第九話『なのは様、呪われる!』 「ふぅ〜ん、セレネって人がねぇ〜……どんな人だっけ?」 「ディザ領で執政官の付き人しとった……って、覚えてないんかい」 「え、いや、うーん……だって私、たぶん会ったことないよ?」 「何言うてるん、夜会の時に……行かんかったんやっけ……ごめん」 「正確には行けなかっただけどね……」 そう言ってぷるぷるとなのはは拳を振るわせた。 いつぞやのアリサの仕打ちを思い出してしまったらしい。 「んー、まぁ夜会なんて行ってもそんなおもろないし……」 「まぁね、あんまり可愛い子いないし……いや、うん何でもないよ?」 チャキッと立てかけてあったシュベルトクロイツを手に取るはやてに、なのはは慌てて言葉を濁した。 別に浮気なんてする気はなのはにはない。 単に可愛い女の子とお茶するのが趣味なだけなのだ。 「まぁほら、無事に宝玉も手に入ったし、これで後は首都のクラリオンで承認もらって、アギ・リニ渓谷で最後の宝玉を回収したら巡礼も終わりだね」 「む、話戻しよって……まぁええけど。ここまで比較的巻きできとるから、日数にも余裕があるしな」 「うん……こっそり海鳴に戻る分には何にも問題ないからね♪」 承認さえもらっちゃえばこっちのものだ。 言外にそう言っているなのはにはやても苦笑しながら頷いた。 やはりなのはも気が付いている。 あまりのんびりしていられない事態が進んでいるであろうことに。 「……で、そこで丸まってしくしく言うてるんは、何?」 「フェイトちゃんの残骸」 「壊れてないよ!」 「ネジは随分飛んでたけどな」 話題に上るまでずっとぐすんぐすんと丸くなっていたフェイト。 あの後、遅い時間になってから宿に戻ったなのは達は、遅めの夕食を食べようやく部屋に上がってきたとこだった。 ちなみにもちろん、今はやてと話しているなのはに犬耳と尻尾はない。 だからこそフェイトがいじけているとも言えるのだけど。 「まったく、酷い目にあったよ」 「うぅ、なのはったら酷いんだよ、私に向かってシューターどころかバスターまで撃ったんだよ?」 「……私もライオットで追いかけられるとは思わなかったからね……」 「それはまた……」 戦闘時でさえ滅多に使うことがないライオットブレードまで持ち出すあたり、フェイトの本気っぷりが半端ない。 それに対してなのはがシューターとバスターにとどめたのは、それこそ愛ゆえにだろう。 でもなのはは次のフェイトの言葉で、スターライトブレイカーを撃たなかったことを後悔する。 「まぁ確かに可愛かったけどなぁ……」 「でしょう! せっかく上手くいったのに祓い落しちゃうなんて酷いよね!!」 「「……ん?」」 「あ……」 ぺろっとフェイトの口から飛び出す真実。 若干の沈黙を挟んでゆらぁっとなのはが立ち上がる。 そして身の危険を感じたフェイトが逃げる間もなく、なのはは猫科の肉食獣を思わせる動きで飛びかかり、フェイトをベッドの上に縫い付けた。 怯えるフェイトに向かって極上のキラースマイル……ただし今日は目が笑っていないけど。 「フェイトちゃん」 「ああああ、あのなのはこれにはっとってもふかいわけ」 「いただきます」 「ごめ……ふむぅっ!?」 きゃーなのは許してー、とか、問答無用なの!とか、いう声をBGMにはやては早々に明日の準備にとりかかる。 今回は完璧に自業自得だし、なんのかんの言ったところでフェイトは幸せだろうからほっとくつもりだ。 頃合いを見て参戦しよう。 「胸は私が揉むから残しといてなー?」 「はーい♪」 「いやぁーーっ!?」 その夜、なのは達がいつになく遅い就寝になったことは言うまでもない。 「うぅぅ……なのはとはやての、ばか……ぐすん」
...To be Continued
2011/6/19著
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