世界の果てまで3














そうして流れに流れ、なのはが辿りついたのは。
 
 
 
 
「というわけで今だったらもう誰でもいい感じだからしばらく置いてはやてちゃん!」
「誰でもいいんかいっ!!」
 
 
 
 
これまたヴァンパイアの親友、八神はやての居城であった。
ここに辿りつくまでにそれはもうあちこち飛び回ってはみたのだが……
ものの見事に全てフェイトに発見されて、ついに一番来たくない場所へと来るはめになってしまった。
ちょおひどいんちゃうー?とかぶーたれるはやて。
仲はいいが、なのはにとって長居したいかどうかはまた別の次元にある問題なのだ。
主にこの家主の前においては。
 
 
 
 
「まー、なのはちゃんやったらいくらでも歓迎やけどなー♪」
「ありがとうはやてちゃん♪」
「んだよー、面倒事ぐらい自分で片づけろよなー」
「あぅ、わ、私だってそうしたいけど……」
「あはは、まぁヴィータはなのはちゃんとしばらく一緒に暮らすいうんが照れくさいだけやから、気にせんでええよ〜」
「そうなの、ヴィータちゃん?」
「なっ! ぜ、絶対ちげー!」
「いつまでたってもヴィータは照れ屋さんやな〜」
「えへへ〜、ありがとうヴィータちゃん♪」
「はやて! だから違うって……なのはおまっ、……あぁもう、くっつくなー!!」
 
 
 
 
あからさまにトラブルを持ちこんだなのはに対して、渋い顔をするヴィータ。
一度はしょんぼりしたなのはだったが、はやての言葉で怒るヴィータに抱きついた。
さすがに今回は迷惑をかけている自覚はあるので、本当に嫌がられてたらどうしようと思っていた。
 
 
 
 
「ったく……まぁなんだ、とりあえず、その面倒くさい奴を追い返すなりすればいいんだろ」
「うん……ごめんねヴィータちゃん……」
「まぁここはあたしとシグナムがいれば鉄壁だからな、ザフィーらやシャマルもいるし。心配すんな」
「うん♪」
 
 
 
 
頼りがいのあるヴィータの言葉にキラキラと瞳を輝かせて頷くなのは。
いくつだよおめー……、とかいうヴィータの心の声が聞こえ無かったのは幸いだろう。
ゆうに×××歳は越えているが、人間換算であればまだちゃんと十代なのだから。
乙女に年齢の話が禁句なのは、人間だろうと他の種族だろうと変わらないのだ。
 
 
 
 
「せやからなのはちゃんはなんも気にせんと、のんびりしてくれたらええんや」
「うぅ、ほんとにありがとうはやてちゃん。なんてお礼を言ったらいいか……」
「気にせんでええて、お代は胸で払ってくれたらえんやから♪」
「出来ることはなんでも……胸?」
「胸♪」
 
 
 
 
これぞ下界の仏様!とか一瞬崇めかけたなのはは、やっぱりここに来たことを後悔した。
ものすごくいい笑顔でわきわきと動くはやての両手。
張り付いた笑顔のまま後ずさるなのは。
フェイトの時とはまた違う意味で貞操の危機だ。
 
 
 
 
「あはは、いややなぁなのはちゃん、なんで逃げるん?」
「あはは、な、なんでだろうねぇ……」
 
 
 
 
じりじり。
ずりずり。
減らん減らん。
減るとか違う。
なんて器用に目だけで会話しつつも攻防は続く。
 
 
 
 
「来る前に分かっとったことやろ?」
「いや、まぁ、そうなんだけどね……」
「増やしたるから♪」
「これ以上は別に……」
「誰のおかげでそこまで増えたと……」
「はやてちゃんのおかげじゃないから」
 
 
 
 
関係性がゼロではないかもしれないが、とりあえずなのはの胸は自然発生である。
伸び悩んでる時期ならともかく、今はもうこれ以上必要ない。
もっとも、そんな理由ではやてが諦めるはずもないのだが。
 
 
 
 
「……なのはちゃん、ここで私に大人しゅう揉まれるかそれとも出てくかの二択やで!」
「そんな理由で追い出すのっ!?」
「私にとっては十分な理由なんやぁぁぁっ!!」
 
 
 
 
さぁ!と胸に迫るはやて。
微妙に色々と悩むが逃げるわけにもいかないなのは。
試しにちらっと視線だけでヴィータに助けてみたがダメだった。
わりぃ、と苦笑され、だよね、と半泣きで返す。
ここにいようと思ったら毎日こうなるのだろうか……これはこれで憂鬱だ。
 
 
 
 
「うぅぅ……」
「ふふふふ……観念したようやななのはちゃん」
「で、できればほどほどに……」
「ほどほどっちゅー文字はただいま休業中や♪」
「休むのっ!?」
「むふふ〜……ほんなら、本日の一揉み目や〜っ!!」
「にゃぁぁぁぁぁっ!?」
「その一揉み待ったぁぁぁぁっ!!」
 
 
 
 
万事休す、と覚悟を決めかけたなのはにはやてが飛びかかる。
しかしそれを遮るように、開け放たれた扉の向こうから声が上がる。
まさか、と思うと同時に扉の向こうからは颯爽とフェイトが現れた!
状況が状況だけに、うっかりフェイトちゃんカッコいい!とかなのはが思うようなタイミングだった。
……しかし、そもそもフェイトが元凶でこんなことになっていることを忘れてはいけない。
そしてフェイトは叫んだ。
 
 
 
 
「そのおっぱいは私のだっ!!」
 
 
 
 
カッコよさ台無し。
 
 
 
 
「……ていうか、本当にどうして私のいる場所が分かるのフェイトちゃん?」
「それはもちろん……愛の力だよなのは!」
「愛ってすごいんだね……」
 
 
 
