どこにも行かないで


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
窓から朝日が差し込む。
それはいつもと同じ朝で、でもいつもとは何か違う目覚めだった。
 
 
 
 
「ん・・・もう朝〜?うみゅう、なんかあんまり寝た気が・・・・あれ、フェイトちゃん?」
 
 
 
 
隣りを見ても、ベッドの中にフェイトちゃんはいない。
この時間なら、いつもはまだ部屋にいるはずなのに。
おかしいなぁ、今日用事あるって言ってたっけ?
特に思い出せないんだけど。
 
 
 
 
「って、うわ!?のんびりしてたら遅刻しちゃう!」
 
 
 
 
ぼーっとしてたから気付かなかったけど、結構よろしくない時間だったり。
 
 
 
 
「あ〜ん、遅刻したらはやてちゃんに叱られる〜!」
 
 
 
 
とりあえずは出勤をしてから、かな〜・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あ、おはようございます、なのはさん」
「おはようございます」
「おはようスバル、ティアナ」
 
 
 
 
食堂につくと二人とも朝食を頬張っていた。
朝からよく食べるね二人とも。
特にスバル、訓練の前にお腹壊さないか、なのはさんは時々心配なんだけど。
 
 
 
 
「スバル、あんた食べ過ぎ。なのはさんが呆れてるじゃない」
「えぇ〜そんなことないよ、ちゃんと腹拵えしないと身体持たないってば。あ、すいませーん、おかわりくださーい♪」
「「まだ食べるの!?」」
「うん♪」
 
 
 
 
これだけのエネルギーが、この身体のどこに消えてるんだろう・・・・すごい不思議。
 
 
 
 
「なのはさんも食べないと、身体持ちませんよ〜?」
「う、うんそうだね、何食べようかな・・・・」
 
 
 
 
考えても分からなそうなので、とりあえず保留。
ティアナも、テーブルに突っ伏しちゃったし。
私も注文しようと思いつつも、食堂を見回すが・・・・・
 
 
 
 
「いないな・・・・」
「・・・なのはさん?」
「あぁ、そのフェイトちゃんがいないなって・・・・・」
 
 
 
 
ちょっと気になっちゃって、という私の言葉に対して二人は首を捻る。
そして、発せられた言葉は予想外のものだった。
 
 
 
 
「あの・・・・フェイト・・・さん、て誰ですか?」
「なのはさんのお知り合いですか?」
「えっ・・・・・!?」
 
 
 
 
フェイトちゃんを・・・知らない?
え、だってフェイトちゃんは・・・・・
 
 
 
 
「あ、シグナム隊長、ヴィータ副隊長」
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「おぉ・・・・おいなのは、何惚けた顔してるんだよ」
 
 
 
 
ヴィータちゃんが怪訝そうな顔で聞いて来る。
でもその声はろくに私の頭に入らない。
だって、今スバルはなんて言った。
『シグナム隊長』・・・・スバルは確かにそう言った。
じゃあ・・・じゃあフェイトちゃんは?
ライトニングの隊長はフェイトちゃんでしょ?
 
 
 
 
「おはよ〜・・・・ってなんや微妙な空気やな」
「おはようございます」
「はやて〜、なんかこいつ変なんだよ〜」
「変〜って、なのはちゃんが?」
 
 
 
 
はやてちゃん・・・・そうだはやてちゃんなら・・・・・!!
 
 
 
 
「はやてちゃん!!」
「ど、どないしたんなのはちゃん?」
「はやてちゃん!フェイトちゃんがどこにいるか分からない!?」
「え、フェイトちゃん?」
「そう!!」
「うぅ〜ん、分からんな〜。本局かなんかの方なんか?」
「・・・・っ!!」
 
 
 
 
はやてちゃんの言葉に全身から力が抜ける。
どうして?どうして誰もフェイトちゃんを覚えて無いの?
 
 
 
 
「なんや夢でも見たん?なのはちゃん?」
 
 
 
 
夢・・・?そんな、だって・・・・・・!?
 
 
 
 
「ずっと一緒で、ここに来てからはずっと同じ部屋で・・・!!」
「・・・・おまえ何言ってんだよ、おまえの部屋一人部屋だろ?」
「・・・・っ!」
「なのはちゃん!?」
 
 
 
 
背中からはやてちゃんの声がかかる。
でも私は振り向く事なく、部屋へ向かって走る。
部屋につくと震える指でドアを開けた。
だけどやっぱり、そこにフェイトちゃんはいなくて。
その痕跡すらなくて・・・・・・知らず、涙が溢れた。
どうして、フェイトちゃんがいないんだろう?
他の誰が覚えて無くても、私はこんなにハッキリ覚えてるのに。
こんなに・・・・逢いたいと思っているのに。
 
 
 
 
「いやだ・・・こんなのいやだよフェイトちゃん・・・・・」
 
 
 
