幸せはひとつじゃない!
 


 
 
 
 
 
 
 
「蓉子さま・・・・・」
「ダメ」
「いえ、でもですね・・・・」
「ダメったらダメ」
「だけど・・・・」
「絶っ対にダメ」
「・・・・・」
 
 
 
 
そんな拗ねた顔で見上げてもダメなものはダメ。
・・・・純粋に可愛いので、ついつい負けそうにはなるのだけれど・・・・・・
 
 
 
 
しかし、
 
いくら可愛い祐巳ちゃんのお願いでも、そうやすやすとOKを出すわけにはいかない。
 
 
 
 
だってその身体は、もう祐巳ちゃん一人のものではないのだから・・・・・・
 
 
 
 
「でも蓉子さま、適度な運動はした方がいいんですよ?」
「そう言って、また危ないことになったらどうするの?」
「それはそうですけど・・・・・・」
 
 
 
 
祐巳ちゃんの気持ちもわからなくはない。
いくら身体を大事に、とは言ってもそのためにストレスを溜め込んでは本末転倒である。
普段の私なら軽い運動くらいなら、むしろ積極的に取り入れるだろう。
そう、あくまで普段通りならば。
だが残念なことに現状は普段通り、とはかけ離れているのである。
なぜならばつい先日、祐巳ちゃんは倒れたばかりなのだから。
だいぶ落ち着いてきたとはいえ、一時は母子ともに危険な状態にまでなったのだ。
心配するなと言う方が無理な話である。
この間など土砂降りの雨の中を走って帰ってくるし・・・・・
後日、妊娠が発覚した時など、血の気が引いたものだ。
それでも最近は気をつけていたのだが・・・・・・・
私が外出していた際、実家で来客の対応をしていて倒れたのだ。
知らせを聞いて駆けつけた病院では、
 

「最悪の場合お子さんの方はあきらめることに・・・・・」
 
 
と告げられて、
 
 
「どっちも助けなさい!!」
 
 
と、医師につめよってしまった。
 
 
だが幸いなことに無事に危険な状態は脱し、
ようやく家に帰ってきたというのに、また病院送りになられてはたまらない。
過保護だのなんだのと言われようが、祐巳ちゃんと子供の安全一番に考えなければいけないのだ。
 
 
 
 
「とにかく、もうしばらくは安静にしててちょうだい」
「うー・・・・・わかりました。でもそのかわり、一緒にいてくれますよね?」
「えぇ、もちろん・・・・"貴女達"と一緒にいるわ」
「えへへ・・・・・蓉子さま大好き!」
 
 
 
 
"貴女達"と言った意味を、祐巳ちゃんはきちんと理解してくれたようだ。
嬉しくなって飛びついてきた祐巳ちゃんを、包み込むように抱き締めたその時、
 
 
 
 
ゲシ
 
 
 
 
「・・・・」
 
 
 
 
「あ、今動きましたよ蓉子さま!」
 
 
 
 
えぇ・・・・・私にもはっきりとわかったわ。
なにせ、祐巳ちゃんのお腹越しに蹴り飛ばされたのだから。
この私、水野蓉子を足蹴にするとはいい度胸だ。
きっと祐巳ちゃんに似て大物に違いない。
 
 
 
 
「元気ですね、よかった〜」
「ふふ、そうね。でも元気過ぎて産まれてからが大変かもね」
「そうですね・・・・・でもまずは無事に産まれてくれないと」
 
 
 
 
その通りだ。
産まれてからの心配もさることながら、その前段階からして前途多難なのは間違いないだろう。
・・・・・・だって祐巳ちゃんと私の子供だし。おまけに周りが周りだし。
それでも私達"三人"なら、きっと乗り越えてゆけると、そう信じて・・・・・そっと祐巳ちゃんを、
今度は蹴られないように"反対側"から抱き締めた・・・・・
 
 
 
 
ドゲシッ
 
 
 
 
・・・・はずだったのに・・・・・・・・
 
 
 
 
「あ、今度はこっちで動きましたよ♪」
「えぇ・・・・・」
 
 
 
