ほのぼの、初(?)デート!〜春の足音すぐそこに・・・・〜 祐巳ちゃんの機嫌も直り、やってきたのは、さっきのところからバイクで少し行った場所にある 『○×公園』である。この公園には立派な桜並木があり、春になれば美しい花を咲かせてくれる。
その桜並木を祐巳ちゃんと手をつなぎのんびりと歩く。 残念ながら今の季節、まだ花は咲いていないが、こうして二人で歩くのは悪くない。 普段ならまだ花が咲いていないせいか、ここにいてもどこか淋しく感じるのに、 こうして祐巳ちゃんと一緒に歩くと淋しさなど微塵も感じない。不思議なものだ。 「どうかしましたか、蓉子さま?」
知らないうちに笑っていたらしい。祐巳ちゃんが小首を傾げつつ尋ねてきた。
「いえ、ただこうして歩くのも悪くないなって」 「そうですね〜お花見しながらもいいですけど、こんなのもいいですよね〜♪」
祐巳ちゃんはそう言いながらつないだ手をぶんぶん振りながら歩く。 そんな少し子供っぽい行動さえも微笑ましい。
「楽しそうね。」 「はい♪蓉子さまと一緒ですから♪」
うっ・・・・!か、可愛い・・・・ こちらを見上げながら満面の笑顔でそんな事言うなんて・・・
「そうね、私も祐巳ちゃんと一緒だから楽しいわ」 「えへへ・・・」
私は内心の動揺を悟られないようにしながら言葉を返す。 祐巳ちゃんは私の言葉に嬉しそうに微笑むと、またつないだ手を大きく振りはじめた。 そのまま一緒に桜並木を歩く。こんな風にのんびり過ごすのもいいものだ。 今日は穏やかな(初)デートになりそうだ。
・・・・もちろん、このまま何も(邪魔が)無ければだけど・・・・
一方その頃、お邪魔虫の一団・・・・失礼、もとい山百合会ご一行様は・・・・?
「令ちゃん助けて〜!!」 「よ、由乃ぉ〜!!」 「私の銀杏ー!!」 「ちょっと!なんだって公園内にゲリラトラップなんて仕掛けてあるのよ!!」 「知らないわよ!私に聞かないでちょうだい!!」 ・・・・なにやら凄い事になってます。
「令ちゃーん!!」 「由乃ぉー!!」 「銀杏―!!」
「くっ・・・やるわね蓉子・・・・」 「親友にこんな仕打ちをするなんて・・・・」 足元どころか回り中が要注意区域と化した公園内。 迂闊に動けばトラップに引っ掛かり、物が飛んできたり、今の由乃さんのように逆さまに宙吊りにされてしまいます。 そして極めつけは落とし穴。ポピュラーですが大変使いやすいトラップのひとつです。
「それにしても・・・」 「ええ・・・この落とし穴は酷すぎるわ・・・・」
それは先程ギリギリで回避した落とし穴。 深さは3メートル程と落ちれば怪我をしかねないが、落とし穴としてはさほど深い方ではない。 では一体何が酷いのかと言うと、その落とし穴の底に敷き詰めてあったのはなんと・・・
「銀杏―――――――!!!」 だったのです。 「だめよ志摩子!!銀杏目当てに自分から飛び込むなんて向こうの思う壺よ!!」 「離してくださいお姉さま!!私の銀杏が!!」
落とし穴の底にある銀杏は、いつ志摩子さんの物になったのでしょうか?
「全ての銀杏は私の物です!!」 さいですか(汗) 「いざ行かん我が銀杏の元へ!!」 「志摩子ぉ〜・・・!!」
すでにあっちの世界に旅立っている志摩子さん、そして聖さまは令さま化が進んでます。
「このままじゃまずいわ・・・・私が何とかしな・・・い・・と・・・?」
もはや使い物にならなくなった4人の分まで頑張らなければならない江利子さま。 そんな江利子さまの視界にある物が映ります。
なんと、そこにはあまりにもその場に似つかわしくない、
『麗しの蓉子さま、秘蔵写真集!!Photo by 武嶋蔦子』
が、木々の間に吊るされていたのです。 そしてそれを見た江利子さまは・・・・
「即ゲットー―――!!!」
喜んでその身をささげました。
「銀杏〜♪」 「正気に戻りなさい志摩子!・・・・って、江利子、危ない!!」 「・・・・・えっ?」
志摩子さんに気を取られつつも、慌てて江利子さまに注意を促す聖さま。 しかし、時既に遅し! 江利子さまが幅跳びの選手顔負けなジャンプ力で、見事に写真集を引っ掴み着地したその瞬間・・・・・!!
