


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