奇跡と呼ぶには儚くて エピローグ














「じゃあなのはちゃん、私達は先に帰るね」
「相変わらずあたし達は昼の時間、あんまり合わないのよね〜」
「あはは、でもアリサちゃんはこの後すずかちゃんの手料理をごちそうになるんだよね」
「あんたはまたそう余計なことを……」
「え、嫌なの?」
「そっか、アリサちゃんはなのはちゃんのご飯の方がいいんだね……」
「い、言ってないじゃないそんなこと!?」
 
 
 
 
だからあんた達がタッグを組むと嫌なのよー! と叫ぶアリサちゃん。
アリサちゃんがすずかちゃんに弱いのは知ってるけど、なんで私も加わるのがダメなんだろう?
 
 
 
 
「うふふ、ごめんねアリサちゃん?」
「う……いいわよ、もぉ……」
 
 
 
 
そっぽを向いて答えるアリサちゃんに、私とすずかちゃんは顔を見合わせて少し笑う。
なんだかんだいって、私達の中でアリサちゃんが一番可愛いんじゃないだろうか?
こういうのなんて言うんだっけ……えーっと……
 
 
 
 
「確か……つんでれ?」
「な、なのはちゃんそれはいっちゃ……」
「……ふ、ふふふふ」
「え、あ、ご、ごめんアリサちゃ……」
「とっとと裏庭でもなんでも行きなさいこの天然大魔王!!」
「わわわっ!?」
 
 
 
 
怒りのオーラと共に叫ぶアリサちゃんからダッシュで逃げだす。
天然大魔王とかひどいよ〜、とは思うけど、これ以上とどまって怒らせると次の小テストが怖いから迷いはしない。
……いや、だってアリサちゃんのテスト用ノートすごいんだもん。
 
 
 
 
「はぁはぁ……うぅ、なんで大学内でこんなに走らなくちゃいけないんだろう……」
「あれ、なのはさん?」
「ん? あ、スバル、ティアナ」
 
 
 
 
構内を突っ切って裏庭まで辿りついたところで、ようやく足を止めて息を吐いた。
慣れない運動は急にすると体に堪える……いや、まだ若いけど、さ……
そうして辿りついた裏庭には先客がいて、テラスのテーブルにスバルとティアナがお弁当を広げていた。
 
 
 
 
「こんにちはなのはさん」
「なのはさんもお昼ご飯ですか?」
「うん、私はもっと奥でだけど……あ、美味しそうだねそのお弁当」
「なのはさんもそう思いますよね! これ全部ティアが作ってくれたんですよ〜♪」
「え、ほんとに? 凄いねティアナ」
「い、いえ、なのはさんのお弁当ほどじゃ……」
「もぉほんと愛してるよティアー!!」
「ちょ、ば、抱きつくなー!?」
 
 
 
 
あれからまたいくつか季節が過ぎて、出会いの季節を通り過ぎた。
後輩として入学してきたこのスバルとティアナも、お昼休みにここで出会ったのが縁だった。
やはり煩わしいことを嫌ったティアナがここで食事を取り始めたのだけど、
いつの間にかスバルもくっついてくるようになってしまったらしい。
なんでもティアナが作ったデザートのスイーツが原因だったとかなんとか……歴史って繰り返すのだろうか、と思ったのを覚えている。
 
 
 
 
「あはは、相変わらず仲がいいね」
「出来れば相手くらい選びたいんですけどね」
「えぇっ!? ひ、ひどいよティア〜」
 
 
 
 
しれっとそう言うティアナにスバルがちょっと情けない声をあげる。
でもお姉さんはしってるんだよティアナ。
そのバックの中に特製デザートがしまってあることを。
ふふふふ。
……まぁ、昨日作り方を教えてほしい、って言ってきて、うちで作ってったからだけど。
 
 
 
 
「ふふ……じゃあ私はもう行くから」
「あ、なのはさんもこれからお昼だったんですよね、お引きとめしてすみません」
「気にしなくていいよ」
「えと、大丈夫ですよ、たまには待たせる方がいいのよ! ってギン姉も言ってましたから!」
「……いや、それは相手によると思うんだけど……」
「馬鹿に何を教えてるんですかギンガさん……」
「あはは……」
 
 
 
 
げんなりと呟くティアナとよく分からないという顔をするスバルに手を振って、私はテラスをあとにする。
目指す場所は裏庭の一番奥。
いつもの場所。
一年前からずっと通い続けた場所で、半年前のあの時から特別に変わった場所。
 
 
 
 
「……どうして出会ったのかな」
 
 
 
 
広い裏庭には、他にもお昼をとれそうなスペースはたくさんある。
それこそ茂みの奥のスペースだっていくつかあった。
だけど、あの人が辿りついたのは私のとこで……
 
 
 
 
「卵焼きが結んだ縁、っていうのがちょっとしまらないけどね」
 
 
 
 
知りあって、友達になって、仲良くなって……喧嘩もして。
そうして再び迎えた新緑の季節に、一年前を思ってしまう。
風に揺れる金糸の髪、鋭く光る紅い瞳。
運命なんて大きなものではなくて、いつ切れてしまってもおかしくないような細い糸。
人と人の関わりなんて、そんな風に脆くて、いつ切れて崩れてしまうかも分からなくて。
だけど、この手から零れてしまうのは悲しくて。
 
 
 
 
「……なのは」
「フェイトちゃん……」
「遅かったね、何かあったなのは?」
「……ううん、何もないよフェイトちゃん」
 
 
 
 
だからこそ、大切にしなければならないのだと教えてくれた。
 
 
 
 
「んー……フェイトちゃん!」
「え? ……うわっ!?」
「えへへ……フェイトちゃんあったかい」
「もぉ……急に飛び込んできたら危ないよなのは」
 
 
 
 
たくさん笑って、たくさん泣いて。
言葉を交わして、指先を繋いで、少しずつ細い糸を紡いでく。
貴女の中に私がいて、私の中に貴女がいる未来を目指して。
 
 
 
 
「大好きだよフェイトちゃん」
「うん……好きだよなのは、もう君を離さない」
 
 
 
 
この想いだけが、きっと私達の導になるから。
 
 
 

...Fin

 
 


あとがき(言い訳)

終わった途端次の原稿のデスマーチが始まっているキッドです、ごきげんようww
奇跡と呼ぶには儚くて、HP版もこれにて完結とさせていただきます〜。
今回のお話、どうだったでしょうか?
無職になって時間ができたのをいいことに、ちょっと気合いをいれて書かせていただきました。
小説を書き始めた頃の勢いだけが売りの文章より、今の方が成長できていたらいいなと思います。
二人のお話はまだまだ続くと思いますが、これ以降は皆さんのご想像におまかせします♪
機会があれば第二部とか書くかもしれませんがww
ではでは、ここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございました。
これからもうちのなのはさん達を愛してくださると嬉しいですww

2010/6/23


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