貴女だけを・・・・


 
 
 
 
 
 
 
 
初めて出来た友達で、
 
 
誰よりも大好きで、
 
 
そして誰よりも近しかった。
 
 
だから、ずっとずっと気づかなかった。
 
 
本当は、友達だけじゃ満足してなかったんだ、って・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
「なのは」
「あ、フェイトちゃん、今帰り?」
「うん、一緒に帰ろう?」
「あ・・・ごめんフェイトちゃん、私用事があるからまだ帰れないんだ」
「ん・・・そか、それじゃあしょうがないね」
「ごめんねフェイトちゃん、明日は大丈夫だから」
「わかった、じゃあなのは、また明日」
「うん、ばいばいフェイトちゃん」
 
 
 
 
そして交わされる笑顔、離れる指先。
一度は背中を向けた、そのはずだったのに。
 
 
 
 
いつもの学校、いつもの放課後。
今日は仕事もなくて、久々にゆっくりできる。
なのはから色好い返事がもらえなかったのは残念だけど、なのはにだって用事があるんだから仕方の無いこと。
 
 
 
・・・・普段ならそう思うところ。
 
 
 
でも、今日は違った。
気づけばなのはの後を追っていた。
どうしてそうしたのかは今でも分からない。
だけどその時、私は何かに突き動かされるかのように、ただなのはの背中を追いかけた。
 
 
 
 
しばらくすると、なのはは屋上へと進んでいった。
私は気づかれないようについて行き、屋上のドアを少し開けた状態でドアの影に身を寄せた。
隙間から見えるのは、なのは・・・・と、もう一人。
 
 
 
 
「ああ、来てくれたんだ高町さん」
「すみません先輩、お待たせしましたか?」
「いや、そんなでもないよ」
「そうですか、よかった」
 
 
 
 
和やかに進む会話。
相手の男性には私も見覚えがあった。
確か生徒会の役員で、少し前に私達のグループに、来期生徒会役員の勧誘で来ていたメンバーの一人だ。
といっても、アリサやすずかはともかく、
私達三人は管理局の仕事があるから、丁重にお断りしたのだけれど。
その後は特に接触も無く、今日まで来たはずなのだが・・・・・私が知る限りでは。
なのはが私の誘いを断ったのは彼との約束があったから?
 
 
 
 
「それでお話ってなんでしょうか?」
「ああ、うん・・・・」
「えっと、生徒会のお話でしたら・・・・」
「いや、違うよ。今日は僕個人の話なんだ」
「あ、そうなんですか?」
 
 
 
 
・・・・なんだろう、これ。
背中といわず全身に冷や汗の様な嫌な汗を感じる。
拳をきつく握り、耳を塞ぎたい衝動を必死にこらえる。
やめて、その先を言わないで・・・・!!
 
 
 
 
「うん・・・・高町さん」
「はい?」
「僕たちは知り合って、まだそう間もない。だけど・・・・」
「・・・?」
「・・・・僕は、君のことが好きなんだ、僕と付き合って欲しい」
「先輩・・・・」
 
 
 
 
もう、ダメ・・・・っ!!
これ以上聞いていられなかった。
私はなのはの返答も待たずに駆け出した。
一刻も早くこの場から逃げ出したくて、一目散に階段を駆け下りる。
既に大半の生徒が帰宅していて、誰もいない廊下を駆け抜けて下駄箱まで辿りつく。

そこまでが限界だった。

下駄箱を背に、私は足元から崩れ落ちた。
震える身体をそのままに、心臓の音以外聞こえない頭で必死に考える。
さっきのは、なに?
どうして彼がなのはに・・・・
本当は思い出したくも無いのに、つい先刻目にした光景が何度も目の前を流れる。
『・・・僕は、君のことが好きなんだ、僕と付き合って欲しい』
耳を塞いでも消えてくれないその言葉が、重く私に圧し掛かる。
あの後、なのははなんと答えたのだろう。
断った?それとも・・・・・
 
 
 
 
「・・・・っ!・・・ぁっ!」
 
 
 
 
彼を受け入れるなのはの言葉に、言いようの無い恐怖が全身を駆け巡った。
閉ざした唇からは押し殺した嗚咽が、瞑った瞳からは涙が溢れた。
嫌だ、なのはが彼を受け入れるのが、他の人を受け入れるのが。
私以外の誰かを選ぶのが、嫌だ・・・・・・・
だって、だって私はっ・・・・!!
 
 
 
 
「・・・っ・・なのは・・・・・・!」
 
 
 
 
名前を呼んでも答えてくれる人はいない。
私は何をしているんだろう?
わざわざ後を追って、覗き見までして、勝手にショックを受けている。
こんなことになって、ようやく自分の気持ちに気がついて・・・・・
 
 
 
 
「ほんと・・・・なにしてるんだろ、私・・・・・・」
 
 
 
 
時が止まったかのような空白の中、涙だけがただ流れ続けた。
 
 
 
 
「なのは・・・ごめん・・・・・私、なのはが好きなんだ・・・・・・・・」
 
 
 
 
唇から零れた真実は、誰に届くこともなく、そのまま闇の中へと消えていった・・・・・
 
 
 
 


...Fin


 


あとがき(言い訳)

えー、ついに『魔法少女リリカルなのは』にまで手を伸ばしたキッドです、ごきげんよう♪
しかも第一弾から超シリアスです・・・・・って、っちょ、石!石を投げないでー!? ⌒●(ノ>_<)ノ

だってだって、最初にご降臨されたのがこのネタだったんだも・・・きゃー! 〓● C= C=┌(;>_<)┘

と、とりあえずこれはこれとして、ちょびっとリリなの的?に、次回予告行きます!!
 
 
 
【予告】

知らなかった、こんな表情をする彼女を。

知らなかった、こんな風に声を荒げる彼女を。

知らなかった、こんなにも想われていたことを。

・・・そして、こんなにも彼女が苦しんでいたことを・・・・・・・
 
 
次回予定SS 『貴女だから』 を、お楽しみに!
 

2007/7/18著


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