第十三話『なのは様、全力全開!』

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


「閣下……」
「戻ったか、ディオニス……首尾は上手くいったようだな」
「はっ、閣下から賜りましたこの力は本当に素晴らしい……!! 封じられている状況下でありながらこれだけの力を使えるとは……復活すれば世界を統べることも夢ではありますまい……っ!!」
 
 
 
 
高揚を抑えられず熱に浮かされたような口調でそう語るディオニス。
その目の前には彼の雇い主である元老院議員、そして巨大な石像が置かれていた。
石像……そう、それこそが『鍵』を求めている者の正体だった。
五十年もの月日を深海で過ごし、今再び地上へと姿を現した災厄の象徴。
 
 
 
 
「かつて四つの国を滅ぼし東大陸を焼き尽くした邪竜ツヴァイフルンク……この力を使って我らがこの世界の王になる!」
「ふむ……」
 
 
 
 
一度はなのはとナスティの失策により統治者への道が閉ざされたディオニスにとって、それはまさに夢の様な話だった。
何物にも縛られない力。
何者をも地に伏させる力。
それが全て自分の物になるのだ!
……そう、思っていた。
この時まで。
 
 
 
 
「ご苦労だったなディオニス」
「閣下……っ、次は、次はどうすれば……!!」
「次は、無い」
「…………は?」
 
 
 
 
最初、ディオニスは言われたことが分からずに動きを止めた。
次は無い、とはどういうことなのか?
後は邪竜を復活させ世界を統べる様を見ていればいいということなのか?
けれどそんな期待は、暗く歪んだ議員の瞳を見て儚く消えた。
 
 
 
 
「言葉通りの意味だ。お前がこの世界を統べる事は無い。もとより邪竜の復活と海底神殿の浮上に合わせてツヴァイフルンクの力を解き放つ。文明など残るまい」
「ば、馬鹿な……なぜそのような事を……」
「我らを否定した世界など、いらぬ」
 
 
 
 
ニィッと議員の口の端が持ち上がる。
冗談で言っているわけではない。
本当にそうするつもりで、いや最初からそうするために利用したのだ。
ディオニスも元老院も――関わるもの全てを。
 
 
 
 
「約束が違う! 王になりたくないかと問うたのは貴方だろう!!」
「そうだ、だから地上の王として先んじて捧げるがいい。……ツヴァイフルンクの血肉となれ」
 
 
 
『Exploit』
 
 
 
「な、何を……ぐ……あ、あ……あぁぁぁっ!?」
 
 
 
「……喜べ、貴様は神にも等しきツヴァイフルンクの一部となったのだ……美味いかツヴァイフルンク? もうすぐ、もうすぐだ……我らの悲願は果たされる……さぁ始めよう、最後の宴を、この世界の終焉を……!!」
 
 
 
 
虹色の宝玉を受け入れたツヴァイフルンクが身を震わす様に光を放つ。
目覚めた時が世界の終わり。
 
 
 
 
「汚れた世界に我らが神の洗礼を!」
 
 
 
 
五十年の時を経て復讐は果たされる。
眦から零れた雫に、議員は気がついていなかった……



...To be Continued

2012/6/19著


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