世界の果てまで4














夕日に染まる森と城。
ふらふらとなのはが飛んで来たのは自身の居城であった。
 
 
 
 
「うぅ……結局戻ってきちゃった……」
 
 
 
 
フェイトとの出会いから続いた鬼ごっこの日々。
なんだか気がつけば、既に四カ月くらい西へ東へと彷徨っていた気がする。
長かった様な短かった様な……
 
 
 
 
「友達いなくなったらどうしよう……」
 
 
 
 
あっちこっち逃げ回ったのはよかったが、その余波による被害は甚大だ。
いくらトラブルメーカーと称されることのあるなのはであっても、ここまでの被害がでたのは初めてだ。
客観的に見れば別に大して何か起きた訳ではないのだが、騒がしいという点においては過去最大級に違いない。
 
 
 
 
「まぁ、うん……とりあえず、ゆっくり寝よう……」
 
 
 
 
ここまできたら対策とか今後のことはもう後回しで構わない。
今はただゆっくりと休みたい。
いっそもう1××年くらい寝ちゃったっていいかもしれない。
 
 
 
 
「そしたらフェイトちゃんだって諦めるとか以前の問題だs」
「お帰りなのは♪」
「…………」
 
 
 
 
バタンッ!!
 
 
 
 
「えぇぇぇっ!? ちょ、なんでいきなり閉めるのなのはっ!?」
 
 
 
 
あなたがいるからです。
 
 
 
 
「あけてー、あけてよなのはぁ〜……」
 
 
 
 
ドンドンバンバン、内側から叩かれる窓を外側から抑えるなのは。
逆だろ普通。
 
 
 
 
「ほら、ちゃんと掃除もして換気もして料理も作って……メインディッシュに私だってあるんだよ!」
「むしろメインディッシュがダメだから!?」
「そんなっ! ちゃんと入浴も済ませたよ!?」
「意味分かんないよっ!?」
 
 
 
 
窓の中と外で続く激しい攻防。
見てる分には何してんのこいつらだが、当人たちはものっそい真剣だ。
それはもう生きるか死ぬかの勢いで。
実際になのはの方は違う意味で身の危険が全開すぎて冗談抜きに必死である。
 
 
 
 
「え、意味ってそれは……」
「説明してくれなくてもいいから!!」
「……えぇぇーー……」
「……なんでそんなに不服そうかなぁ、もぉ……」
 
 
 
 
はぁぁ〜……と深い溜息をつくなのは。
そんななのはの様子にやはりフェイトは不服そうにしている。
見かけはどうあれ、フェイトにしたって実は結構必死なのだ。
 
 
 
 
「まったく……」
「やっと中に入ってきてくれたねなのは♪ さぁ愛の抱擁……もぷっ」
「ここ、私のお城なんだけどなぁ……」
 
 
 
 
このままでは結局埒があかないと見たなのはは、とりあえず窓を開けて部屋の中へとその身を滑らせる。
ぱぁっと瞳を輝かせるフェイト。
うっ、と怯んだのも束の間、いそいそと伸ばしてきたフェイトの両手を叩き落とし、
ついでに本人のおでこに対し直角に手刀を入れるのもなのはは忘れない。
これくらいで引いてくれる相手ではないと知っているけど、何もしないのはもっと悔しい。
 
 
 
 
「うぅ……酷いよなのは、こんなになのはのことを愛しているのに……」
「だからそう言われても……」
 
 
 
 
何気に痛かったのか、少し赤くなった額を抑えながらぐずるフェイト。
チョップは力が強すぎただろうかと思ってしまうなのはは、なんだかんだ言ってやっぱり甘い。
そしてその甘さが命取りだったりする。
 
 
 
 
「はぁ……ねぇ、もうそろそろ終わりにしようよ、フェイトちゃん」
「……なのはは、私のこと、嫌い……?」
「……嫌いじゃないよ」
「だったら……」
「でも、置いて行かれるのは嫌なの……」
 
 
 
 
種族の壁、と言ってしまえばそれまでだが、愛で越えられるものと越えられないものは存在する。
どれだけフェイトがなのはを愛していたとしても、寿命ばかりはどうにもならない。
 
 
 
 
「なのは……」
「フェイトちゃんは、先にいなくなっちゃうんだよ……」
 
 
 
 
――独りぼっちなんて、そんなの嫌だよ……
 
 
 
 
「……それってつまり、ずっと一緒にいられるなら私でもいいってこと?」
「……は?」
「……なんだそっかー、それならそうとはやく言ってよなのは〜♪」
「は、え、えぇ?」
 