 
とってもよくわかったから大丈夫よ、祐巳ちゃん・・・・・
わざわざ蹴られないように避けたのに・・・・・・・ぐすん。
まったく、この私を二度も足蹴にするなんて・・・・・・ん、足蹴?
と、そこでふと気がついた。
今のもさっきのも、間違いなく足だった。ただし、蹴られた位置はほぼ真逆である。
右足と左足で蹴るにしても、位置が離れるぎている。
と、いうことは、まさか・・・・・・・・
 
 
 
 
「・・・・・祐巳ちゃん」
「はい」
「明日病院に行ってみましょうか」
「・・・・へ?」
 
 
 
 
きょとん、としている祐巳ちゃんが愛しくて、私は祐巳ちゃんと"この子達"を抱き締めた。
私のこの予感はきっと当たっている。
それはつまり、更に前途多難な日々になるということ。
でも大丈夫。
きっと"四人"でなら、最高の日々になるに違いないのだから・・・・・・
 
 
 
 
 
後日、病院にて予想通りの吉報を知らされるのは、また別のお話・・・・・・
 
 
 

・・・・fin
 
 


あとがき(言い訳)

ごきげんよう皆様!7月中に仕上がりませんでした!!(ダメじゃん!1)
いや、書きあがってはいたんですが、編集とUP作業に時間がかかりまして・・・すみませ〜ん(^^;)
さてさて、今回のお話は七夕の安産祈願から続いてるんで、当然赤ちゃん絡みのネタになります。
んで、ここでちょっと訂正とお詫びを。
リクSSのあとがきで、リクSSと七夕シリーズを時系列的にリンクさせると言いましたが・・・・
諸々の事情により撤回させていただきました。
なぜか?
それは口調の違いです。
いや、いつまでも『蓉子さま、祐巳ちゃん』な二人も好きですし、『蓉子、祐巳』って呼び合ってる二人も好きなんですが・・・・
その辺の問題上リンクさせるのは、あえて、諦めました。
だって、
 
どっちかに統一しちゃったら、両方の口調や接し方の二人を見れなくなっちゃうじゃないですか!!(ぇ)
 
※(□゜⊂〓(`´蓉)
 
蓉「またそんな妄想を読者様に振りまいて・・・・いい加減見捨てられるわよ!?」
祐「でも蓉子さま、放置しとけば私達の出番が増えますよ?(ちょい黒)」
 
 
蓉「・・・・・(ガシ!)思う存分書きなさい!!!!」
 
 
変わり身早すぎですって蓉子さま。
 
 
蓉「愛はすべてを超えるのよ!!!」
 
 
・・・・ま、そんなわけで、一部ネタを繋げてはいるけど、それぞれ独立したお話をお考えくださいませ。
 
とりあえず、時期的には妊娠5・6ヶ月ってとこですかね?
それぐらいにはもう外の音は聞こえてるっていいますし。
ちなみに、いや、妊娠の時に病院から詳細は知らされてるだろう、って?
いやいや、そうとは限りませんよ。産まれるまで楽しみはとっておく、ってケースもありまし。
私が産まれた時なんてまさにそれ。母曰く、単に別に聞かなくてもいーか、っていうノリだったらしいですが(いーのかよ)
んで、おなかの中でドスドスと相当暴れてたらしいんですよ、私。
だから当然男の子だと思っていたらしくく・・・・・
「おめでとうございます、女の子ですよ」「・・・・へ?」
なんて感じだったそうです。一応考えてはいたものの、私の名前をつけるのに苦労したのは言うまでもないのでした(笑)
まぁこの二人の場合は、ちゃんと聞きにいきましたんで、二人で一生懸命、”二人分”の名前を考えてくれることでしょう♪
そうそう、最後に蓉子さまが抱きしめた時は蹴られなかったそうですよ?
きっと二人とも存在が認められたんで、過激な自己主張をしなかったんでしょうね(笑)
 
なんにしても、これからも二人のほのぼの&ラブラブを皆さんに振りまき・・・じゃなくて、お届けしていきますので、
これからもどうぞ、よろしくお願いいたしますm(_ _)
 


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