Who is a partner?






 
 
 
 
「ねー、そっちもっとライト照らしてー!」
「絵里ちゃん綺麗だにゃー!」
 
 
 
 
ぱたぱたと撮影に走り回る皆の姿をぼんやり眺める。
今日の撮影はドレス姿。
それだけでも胃が痛い……もとい大変なのに、
そのうえ更に……ウェディングドレスまでこなしてもうぐったりだった。
……そして何より。
 
 
 
 
「お疲れ様海未ちゃん」
「ありがとうございます……恨みますよことり……」
「えへへ、だって皆素敵なんだもん」
 
 
 
 
悪びれもせずにこーっと笑う幼馴染みは相変わらず凶悪なまでに可愛らしい。
彼女の『お願い海未ちゃん』でこんな格好までしてしまえる自分が時々憎らしいくらいだ。
 
 
 
 
「……本当に恨みます」
「海未ちゃん?」
 
 
 
 
撮影に追われる皆の姿。
その中心で今日の主役であるあの人が振り撒く笑顔。
綺麗、美しい、そんなありきたりな言葉だけでは言い表せない輝きを見せる彼女。
……あぁ本当に、貴女のウェディングドレス姿なんて見たくなかった。
 
 
 
 
「いえ……いいリハーサルになりました」
 
 
 
 
私がそう言うとことりの眉尻がぐっと下がって。
 
 
 
 
「……海未ちゃん……へたれさんだね」
「ぐっ……」
 
 
 
 
どすっと重量級の言葉が落ちてきた。
ことり、不意のボディーブローは痛いです。
 
 
 
 
「だってへたれさんなんだもん」
「……返す言葉もありません」
 
 
 
 
項垂れる私の頭をことりがくすくすと笑いながら撫でる。
優しい手つきは今撮影の真っ最中のあの人とは似て非なるもの。
ぽむぽむ、と時おり軽く叩かれては私を促がす。
 
 
 
 
「……海未ちゃんは、もっとわがままになってもいいんだよ?」
「……出来ませんよ、そう簡単には」
 
 
 
 
私には家がある。
守らなければならない人達がいる。
その中に貴女の笑顔も入れたいはずなのにそれが苦しい。
……いつか見るのだ。
今日みたいにウェディングドレスに身を包んだ彼女の笑顔を。
知らない誰かの手を取って歩く貴女を。
 
 
 
 
「……じゃあ、そんな海未ちゃんに魔法をあげる」
「ことり? ……もぷっ」
「着替えて海未ちゃん?」
「これは…」
 
 
 
 
叶わない夢の切れ端。
残酷だと思うのに今一番私が望んでいるものでもあるそれに着替えて袖を通す。
 
 
 
 
「……うん、やっぱり海未ちゃんはカッコいいね」
「……恐縮です」
「きっと絵里ちゃんだってメロメロだよー」
 
 
 
 
そんなはずがないと分かっていてもことりの言葉に少しだけ笑顔を取り戻す。
 
 
 
 
「あ、ちょうど撮影終わったよ。海未ちゃん行って?」
「……ありがとうございます、ことり」
 
 
 
 
恨みますよことり、でも貴女に最大級の感謝も共に。
 
 
 
 
「はーい、お疲れ様でしたー」
「お疲れ様ー」
 
 
 
 
お疲れ様が響く中をずんずん進んで彼女の下へ。
皆が驚いた顔をして私を振り返るけど私は立ち止まらない。
ちょうど違う方を向いていて私に気づいていない絵里に足早に近づくと、
人の気配に振り向こうとした背中を思い切り抱き締めた。
 
 

 
 
「……!? う、み……?」
「……絵里」
 
 
 
 
華奢で柔らかい身体。
ずっとずっと欲しかったそれに滲みそうになる視界をぐっと堪える。
 
 
 
 
「う、海未? ど、どうしたのその格好…?」
「……貴女を拐う為に」
「えっ……!?」
「……冗談ですよ」
 
 
 
 
軽口を叩けば一瞬の間の後に頬を染めた彼女にもうっ!と抱き締めた腕を叩かれる。
それでも引き剥がそうとはしないから、私は期待をいつまでも捨てられない。
 
 
 
 
「なんやなんや、海未ちゃんカッコええなー」
「ちょうどいいからこれも撮っちゃいましょ」
「ちょっとにこ!?」
「え、もう撮っとるけど?」
「希っ!?」
 
 
 
 
私の腕の中で狼狽える絵里。
仕掛けるのはいつも貴女の方なのに、自分がされるのは弱いのですね。
そう思ってくつくつと笑っていたらジロリと絵里に睨まれた。
あぁダメですよ、そんなに紅い顔でそんな表情をされても愛しさしか募らない。
 
 
 
 
「……うーみー?」
「はい」
「……ばか」
「はい」
「ばかうみ」
「はい」
 
 
 
 
くつくつ、ぽかり。
笑い続ける私にもうっと拗ねて私を叩く。
それでもなおこの腕はほどかれない。
 
 
 
 
「まったく……特別よ?」
「……はい」
 
 
 
 
幸せで幸せすぎて、胸が痛い。
 
 
 
 
「……海未?」
「……絵里」
 
 
 
 
でも私は、貴女に幸せになって欲しいんです。
隣に私がいなくても。
 
 
 
 
「絵里……笑ってください」
 
 
 
 
笑顔で見送る自信はないけど。
その日まで私が貴女を守るから。


...Fin


あとがき(言い訳)

twitterでかゆさんが描いた絵におしゃべりしながらくっつけたものですー☆
園田、園田さんがスーツ!絢瀬さんがスクフェスのドレスゥゥゥ!と叫んだ結果こうなりました(マテ)
後で絢瀬さん編も描きたいなーと思ってるけど、相変わらず遅筆なのでなんともはや;
とりあえずかゆさんから掲載OKもらったんでPixivと併せてこちらにも投下〜。
タイトルは絢瀬さん編で対になる、予定(笑)

2014/6/13著


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