 
 
 
そっかそっか、なら問題解決だねー♪ ……なんて明るく笑うフェイト。
いやいやだからちょっと待て。
誰もずっと一緒ならいいとか一言も言ってないし、そもそもずっと一緒とか無理でしょフェイトちゃん!?
……そんななのはの心の声にフェイトはにっこり笑って言った。
 
 
 
 
「大丈夫だよなのは」
「いや、あの、だからね、ちっとも大丈夫じゃ……」
「それより、ほんとにずっと一緒なら私でもいいのなのは?」
「それも言った覚えがないけど……」
「答えてよなのは」
「うぅぅ……」
 
 
 
 
ぐっと詰め寄ってくるフェイトにのけぞるなのは。
なんだってこう無駄に押しが強いのか。
……確かにフェイトのことは嫌いじゃない。
見た目だって十分OKな範囲だ。
……でもそもそもときめきを片っ端からぶっ壊しているのもフェイトだったりするのだが……
 
 
 
 
「なのは?」
「う、うぅぅ……ぃ、ぃぃょ……」
「え?」
「だから、その、も、もし本当にフェイトちゃんがずっと一緒にいてくれるなら……それでもいい、よ……?」
「――!? なのはっ!!」
「にゃぁぁっ!?」
 
 
 
 
まぁ嫌いじゃないし、そもそもどうせ一緒にいるとか無理なんだし……
とか思いながら言ったなのはに、フェイトは思いっきり抱きついた。
すぐ近くにある体温に少しだけ鼓動が跳ねる。
 
 
 
 
「好きだよなのは、愛してる……」
「ふぇ、フェイトちゃん……」
「なのは……」
「……って、どどどどどうして顔近づけてくるの!? 第一フェイトちゃんは後数十年で……!!」
「……え?」
「え……?」
「……死なないよ?」
「……はい?」
 
 
 
 
調子にのって、んー♪と顔を近づけてくるフェイトを慌てて抑える。
だけどフェイトはなのはの言葉に、かっくんと首を傾げた。
つられるようになのはも首を傾げる。
そう、後数十年で……死なないらしい。
……って、なんで!?
 
 
 
 
「ど、どうして!?」
「言ってなかったっけ?」
「なにを……?」
「だって私、龍族だもん」
「……ふぇ?」
 
 
 
 
だから寿命だってなのはとそんなに変わらない、むしろちょっと長いくらいだよー♪
……そう言って爽やかに微笑むフェイト。
背景とかもキラキラして見えるが、どうしてかなのはにだけは黒さ全開の笑みに見える。
言ってなかったっけ?――聞いてない……どころか意図的に言わなかった節がある。
喋ったのはこうしてなのはから言質を取ったからに違いない。
 
 
 
 
「う、うううそ……」
「嘘はついてないよ? ……なのはが勘違いしてるみたいだったから別に言わなかっただけで」
「――!?」
 
 
 
 
……やっぱり確信犯だった。
 
 
 
 
「な、な……!?」
 
 
 
 
口は災いの元。
でもそれ以前の問題だとなのはは思う。
 
 
 
 
「これで明日から一緒に暮らせるね、よろしくねなのは♪」
 
 
 
 
……こうして、どこかの世界のどこかのお城で、ヴァンパイアと龍族という世にも珍しいカップルが誕生したのであった。

めでたしめでたし。
 
 
 
 
「め、めでたくないよ!!」
「あ、龍族は性欲強いから頑張ろうねなのは?」
「……ふぇ?」
「それじゃあ早速……いただきます☆」
「え、ちょ、まっ……ふ、ふにゃぁぁぁぁぁぁーーーー…………っ!?」
 
 
 
 
その日、なのはの叫びは森を突き抜け山の先まで響いたのであった……



 
 

...終わってしまえ☆ 
 
 


えーっと……なんだかすごく阿呆な話になってしまいましたが一応これで終わりです。
さんざん待たせてこれかよ!って感じですがまぁうん、これがうちのクォリティであばばばwww
たまには押しまくるフェイトさんが書きたいと思って書いたけど、
押しが強いって言うよりネジが飛んだフェイトさんになった気がします。
……まぁいいか(ぇ)
これについてはアフターをUPしようと思ってます。
だいたい想像つきそうな日々のお話になると思いますけど、ねww
またのんびりとお待ちいただければと思います〜♪

2011/4/10著


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