 
ここにいてよ、側にいてよフェイトちゃん・・・・・
 
 
 
 
「うくっ・・・フェイトちゃ・・・・っ」
 
 
 
 
フェイトちゃん・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・のは、・・・・・なのは
 
 
 
 
「なのは!!」
「っ!?」
 
 
 
 
瞬間、強烈な朝日に目を開く。
そして同時に聞こえる彼女の声。
 
 
 
 
「あ・・・・フェイト・・・ちゃん」
「・・・なのは、大丈夫?すごくうなされてたよ?」
 
 
 
 
視界に飛び込んできたのは、逢いたくて堪らなかった人。
フェイトちゃんの心配そうな顔だった。
 
 
 
 
「・・・・・フェイトちゃんっ!!」
「うわっ!ちょっ、なのは!?」
 
 
 
 
勢いのまま、フェイトちゃんに抱き付く。
最初は慌ていたフェイトちゃんだけど、
そのままフェイトちゃんの腕の中で泣き始めた私を見て、優しく抱き締めてくれた。
フェイトちゃんがここにいる、抱き締めていてくれる、その事実に私はただ泣き続けた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・落ち着いた?」
「ん・・・ごめんねフェイトちゃん」
「気にしなくていいよ。何か怖い夢、見たんでしょ?」
「うん・・・あのね、フェイトちゃんが、いなくなるの・・・・」
「私が・・・・?」
「それでね、誰もフェイトちゃんを覚えてなくて、部屋にも何にもなくてっ・・・!!」
 
 
 
 
思い出して、また涙が溢れてくる。
もう二度と飛べないかもしれないと思った時と同じくらい、うぅん、あの時よりずっとずっと怖かった。
 
 
 
 
「・・・・大丈夫だよなのは、私はここにいるから、なのはの側にいるから」
「フェイトちゃん・・・どこにもいかないで、ずっと側にいて・・・・・」
「うん、離れてって言われても、離してなんかあげないから」
「言わないよそんなこと・・・・」
 
 
 
 
そのままフェイトちゃんの腕の中で、ゆっくりと瞳を閉じる。
その温もりを確かめるように、夢ですら二度と離れないように、しっかりと抱き締めあって・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・で、それで何でこんなに遅れたん・・・・・」
「あ、あははは・・・・」
 
 
 
 
結局あの後、盛大に遅刻した私たちは、はやてちゃんの尋問の真っ最中だったりする。
目が笑って無いよ、はやてちゃん・・・・・
 
 
 
 
「それだけでこんなに遅れへんやろ、何してたん」
 
 
 
 
いや、何って・・・・ねぇ?
その、ギューってしてもらって安心したのはいいんだけど、
朝からあんまりよろしくない気持ちに、なっちゃったりなんかして・・・にゃはは・・・・・
 
 
 
 
「そこ!何笑うとるん!喋るまで許さへんからね!!」
 
 
 
 
はやてちゃんの怒声が部屋中に響き渡る。
その後、全部白状してお説教が終わるまで、正座で怒られ続けたし。
・・・・・ついでに減俸1ヶ月。
 
 
 
 
「あーん、はやてちゃんのケチんぼ〜」
「シャラップ!黙ってキリキリ働きっ!!」
 
 
 
 
いろんな意味で痛かった、そんな一日。
 
 
 
 
・・・・良いこともあったけど。
 
 
 
 
「・・・フェイトちゃん、部屋に戻ったらまた抱き締めてくれる?」
「うん、抱き締めるよ、何度でも・・・・・」
 
 
 
 
不安になったら、悲しくなったら抱き締めて。
ずっとずっと側にいて。
貴女がいることが、私の幸せなんだから・・・・・・

 

  
 

...Fin


 


あとがき(言い訳)

うーん、またなのはさんを泣かせてしまった(汗)
シリアス系では二人のうち、必ずどっちかを泣かせている気が・・・・ごめんなさい(平伏)
いや、でも最後はちゃんと甘めに仕上がってますよね、ね!(必死)

さてさて、なんだかんだで短編も10本目です♪
今までにないペースで書き綴ってますよ、ほんと。なのは熱恐るべし(笑)
今後は、お出かけする日とかは、申し訳ないんですが、日記とかのみの更新になるかと。
いや、さすがに予定のある日も・・・ってなると、ちょっと無理しないといけないので。
やっぱ義務的に書いちゃったら、それはもう発表すべきSSではなくなってしまいますので、
ペース配分を考えつつ、やっていきたいと思います♪

・・・ついでに、本日深夜にテレ玉で待ちに待ったなのは18話が放送です。
しっかりビデオにとって、がっつり見て、なのフェイ分補給して、どばーっと書きますよー!!(笑)

2007/8/2著


リリカルなのはSS館へ戻る

inserted by FC2 system