温泉へ行こう!<番外編> (その1)
 


 
 
 
 
 
 
「はぁ〜、子宝の湯か・・・・」
 
 
 
 
朝一番で温泉につかりながら、別にこうして入っていても何も感じないのだけど、と祐巳は思う。
だいたい温泉のあれでできるのはちょっと・・・・いや、でもその夜だって・・・・うむむ・・・・・
そんな風に一人温泉で唸る祐巳であった。
 
 
 
 
 
「・・・ちゃん・・・・祐巳ちゃん・・・・・祐巳ちゃん!」
「ひゃうっ!?な、なんですか蓉子さま」
「ずいぶん長く入ってるけど、大丈夫?」
「へ・・・・?」
 
 
 
 
言われて時計を見ると、確かに30分ほどが過ぎていた。
唸っているうちに半分寝ていたらしい。
・・・・いや、ひょっとしたらまだ夢の中かもしれない。
だってほら、目の前には一糸纏わぬ蓉子さまの心配そうなお顔があるし。
 
 
・・・・ん?裸?
 
 
一気に頭が覚醒し始めた次の瞬間祐巳は・・・・・・
 
 
 
 
「ぶほっ!?」
 
 
 
 
吹いた。
 
 
 
 
「ぶくぶくぶく・・・」
 
 
 
 
そして沈んだ。
 
 
 
 
「ち、ちょっと祐巳ちゃん!?」
 
 
 
 
見てない、私は何も見てない!美しい蓉子さまがいらっしゃって、
一糸纏わぬ姿でいらっしゃったけど、断じて私は見てはいない!!見えちゃっただけなんです!!
 
 
などと、見た、見てない、で葛藤している祐巳の首根っこを掴んだ蓉子は、そのままお湯の中から引きずりだした。
 
 
 
 
「逃避してなくていいから・・・・」
「ふぁい・・・・」
 
 
 
 
蓉子にため息をつかれ、情けない声をあげる祐巳。
暗い中で見るのと明るいところで見るのは違うんです!と内心叫んでいたのだが。
何より明るいところで自らのボディ(昔よりは成長したが(殴))をさらすのはやはり抵抗があるわけで・・・・
諸々考えても、彼女のそばに自分がいてもいいのだろうかと思ってしまうこともまだまだ多い祐巳なのである。
 
 
 
 
「・・・・祐巳ちゃん、またなにか余計なことを考えてない?」
「あぅ・・・・」
 
 
 
 
そして聡明な蓉子にはいつも通り、筒抜けだったりするのだが。
めっ、と小さい子供を叱るみたいなポージングをしてから、蓉子は祐巳を抱き締めた。
 
 
 
「ごめんなさい蓉子さま・・・・」
「ふふ、気にしてないわ。私の奥さんは心配性だものね」
「蓉子さま・・・・」
「ん?」
「大好きです・・・・」
「私もよ祐巳ちゃん・・・・」
 
 
 
 
更にぎゅっ、と抱き締めあう。
不思議なことにそうされると、胸のモヤモヤはどこかへ飛んでいき、
代わりにフワフワしてくる祐巳なのであった。
 






「祐巳ちゃん」
「はい・・・・?」
 
 
 
 
ベランダの温泉から部屋に戻った後、
荷造りをしていて祐巳は、蓉子に呼ばれトテトテと蓉子の傍に行く。
そんな祐巳を蓉子は先ほどと同じく、そっと抱き締めた。
 
 
 
 
「覚えておいて祐巳ちゃん。傍にいたいのも、
  傍にいてほしいのも、貴女なの。忘れないで、間違えないで、貴女がいてくれることが幸せなのよ・・・・」
 
 
 
 
そう語る蓉子の優しい声音に、祐巳は涙がこみ上げてくるのを感じた。
どうしてこの人は、こんなにも私が欲しい言葉ばかりくれるのだろうか、と。
 
 
 
 
「ふぇ・・・蓉子さまぁ・・・・・」
「好きよ祐巳ちゃん・・・・愛しているわ・・・・・」
「私も・・・あ、愛してます、蓉子さま・・・・・」
 
 
 
 
額をコツンと合わせてから、二人ではにかんだように笑う。
好き、とか、愛してるはきっと魔法の言葉。
だって、たった一言で、こんなに幸せになれるんだから。
あぁ、でもどうせなら、もっともっと幸せな未来を見てみたい。
欲張りすぎだろうか?そうは思うものの、この幸福感に一体誰が抗えるというのだろうか。
 
 
 
 
「蓉子さま」
「何、祐巳ちゃん?」
「温泉、効くといいですね・・・・」
 
 
 
 
祐巳は自らが望む未来をその一言にこめた。
そしてそれを聞いて、蓉子は少し目を丸くしたが、
それでも微笑んで、しっかりと頷いたのであった・・・・・
 
 
 
 
 
 
 


あとがき(言い訳)

ごきげんよう皆様、2日連続でSSUPしましたー!
あとがきは例によって間が空いちゃってますけど(汗)

さてさて、温泉シリーズの番外編第1弾!
蓉子さまと祐巳ちゃんの温泉2日目です・・・むふふ(殴)
まぁ前回同様、脳内補完していただく箇所が多々ありますが、ラブラブなお二人です♪
いや、後編をあそこで終わらせてますからね、二人の後日談や聖さま達、そして出てきてない『あの』二人等々、
書かなくちゃいけないものがありすぎて(笑)
それに『あの子達』&その世代を出すための布石もうっておく必要がありますしね(ニヤリ)

というわけで、PEROさんからの詳細な指定がないのをいいことに、
『水野祐巳』シリーズをキリ番で書きまくらせていただいております( ̄▽ ̄*)
いや、幸せ家族〜、って感じの、キッドほんとに好きなのよ(照)
思いっきり私の趣味で突っ走って書いてますが、PEROさん捨てないでもらってやってくださいな〜(^^;)


 

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