 
例え世界の裏側にいたって辿りついてみせるよ!とか胸を張るフェイト。
どうやら愛があればなのはがどこにいたって分かるらしい。
愛ってとっても素晴らしい。
……迷惑だけど。
 
 
 
 
「ちょお、なのはちゃん魂飛ばしとらんと戻ってきてや〜」
「うぅ、ほっといてはやてちゃん、私だって現実逃避くらいしたいんだから……」
「いや逃避しても現実やし……くっ、それにしてもシグナムがやられるやなんて……」
「遅くなりました主はやて、客人をお連れしました」
「こうなったらヴィータと私で……って、なんでおるんシグナム?」
 
 
 
 
遠い目をして窓の外を見つめるなのは。
もうすっかり気分はあの空の向こう側にいっている。
それでもはやては親友を、ひいてはそのおっぱいを守るため、ヴィータとともにデバイスをフェイトへと向けた。
外のシグナムの警備を破って侵入してきた相手だ、油断すれば全滅もありうる、と。
しかし、そんなはやての決意をひっくり返すような暢気さで、扉の向こうからはシグナムが現れた。
それもフェイトのことを客人、と言いながら。
はやては首を捻った。
一体なぜシグナムはぴんぴんしてるのにフェイトがここにいるのだろうか?
 
 
 
 
「私シグナムに外の警備、お願いしたはずなんやけど?」
「はい、承りましたが……?」
「せやったらなんでフェイトちゃんがここにおるん?」
「は……? え、いえ、もし客がきたら相手をして丁重にもてなしてやれ、と主が仰いましたのでそのように……?」
「んがっ!?」
「いや〜、さっきのはいい勝負でしたねシグナム。是非また今度手合わせをお願いしたいです」
「うむ、実に心躍る勝負だった。またいつでもくるがいい、テスタロッサ」
 
 
 
 
キラッ、と爽やかな笑みを交わすフェイトとシグナム。
どうやらはやての言葉を額面通りに受け取ったシグナムは、きっちり勝負をしてからフェイトをはやてのもとへ連れてきたらしい。
持って回った言い回しをしたのが悪かったのだが、なのはの話を聞いてなおそこまで素直、もといバカ正直に受け取るとは思わなかった。
さすがシグナム。
でもはやてはちっとも嬉しくない。
 
 
 
 
「シグナムのどあほぉぉぉっ!! 揉み損ねたなのはちゃんのおっぱいの代わりに後でたっぷり揉んだるわぁっ!!」
「はっ!? ななな、なぜそのようなお話に……っ!?」
「知らん! たまには頭使って自分で考えっ!!」
「……まぁ頑張れ、おっぱい魔人」
「ヴィータ!? って、誰がおっぱい魔人だ!!」
「あぁーあ、胸にばっか栄養いってて頭に回ってないって嫌だよなー。おいなのは、気持ちは分かったからいい加減戻ってこいって」
「うぐ、えぐ、ほっといてヴィータちゃん、私はあの空の彼方に飛んでいくんだからぁ〜……」
 
 
 
 
ぐすぐすともはや半泣きで窓の外を眺めるなのは。
ぽんぽんと肩を叩くヴィータに余計うるっときてしまう。
あぁ、さようなら私の平和。
 
 
 
 
「なのは……」
「ぐす……フェイトちゃん……」
「えっと、その……」
 
 
 
 
真面目に半泣きな状態のなのはに、さすがのフェイトもちょっとだけ居心地が悪そうにする。
色々笑顔で突っ走ってはきたけれど、涙にはどうしたって弱いのだ。
例えそれで引く気がなくとも。
 
 
 
 
「うぐぐ……ごめんななのはちゃん、うちのシグナムがえらい阿呆で……」
「……ううん、気にしないではやてちゃん」
「ちょお待っとってや、すぐに追っ払ったるからそしたら揉ませて……」
「騒がせちゃってごめんねはやてちゃん、出てくよ私」
「豊胸マッサージにも劣らぬテクニックで……って、なんやて?」
「ヴィータちゃんもごめんね、今度また遊びにくるね」
「……お前がそれでいいならいいけどよ……」
「うん、やっぱりちゃんと自分で決着つけないとダメだよね」
「いや、別に、頼ってくれてもええんちゃう? ほら、あれや、まだ揉んでない……」
「じゃあまたねはやてちゃん、色々ありがとう」
「え、あ、うん、ほな…………シグナムぅぅぅぅっ!!」
「あ、主、先ほどから何故お怒りに……え、あの、その手は一体……うわぁぁぁぁっ!?」
 
 
 
 
散々あちこち、逃げて逃げて逃げまくったのに追いかけてきたフェイト。
はやてのところにまで来てダメだったのだから、やはり自分でなんとかするべきなのだろう。
ぐすん、とまたちょっぴり泣けてくるけど、なのははそう決意した。
そしてそうと決まれば早い方がいい、とはやてとヴィータに言葉をかけると、なのはは再び空へと舞い上がる。
主はやてお許しをー!とか、揉まいでかぁーっ!とか聞こえてくるけど、きっとあれも八神家の触れ合いの一つに違いない。
微妙にシグナムが可哀相な気もするが、やらかしてくれた部分もあるので、とりあえずなのはは聞こえなかったことにした。
何より今は自分のことで手一杯だし。
そんななのはの哀愁漂う後姿を、フェイトは周りの喧噪の中ただじっと見つめ続けているのだった。



 
 

...To be Continued 
 
 


あけおめことよろ♪
ごめん、終わらなかったよorz
でもこれは私のせいじゃなくてはやて師匠が出張ったせいdぐはっ(ラグナロク

2011/1/21


リリカルなのはSS館へ戻る

inserted by FC2 system