メキョ!!バキィィィィィ!!! と、強烈な破砕音をたてつつ地面が崩れました。 どうやらここら一体が巨大な落とし穴だったようです。 つまり江利子さまと志摩子さんが誘導され、3人分の圧力がかかった事により、 地面は脆くも崩れ去ったのです(というかそういう仕掛け) 「何やってるのよ江利子!そんな見え透いた罠に引っ掛かるなんて・・・・って、臭っ!」 「何言ってるのよ聖!こんなおいしい物をどうやって見過ごせって・・・・銀杏臭っ!!」
3人が落ちたとこ、つまり落とし穴の底には当然銀杏が敷き詰められています。 はっきり言って臭いです。めっちゃ臭いです。超〜絶!臭いです。
「銀杏が大量――――!!♪」
・・・・一部の方には大好評ですが。
「くっ臭い・・・で、でもこの苦痛に見合うだけの戦利品が私の手の中に・・・!」 「つ、辛い・・・どうでもいいから早く開きなさいよ江利子・・・・うぐぅ・・・」 「ふ、なによ、聖だってホントは見たいんじゃないの・・・・ぐはぁ・・・」 「そりゃあね・・・こうなったらもう、少しでもおいしい事がないと・・・はぅぅ・・・」 「そ、そうよね・・・この苦しみに見合うだけの安らぎを求め・・・・いざ!!」
ガバァ!!っと、期待に胸を躍らせながら、 勢いよく開いた写真集の中には蓉子さまのお姿が・・・・!? ・・・・・ん?無い?・・・・はて? この本写真集は写真集なのですが、 中の写真は蓉子さまではなく替わりにあったのは・・・!?
それを見て、慌てて江利子さまは写真集のカバーを取り外しました。 『聖さまのセクハラな日々♪ Photo by 武嶋蔦子』 ・・・・・・・・・・・・・・・・(汗) 「・・・・こんなもんいるかぁぁぁぁぁ!!!(ビリィィィィ!!)」 「あぁっ!!」 「ふん!!(バシィィィ!ゲシッ!ゲシッ!グリグリ・・・)」
ぶち切れた江利子さま、聖さまの写真集を真っ二つに破り捨て、 ありったけの怒りを込めて踏みつけながら銀杏もろともすり潰します。
「うわあぁぁぁ!!何しやがるこのデコォォォ!!」 「うるさい!!私の蓉子を返しなさい!!」 「知るか!そんなもん!それより私と天使達の薔薇色の日々を返せ!!」 「なにが薔薇色よ!セクハラのオンパレードじゃない!しかもほとんど祐巳ちゃんだし!」 「十分薔薇色じゃない!!祐巳ちゃんへのセクハラこそが我が命!!」
などと、かな〜り不毛で突っ込みどころ満載な言い争いをするお二方。
江利子さま、『写真集』が抜けてます。っていうか蓉子さまはいつ貴女のものに? 聖さま、祐巳ちゃんへのセクハラを命と言い切れちゃうあたり、 ともて貴女らしいのですが、色々と問題があるかと思われます。 ・・・・・等々、その他突っ込めるんですが、身の危険を感じるので私は逃げます。 まぁ頑張ってください聖さま、江利子さま、お二人とも明日があるといいですねぇ〜(ぇ) 「やるかこのデコ!!」 「のぞむところよアメリカ人!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
「ゴゴゴゴゴ・・・?」 「今なんか聞・こ・・え・・・?」
「・・・・・・お姉さま、江利子さま・・・・」 「し、志摩子・・・・」 「・・・・・(ジーーーーーーー!)」 「ちょっと志摩子、いったいどうしたって・・・・?」 「・・・・・(ジィーーーーーー!!)」 「・・・・なんかいつぞやの江利子を思い出すわね・・・・」 「蓉子は見てて飽きないもの・・・・あなたと違って」 「ケンカ売ってるだろこのデコ!」 「だからさっきからのぞむところだって言ってるでしょこのアメリカ人!」
「・・・・江利子さま。」 「何、志摩子?止めないで欲しいんだけど」 「・・・・ひとつお聞きしたいのですが・・・・」 「なにかしら?」
「・・・なぜ私の銀杏がお姉さまの写真ですり潰されているのでしょうか?」
「うっ・・・・そ、それは・・・」 「・・・・・志摩子、大事なのは銀杏だけなの?」 「他に何か?」 「・・・・・・」
「とにかく!!そのすり潰した銀杏の回収も手伝っていただきます!!」 「ええぇぇぇ!!」 「こ、このすり潰した中に手突っ込んで回収しろって言うの!!」 「当たり前です!!さぁ、さっさと回収しますよ!!」
