桜の花が咲く頃に@酒盛り






 
 
 
 
窓から桜が見えるんですよ。
きっかけはその一言。
じゃあお花見が出来るわね!と、
電話が切られた一時間後には新居の私の部屋で酒盛りが始まっていた。




「……ごめんなさい」
「……いえ、絵里のせいではありませんから」




だから気にしないでください。
……そう笑いかけても余計落ち込んでしまってどうしたものかと天を仰ぐ。
視界に映るのは自室の天井……ではなく楽しげな翡翠の瞳。
あぁはい、すべて計画通りということですね分かります。




「……希」
「海未ちゃん全然飲んでないやん、ほらぐいっと一献」
「未成年にお酒を勧めるってどういう神経ですか……」
「今年二十歳やない?」
「一年近く先ですよ」
「にこのお酒が飲めないって言うの!?」
「飲めません」
「ノリが悪いわよ!」
「悪くて結構です」




楽しげに蓋を開けたビール缶を押しつける希と煽るにこ。
ぴしゃりと言ってのけると「希〜、海未ちゃんが堅い〜」「あはは、にこっち酔っ払いやな〜」なんて言いながら二人でまた新しいお酒を開ける。
その足元に転がる空の缶やら瓶やらおつまみやらがこの惨状を物語っている。
一体いつの間にこれだけの量を開けたのか。
絵里と二人でちょっと黄昏ている間にすっかり主犯の二人は出来上がっていた。




「ほんとにごめんなさい……」
「いえ、ですから絵里のせいではないと……」
「でも、私、うみに、きらわれちゃったら……っ」




訂正。
既に絵里も出来上がっていました。




「嫌いません、というかあり得ませんからそんなこと……って、あぁほら、泣かないでくださいよ……」
「ぐす……ほんとに?」
「ほんとです」




嘘じゃない?
嘘じゃないです。
約束?
約束です。
はりせんぼん?
千本でも万本でも。
海未大好き。
私も好きですよ絵里。



そこまで言ってようやく絵里が笑ってくれた。
いつものふわっとしたものでもニコッとしたものでもなく形容するならふにゃって感じに。
誰ですかこの可愛い生き物。
私の恋人です。
襲いますよ襲われたいんですねどうして二人っきりじゃないんですか本当に。




「それはうちとにこっちがえりちと既に飲んでたからやー♪」
「このにこにー様とお酒を飲めるんだからありがたく思いなさい!」
「お帰りください」
「海未ちゃん酷いっ!?」
「海未ちゃんエロい!!」
「相手は選びますご心配なく」




途端にまた、えーっ、と上がる不満の声にうんざりと口がへの字になる。
だいたいふにゃふにゃな絵里を抱きしめてることのどこがいけないんですか。
脱がせるどころかキスだってしてませんよ主に貴女達がいるせいで。
そもそもお酒に強い絵里がこの状況とか、来る前にどれだけ飲んでいたのかと考えるだけでも恐ろしい。




「大したことないわよ」
「ワイン二本……を、えりちが一人で開けただけやから〜」
「大したことですよね十分に!?」




いくらお酒に強い、と言っても一人で飲み続ければ簡単に酔いが回る。
ワインって意外と度数高いんですよ、知ってますよね。
それを一人で二本とかアルコールの血中濃度はいかほどか。
普通の人間なら酩酊状態か泥酔状態になっていてもおかしくない。
むしろ強いからこそ一人で歩けたのだろうし今もこの程度ですんでいる。




「だって勝手に飲んだのよ」
「海未ちゃんとの夜はどんななん?」
「って、聞いたら後はもう飲み放題」




やっぱり元凶は貴女達ですかそーですか。
絵里もなんだってお酒に逃げるんですか。
きっとしどろもどろになりながら真っ赤な顔で飲んでいたんでしょうけど、私がいないところでそんな可愛い顔をしないでください。




「で、どんななん?」
「絵里が今より更に可愛いですが何か」
「奇遇やな、うちのにこっちも可愛いで」
「ちょっと待てこらスピリチュアル」
「そうですかでも絵里には敵いませんよ当然ですね」
「こう見えてにこっちは脱いでもにこっちのままなんやで!」
「普通は脱いだら凄いじゃないのねぇっていうか黙りなさいよ!?」
「にこっち……ふっ」
「鼻で笑われたーーっ!?」




絵里は脱いでも凄いですよそれはもう。
きぃーっ、と希をびしばしと殴るにこも可愛いですが絵里には敵いません圧勝です自然の摂理ですね私にとって。




「そろそろ食前酒はいい頃合いではないですか」
「そやな、そしたら私らは撤収するわ〜」
「は、え、待ちなさいなんでにこが抱えられて……」
「ほな海未ちゃん楽しんでな」
「ええそちらも、ごきげんよう」
「い、いやぁぁぁーーっ!?」




よっこらしょーと抱えられここにきて酔いが醒めたにこが暴れても希は意に介さない。
むしろ喜んでますよね希?
逆効果ですよと思っても口には出さない、獲物は君だよというやつですね。
助けませんよオフコース。
ほななーと、とてもいい笑顔で希が出ていきにこの悲鳴が遠ざかるとようやく部屋に静寂が訪れた。




「まったく……騒がしい人達ですね」




やれやれと首を振って腕の中の愛しい人に視線を移す。
やけに静かだと思えば案の定、恋人はすやすやと私の腕の中で眠っていた。
安心しきった安らかな寝顔、首元に擦り寄る頭。
襲いますよ冗談抜きで。
寝てても起きてても破壊力は抜群だ。




「桜どころじゃないですね」




ひらりひらり、桜が舞う。
散る姿は美しく。
儚く短い一時の春の夢。
ならばどんな姿であっても私を酔わせる貴女の方が魔性と言うにふさわしい。
閉じられた空色に囚われた私は昼も夜も季節も関係無く貴女を求めずにはいられない。




「今日は帰しませんからそのつもりで」




眠る貴女に囁いて抱きしめる。
そんな私にぴったりな言葉は『花より団子』に違いない。


...Fin


あとがき(言い訳)

リリマジ&僕ラブお疲れさまでした〜。
ラブライブ島が凄すぎてろくにお買い物も挨拶もいけませんでしたよよよ。
知り合いのとこだけ突撃して、あとはひっそり素敵サークルさんに、
いつもPixiv見てますとか応援してますとかそれくらいでした私のへたれ。
某のんたぬさんが可愛すぎたり某ことうみさんが美味しすぎたり、
でもうちえりうみとのぞにこ多いわ怒られちゃうかしらと心の中で思いつつ自重しません愛ゆえに。
美味しい物はなんでも遠慮なくいただきます。書く分には比較的マイナー書きたい症候群。
三年生組の書きやすさが異常なんです、マリみての旧三薔薇様思い出しました一月か二月までくらいで二期はお願いしますすす。
そして出だしの四行から本当はえりうみのほほんラブのはずだったのになぜ酒盛りになったのか。
書けそうだったら@四月馬鹿編も書きますよん。
連載系はしばしお待ちを、穂乃果さんが迷子になったせいでもうしばらくかかります(ぇ
真姫ちゃぁぁん!はツンツンタイムなのでもうしばらく(ry
途中なのフェイも投下したいのに全部書き途中で止まってますあっはっは。
まぁそんな感じでぼちぼちとお付き合いくださいませ〜☆

2014/4/5著


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