「たかが銀杏の外側が潰れたぐらいでそんなに怒らなくても・・・・(ボソ)」 「バ、バカ、江利子!」 「・・・・(ピクリ)・・・・・たかが・・・・銀杏・・・・?」 「(ヤバッ)いや、ほら、中身は無事なんだし・・・・」
「すり潰された事には変わりありませんわ!!!!」
「し、志摩子落ち着いて・・・・」 「そ、そうよ志摩子、冷静に話しあいましょうよ。」 「フフフフフ・・・・お姉さま、江利子さま、 どうやら事の重大さを、身をもって知っていただく必要がありそうですね・・・・」 「いや、知りたくないっていうか・・・」
「我が銀杏の恨み!!」
「ちょっ、まっ・・・・」
「銀杏!!アタァァァァーック!!!」 「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
合掌。
「あら?作者ことキッドさん、戻っていらしたんですか?」
うん、とりあえずお怒りは発散したみたいだし。 にしても強烈だね、志摩子さん。 ・・・・・まさか銀杏の中に頭だけ出して、縦に埋めるとは思わなかったよ。 (この二人生きてるか?) 「そうですか?ほんとは頭も埋めようかと思ったのですが・・・・・」
・・・・私のSSで殺人事件はやめて。 「まぁお二人にはしっかり反省していただくとして・・・さぁ、作業を始めましょうか♪」 ・・・・ええっと、そう言いながらニッコリ笑って袋を差し出すのはなぜでしょう? 「あら、だってお姉さまも江利子さまも動けないから、手が足りないじゃないですか♪」 動けないっていうか、動けなくしたんじゃ・・・・ 「・・・・・・・(ニッコリ)」 お手伝いさせていただきます(泣)
つーか、私、作者だよね、ねぇ?なんでこんなに扱い悪いの・・・・? 「日頃の行いのせいかと」 がーん 日頃の行いダメ出しですか、マリアさま?
ところ変わってこちらは、ほのぼの&ラブラブ♪なお二人。
「あ、見てください蓉子さま、お魚が泳いでますよ」 「あ、あっちには亀が重なってる」 「あ、こっちにはアメンボが」
等々、祐巳ちゃんはボートの上でこの上なくご機嫌な様子。 自然、私の頬も緩む。
「蓉子さま♪」 「ん?何かしら祐巳ちゃん。」 「・・・・・(カムカム)」
・・・・?カムカムと手招きをする祐巳ちゃん。 とりあえず私が近寄ると・・・・引き倒された。
「きゃっ」 「つっかまえた♪」 「もう、いきなり何するよ祐巳ちゃん」 「えへへ♪」
どうやら私を膝枕したかったらしい。 してやったり、と嬉しそうに笑う姿もまた愛しくて。
そのまま横になっていると祐巳ちゃんが私の髪を撫で始めた。 大切な物に触れるようにそっと、優しく。 その手の動きが心地良い。私はゆっくりと目を閉じた。 「寝ちゃだめですよ、蓉子さま。お昼寝は芝生の上でするんですから♪」 「分かってるわ、こうして祐巳ちゃんの手の感触を楽しんでるだけ」
そんな甘い穏やかな時間はゆっくりと過ぎていく。 今日は本当に良い日だ。 ・・・・・・良い日、なんだけど・・・・・
「・・・・平和ね」 「・・・・平和ですね」 「・・・・平和すぎるわね」 「ええ、ほんとに・・・・」
・・・・おかしい。 願っても無い事だが、なぜこんなに平和なのだろう? そろそろ人並み外れた感覚で、聖達がここを嗅ぎ付けてもおかしくないのに・・・・・
「何にも起こらないわね。まぁその方が嬉しいけど・・・・」 「そうですね♪とりあえず私も何も感じませんし・・・あ、でも・・・」 「何?祐巳ちゃん?」 「あ、いえ、たいした事じゃないんですけど・・・その、何か見られてるような気がするんですよね・・・・・」
「△□公園」某所
「・・・・あら?気が付くなんて・・・・さすが私の妹だわ」
そう呟いたのはご存知、小笠原祥子さま。 祐巳ちゃんと蓉子さまを追って学園を出たはずの祥子さま。 なのになぜ違う公園内の車の中にいらっしゃるのでしょうか? ・・・・・ハッ!と言う事は、 祥子さまを目印に追いかけてきた聖さま達はまったくの無駄足だったのでは・・・・?
「ええ、そうよ。そしてあのトラップを仕掛けたのも私よ・・・ちょっと、銀杏臭いわよ、もう少し離れてちょうだい」
あぅ、すみません・・・・さっきまで銀杏臭の中で作業してたもので・・・・ しかし、なるほど、あのえぐいトラップを仕掛けたのはあなたでしたか(納得) でも一体なぜ聖さま達の足止めみたいな真似を?
「そうね・・・・餞別・・・かしら?後少しで卒業されてしまうお姉さまへの・・・」
蓉子さまの為にそこまでするなんて・・・・・素晴らしいです祥子さま!!
「それに私のコレクションも増えるし(ニヤリ)」 ・・・・・は?
「ああもう、祐巳はなんて可愛いのかしら。 あ、ちょっと2カメずれてるわよ!しっかり祐巳を撮りなさい!!まったくもう・・・」
・・・・・よく見たらそこは、 どこぞのテレビ局の一室のように沢山のディスプレイがあり、 祐巳ちゃん(と蓉子さまも少し)が映っている。 えっと、コレクションっていうのはまさか・・・・ 「コレに決まっているでしょう?」 『祐巳の日常&百面相集(映像版)』
・・・・・・・・・・・
「ちなみに写真版もあるのよ。もちろん蔦子さんから進呈されたものだけど」
・・・つまりお餞別は名目で、実際の目的は祐巳ちゃんコレクションの増加だと・・・・
ええっと、とりあえず・・・・・さっき言葉を撤回してもいいですか? 「あら、祐巳ったらあんなところに転がって・・・」
画面ではいつの間にかボートを降りた祐巳ちゃんと蓉子さまが、 芝生の上でくつろいでいる。 なんとも微笑ましい光景を目にして祥子さまが一言。
「後であの一角を持って帰らないと・・・・・」
・・・・・・・・・
そしてまた「○×公園」
ゴロゴロ
「やっぱり気持ち良い、このまま眠っちゃいそう・・・・・」 ゴロゴロ 「いいわね、こういうのも・・・・今日は祐巳ちゃんのおかげで新発見が一杯ね」 二人で芝生に寝そべりながらそんな会話を交わす。 こうしている事がこんなに良いなんて思わなかった、ほんとに今日は新発見だらけだ。
「・・・・・蓉子さま」 「何、祐巳ちゃん?」 「また来ましょうね・・・・・」 「ええ、そうね。今度は桜が咲いた頃にしようかしら」 「約束ですよ・・・・春には桜吹雪の中で、夏には新緑の中で、 それから秋には紅葉の中を歩いて、そして冬になってもまた桜並木を散歩するんです」 「一年中来れるわね」 「ちゃんと二人で来るんですからね・・・・二人で、一緒・・に・・・・・」 「祐巳ちゃん・・・・ええ、約束するわ」 「・・・・・zzz」 「大丈夫、春も夏も秋も冬も・・・あなたと、一緒にいるから・・・・」
まだ冬の気配が残る公園内、しかし春の足音を感じさせるようなうららかな日差しの中、 二人の(初)デートはこうして過ぎて行ったのでした・・・・
しかし皆さま、憶えておいででしょうか? 蓉子さまが使った今回の切り札の存在を。 あの貸切券のおかげで幸せな時を過ごした祐巳ちゃんと蓉子さま。 しかしながらその券を使ったことが、 新たなる騒動を巻き起こす事を二人はまだ知らないのでありました・・・・
それはまだまだ先の事だけど、きっと何があっても二人なら越えていけると信じて・・・
『ほのぼの、初(?)デート!』 Fin♪
あとがき(言い訳)
皆様ごきげんよう、暑さに負けましたキッドです。 というか・・・すんません!!m(_ _)m(平伏) あ〜もうなんていうか・・・・散々お待たせしてこの出来栄えって・・・(汗) なんかねぇ今回はかなり壊れ系(多分私が一番壊れ系) つーか私の扱い酷すぎです。笑いを狙って書いてるんならまだしも、 何時の間にかキャラ達から無下に扱われるという・・・ある意味ほんとに泣けてきます・・・ でもまぁこれでとりあえずデート編完結です。 ところで今微妙に忙しいんで活動方針で悩んでます。 この後は閑話休題&美月さんのお誕生日SSを書く予定。 そしたらいよいよホワイトデーです!!蓉子さまの貸切券です!!(私が欲しい!!) ・・・・えっと、でも予定は未定なんでどうなるか分かりません(汗) 蓉×祐シリーズは原作の流れに乗りつつ蓉×祐路線にしてるわけですが・・・・ なかなか書くのに時間が要ります(私には)。と言う訳で、 ひょっとしたら短いお話を続けるかもしれません。 まったく別物として違うCPも書くかも・・・・? まぁ今後も創作活動は続けていくんで、皆様生暖かい目で見守っててくださいm(_ _)m ではではまたそのうち、ごきげんよ〜(キ^^)ノ
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